「選択と集中」で骨太な企業体質をつくる
屋外設置の大型看板が主力
飛鳥東北 株式会社 代表取締役 阿部 直哉 氏
サービス業からの転身
「工場の敷地内に自宅があったので、小さい頃から日常的に工場に出入りし、両親が働く姿を間近で見てきました」と阿部直哉社長は語り始めた。
「中学生の頃から、婉曲的な言い方でしたが『会社を継いでほしい』と父から話が出るようになりました。しかし私はそのたびに『嫌だ』『継がない』とかたくなに拒み続けていました。両親―特に父はいつも多忙で、家に帰ることは少なく、夏は暑く冬は寒い工場で仕事漬けの日々でした。当時の私は多感で夢見がちな年頃でしたから、『どうしてこんなにつらい思いをしながら働かなくてはいけないのか』『自分がやりたいのはこんな仕事ではない』と考えていました」。
高校生のころには両親の工場でアルバイトをしたこともあったが、高校3年生のときに工場から少し離れた場所に転居してからは、いっさい工場に寄りつかなくなった。
大学ではモノづくりへの興味から機械科に進んだが、家業を継ぐことは頭になかった。クルマ好きが高じて、大学卒業後は中古車ディーラーに就職、店舗スタッフとして2年間勤務した。当時は、朝9時出社で深夜2~3時まで、がむしゃらに働いた。休日は月1~2回だが、休日でも半日は出勤するなど、休みなく働いた。長時間労働に心身がむしばまれる中、「このままでは倒れる」と危機感を抱き、転職を考えるようになった。
ちょうどその頃、父親から「戻ってきて手伝え」と頻繁に電話がかかるようになっていた。後から知ったが、営業担当者が退職し、父親ひとりで営業から製造までを切り盛りするには限界があるため、“片腕”が必要な状況だったという。
サービス業からの転職を考えていたタイミングでもあり、阿部社長はモノづくりの世界に身を投じることを決断、家業を継ぐ覚悟を固めた。社会に出てハードワークを経験したことで、中高生の頃とは職業観が変わっていた。これまでの両親の働きぶりと苦労が身近に感じられ、労を惜しまない自分自身の仕事への向き合い方が両親の影響を大きく受けていることに気づいた。「社長の息子が入社して、仕事に対する姿勢が中途半端だったのでは会社や従業員に迷惑をかける。父親の顔をつぶすことにもなる」と自然と理解でき、「やるからには、とことんやってやろう」と決意した。
屋外設置の大型看板が主力
飛鳥東北㈱は、宮城県名取市にあるサイン(看板)メーカー。道路わきのシンボルサインやチャンネルサイン(ロゴの立体文字など)といった屋外設置の大型看板を中心に、スタンド看板、小型看板、モニュメントといったサイン全般の設計から製作・施工までワンストップで対応している。
創業者である阿部和成氏(先代)は、建築の内装金物の製造企業に勤めたのち、1990年に40代前半で独立、飛鳥東北を立ち上げ、サイン業界に参入した。バブル崩壊と同時期の創業で、並々ならぬ苦労があったというが、先代は「当時はハングリー精神の塊だった。自分はバブル景気の恩恵を享受していないが、それでよかった。バブルを味わっていたら、生き残れなかったと思う」と振り返っていたという。
ドーナツ化現象により郊外型の大型商業施設が増え、サインの大型化が進んでいた時代。同社は大型看板のCAD設計から鉄骨・形鋼による柱・フレームの加工、板金部品による外装部の加工、カッティングシートの貼り込みやアクリル板などによる装飾、高所現場作業などの設置・施工、メンテナンスまで一貫対応することにより、着実に事業を軌道に乗せていった。
以前は仙台を拠点に東北エリアで事業を展開してきたが、2007年に阿部直哉社長が入社してからは関東圏まで商圏を拡大。現在は地元の宮城県で鋼構造物工事・内装仕上工事・土木工事・塗装工事などの県知事許可を取得しているだけでなく、東北6県・北関東3県(茨城・栃木・群馬)・東京都・横浜市で屋外広告業として登録し、東日本エリア全体へ事業を展開している。施工に関わる資格類も、職長、高所作業車運転者、ゴンドラ操作者、玉掛作業者、第一種電気工事士、ネオン工事資格者、鉄骨組立作業主任者、有機溶剤作業主任者などを保有している。
現在では、屋外設置の大型看板が売上の70%を占めるまでに成長。これまでにショッピングモールやファミリーレストランなどの大型看板、カーディーラーのファサード、ビジネスホテルのポールサイン、プロ野球スタジアムのスコアボードサインや誘導サインなどの製造・施工実績がある。
会社情報
- 会社名
- 飛鳥東北 株式会社
- 代表取締役
- 阿部 直哉
- 住所
- 宮城県名取市高舘熊野堂字飛鳥47-2
- 電話
- 022-386-2249
- 設立
- 1990年
- 従業員数
- 14名
- 主要事業
- 金属工芸、屋外広告、モニュメント、レーザーカット、チャンネル文字、重量鉄骨造形物の企画・製造・取付・シート加工・施工
つづきは本誌2017年10月号でご購読下さい。