若い人たちが働きたいと思ってくれるような新しい製造業を目指して
強い意志と行動力で業務の効率化・広報活動に尽力
株式会社 鈴木製作所 遠藤 り加 さん
「この会社を残していきたい」と入社を決意
「子どものころは家と近く、両親が働いていたこともあって、学校が終わると毎日のようにランドセルを背負ったまま工場に来ていました。宿題をしたり、社員の方に遊んでもらったりと放課後の時間の多くを工場の中で過ごしてましたね」と振り返るのは㈱鈴木製作所の遠藤り加さんだ。
鈴木喜浩社長の長女として生まれたり加さんにとって、工場やものづくりはそこにあることが「当たり前」の身近な存在だった。とはいえ事業承継を意識したことはなかったという。大学卒業後は旅行会社やアパレルメーカーに勤務し活躍していた。そんな彼女に転機が訪れたのは2020年、新型コロナの影響でアパレルメーカーの仕事が2カ月ほど休みになったことだった。
「時間に余裕ができ、将来について考えるようになりました。そして自然と、『このまま父が歳を重ねていったとき、会社はどうなるのだろう』と家業のことを考えはじめました。社長の子どもは私と妹の2人だけ。それまで父から事業承継の話をされたことはなく、事業を引き継ぐという考えはまったくありませんでした。『この会社を残していきたい』 ― そのために自分に何ができるのかを考え、すぐに父に『継ぎたい』という意思を伝えました」(り加さん)。
創業44年、アルミの溶接に強み
しかしその申し出は当初、鈴木社長から断られたという。
鈴木製作所はアルミの溶接・加工技術に強みを持つ神奈川県横浜市の板金加工企業。アルミは熱伝導率が高く、溶接の際にも変形が生じやすいため、加工には高い技術が必要とされる。同社は創業以来44年間、「お客さまに満足いただけるものづくり」を目指して技術を培い、得意先からの高度な要求に応え続けてきた。中でも防衛関連機器(無線・レーダー)の板金部品加工は創業当初から続いており、現在も同社の売上の6割以上を占める。近年の防衛費増額などの影響を受け、防衛関係の仕事は増え続けており、内示レベルでは2年先までの予定が入っている状態だ。
また既存の技術だけにとらわれず、東海大学やアマダと協力し新たな異種材溶接の研究に取り組むなど、たゆまぬ努力を続けている。
「祖父は板金工場で工場長を勤めた後、独立し当社を創業しました。父も金属プレス加工企業で製造について学んだ後、入社しています。そんな中、加工技術や知識が何もない私が事業を引き継ぐのは難しいと思われたのかもしれません。会社の規模的にも一つの業務に集中できるわけではなく、あらゆる仕事を同時にこなす必要があります。父自身も事業承継にあたり苦労したようで、子どもには重荷を背負わせたくないという思いがあったのかもしれません。後継者がいない場合はM&Aによる会社売却も視野に入れていたようです」。
「しかし、父から断られ考え直しても、私の中では継がないという選択肢はありませんでした。何度も父に相談し、ようやく了承を得ることができ、2020年10月に勤めていた会社を退職して、当社に入社しました」(り加さん)。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 鈴木製作所
- 代表取締役
- 鈴木 喜浩
- 所在地
- 神奈川県横浜市都筑区池辺町3288
- 電話
- 045-507-7831
- 設立
- 1986年(1980年創業)
- 従業員数
- 20名(技能実習生などを含む)
- 主要事業
- 無線通信機器、食品機械、医療機器、電気機器などの精密板金加工
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