ストロングポイントは“品質”
3次元CNC画像測定器を導入し、精度保証要求に対応/SheetWorksによるバーチャル試作でモノづくりが一変
葉山工業 有限会社
精密板金・試作のスペシャリスト
千葉忠夫社長は学校卒業後にモノづくりの道に進み、1972年、28歳のときに葉山工業㈲を創業。それ以来、配電盤筐体、ロッカーケース、車いす、段ボール梱包機といった比較的サイズが大きい板金部品や、ダクトやホッパーのような異形状のステンレス製品を手がけてきた。
資金的な事情で、なかなか設備を充実させることができない中、千葉社長は「頭を使って他人ができない仕事をする」をモットーに腕を磨いてきた。その高い技術力と発想力には定評があり、2012年には川崎市による表彰制度「かわさきマイスター」に選出されている。
同社は1990年代後半、半導体製造装置メーカー1社への依存度が極端に高まったが、2008年のリーマンショック直前にこの得意先が廃業。その後は積極的に新規開拓を進めてきた。
高い外観品質が求められる半導体製造装置分野での経験を活かし、精密板金・試作分野へとシフト、得意先は70社前後まで増加した。現在は、防衛関係の通信機器、半導体製造装置、セキュリティゲートといった仕事が各10%ずつとなっているほか、放送・映像・音響・通信といったAVC(オーディオ・ビジュアル・コミュニケーション)や自動車関係の試作が30%を占め、精密板金・試作のスペシャリストとしての地位を確立している。
2013年には川崎市から横浜市都筑区へ移転。今年は、得意先からの精度保証要求が高まる中で自社の強み――ストロングポイントを“品質”に定め、国内でも納入台数が90台余りという、タッチトリガープローブ搭載3次元CNC画像測定器を導入した。それがきっかけで、燃料電池車に関連した試作の仕事の引合いが来るなど、早速成果が現れている。また、防衛関連の仕事も好調で、海外向けの半導体製造装置関連の仕事も、今後5年間は受注が見込めるという。
リーマンショックを機に1社依存から脱却
子息の千葉忠実工場長は、板前修業で7年間いろいろな店の板場に勤めた。店を渡り歩いて修行する板前も、金属を材料に加工する職人も、材料に命を吹きこみお客さまへ提供することに変わりはないと考え、事業継承を決意した。
「1998年に私が入社した当時は、半導体製造装置メーカーの仕事が売上の大半を占めていました。しかし半導体業界はシリコンサイクルの影響で需要変動が大きく、猛烈に忙しい時期とほとんど仕事がない時期の繰り返しでした。仕事がない時期は会社の運転資金の確保も難しく、このままでは立ちゆかないと考えました。そこで、外観品質の要求が厳しい半導体製造装置分野で培った技術力を活かして何かできないかと考え、充填機や微細加工の仕事をいただきながら、少しずつ仕事の幅を拡げていきました」。
微細加工の仕事が好調だったこともあって、会社の体力も少しずつつき、工場移転や設備投資を考える余裕も生まれてきた。2007年には半年間で3台のベンディングマシン――FBDⅢ-5012NT、FMB-184NT、FMB-062と、3次元ソリッド板金CAD SheetWorks、2次元CAD/CAM AP100、曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bendを立て続けに導入した。
「思えば、あのときの設備投資がターニングポイントでした。あれがなかったら、今でもセットプレスをひたすら踏み続けていたはず。会社の存続もおぼつかなかったと思います」。
会社概要
- 会社名
- 葉山工業 有限会社
- 代表取締役
- 千葉 忠夫
- 工場長
- 千葉 忠実
- 住所
- 神奈川県横浜市都筑区池辺町3964
- 電話
- 045-482-9628
- 設立
- 1972年
- 従業員数
- 9名
- 事業内容
- 半導体関連筐体・部品、航空機部品、カメラ部品、検査器筐体・部品、複写機部品、各種精密機器部品、治工具・型の製作
つづきは本誌2015年11月号でご購読下さい。