カスタムバイクショップが板金工場をM&Aで取得
強みを生かして自社ブランド商品の加工に特化
バグースモーターサイクル
「カスタム」「コンプリート車」「オリジナルパーツ」の3本柱
バグースモーターサイクルは、カワサキ製ビッグバイクを中心に手がけているカスタムバイクショップ。中でも1980~1990年代に販売されたカワサキの「ゼファー」シリーズを得意とし、ファンから絶大な支持を得ている。
現在は、①オーナーの要望に応じて車両をつくり変える「カスタム」、②市場に流通している旧車を仕入れて、修理・メンテナンスを行って販売する「コンプリート車」の販売、③オーナーがみずからカスタムやメンテナンスを行うのに用いる「オリジナルパーツ」の企画・開発・製造・販売 ― 以上の3本柱で事業を展開している。
2020年秋頃から「旧車ブーム」に火が点き、同社の業績は大幅に伸びた。自動車でもバイクでも、「名車」と呼ばれる生産終了モデルの人気が高まる「旧車ブーム」が断続的に発生してきたが、今回のコロナ禍によりかつてないほどの勢いになっている。
同社は今年、土屋雅史社長が2010年に開業して以来、最高の業績を達成する見込みだ。「カスタム」は前年比20%増、「オリジナルパーツ」は同30%増となった。「コンプリート車」は、需要過多で状態が良い車両の仕入れが難しく伸び悩んでいるが、入荷即完売の状況が続いている
2020年には「オリジナルパーツ」の加工を委託していた板金加工企業・㈲佐藤プレスが廃業を検討していると知り、M&Aにより同社を取得した。カスタムバイクショップによる板金加工企業のM&Aはきわめて珍しい。しかも、2021年にはパンチ・レーザ複合マシンLC-1212C1NTを導入し、加工能力と加工領域を強化した。
「オリジナルパーツ」は従来、店内の工作室に設置された旋盤やボール盤などで加工するか、外部の加工業者に製作を委託していた。土屋社長は今回のM&Aにより「オリジナルパーツ」の内製化を実現するとともに、開発力をも強化し、さらなる成長へつなげていこうとしている。
レース活動などを通じてカスタムバイク業界のビッグネームに
土屋社長は1976年生まれの45歳。18歳のときからバイク業界 ― それも「旧車」の世界一筋で生きてきた。
1996年、最初に勤めたバイクショップでは、車両の修理・販売を手がけ、メカニックとしての基礎技術を磨いた。当時も空前の「旧車ブーム」で、販売台数は月100台にものぼった。
1999年に21歳でカスタムバイクショップに転職し、オーナーの要望に合わせた「カスタム」を手がけるようになった。カワサキの車種が中心で、12年間勤め、そのうち9年間は店長を務めた。
34歳で独立し、2010年7月に「バグースモーターサイクル」を開業した。開業当初は並々ならぬ苦労があったというが、土屋社長のさまざまな取り組みが「バグース」のブランディングにつながり、11年かけてカスタムバイク業界のビッグネームと呼ばれるまでに成長した。
開業以来、カスタムバイクの月刊誌「カスタムピープル」に毎月1台、カスタムバイクを掲載した。ブログを開設し、バイクへのこだわり、カスタムへの思いをつづることで、ファンの共感を得ていった。そして、筑波サーキットで年2回開催されるレースイベント「テイスト・オブ・ツクバ」(T.O.T)に、みずからレーサーとして毎回参加し続けた。
T.O.Tは、1980年代の旧車を中心とする日本最大級のアマチュアバイクレース。ブームになっている1980年代のなじみ深い車種が多数参加しており、旧車ファンの注目度は高い。土屋社長は開業以来参加し続け、この5月に開催された「テイスト・オブ・ツクバ2021 Satsuki Stage」でも「ZERO-1」クラス(1980年代までに生産された鉄フレームの車両のみ参加できるクラス)に参戦。自己ベストの1分3秒621を記録し、5位でフィニッシュしている。
会社情報
- 会社名
- バグースモーターサイクル
- 代表取締役
- 土屋 雅史
- 所在地
- 神奈川県横浜市都筑区早渕1-25-28-B棟
- 電話
- 045-534-9246
- 創業
- 2010年
- 従業員数
- 3名
- 主要事業
- バイクのコンプリート車・カスタム車の製作、バイク修理、オリジナルバイクパーツの開発・製造・販売
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