小規模板金工場のものづくりを支援するデジタル技術
大型台風による浸水被害から再建 ― 新工場と新規設備で可能性を切り開く
初めて導入する複合マシンの立ち上げを「IoTサポート」が支援
有限会社 日康金属製作所
新工場竣工 ― 新鋭設備の導入で能力強化
安定化電源などの筐体を中心に製造する㈲日康金属製作所は、2022年8月に新本社工場を竣工した。敷地面積はこれまでの約2倍に拡大。工場竣工に併せて、同社初のパンチ・レーザ複合マシンLC-1212C1NT、バリ取り機AuDeBu-600、圧入機Haegerを導入、加工能力も強化した。
LC-C1NTはアマダのIoT「V-factory」に標準で対応する「Vfマシン」。マシンの稼働状況や稼働実績などを見える化できる「My V-factory」と、予防保全や早期復旧支援、チャットによる問い合わせといった「IoTサポート」を利用できる。
初めての複合マシンを運用するにあたり、同社は「IoTサポート」を積極的に活用している。この1年は実験的な運用も行いながら、チャットによるIoTサポートセンターへの質問を重ね、一時はIoTサポートの利用件数で全国トップになった。導入から約2年が経過し、必要なデータは大体そろった。これからは自社商品などの製品化も含め、新たな活用方法を模索していく。
創業当時から安定化電源の筐体を製作
安定化電源の筐体などを手がける板金工場で勤務していた青山達夫氏が1960年代後半に独立し、川崎市内の貸工場で創業した。自宅が都内で通勤に時間がかかるため、川崎市高津区宇奈根の1階が工場、2階が住居の建物へ移転。1978年6月に法人化し、1979年3月には現在地に工場を移転した。1980年頃にはパンチングマシンPEGA-345を導入。当時は手板金が中心で、シャーリング、ケトバシなどを使って加工していた。当時は安定化電源の筐体関係のリピート品を受注することが多かった。
順調に操業を続けていたが、主要得意先の安定化電源メーカーが突然廃業。手形は不渡りとなり、在庫も引き取られず、大打撃を受けた。しかし、その安定化電源メーカーに勤めていた担当者の複数人が独立し、同社に継続発注するようになって、少しずつ仕事が増えていった。
兄弟で事業を引き継ぐ
1990年頃になると、設計関係の会社で3年ほど勤めた長男の青山智章氏(現社長)が入社した。当時はまだNCテープ作成機を使ってGコード紙テープを作成していたが、最新式の自動プログラミング装置AP40Nを導入。図面の読み書きができる青山智章氏が自動プロによる運用を軌道に乗せたことで、新たな設計スタイルを構築した。
1990年代後半には次男の青山岳史氏(現常務)が入社。2人の子息が入社したことで、同社は一気に活気づいた。2000年頃にはVIPROSを導入し、パンチングマシン2台体制を構築した。
2000年代前半は、ITバブル崩壊などの影響もあり、あてにしていた仕事がなくなった。仕事がない中、兄弟は業務改善や効率化を目指し、見積りなどの業務の見直しをはかった。その前向きな姿勢は次第に得意先からも評価され、会社の窓口として認知されるようになっていった。
そして2018年10月には青山智章氏が2代目社長に、青山岳史氏が常務に就任した。
会社情報
- 会社名
- 有限会社 日康金属製作所
- 代表取締役社長
- 青山 智章
- 所在地
- 神奈川県川崎市高津区久地2-4-56
- 電話
- 044-811-4132
- 設立
- 1978年
- 従業員数
- 4名
- 主要事業
- 鉄・非鉄(アルミニウム・ステンレス・銅・真鍮)材による精密板金加工、塗装・表面処理・機械加工などの協力会社委託業務
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