Interview

「ものづくりの可能性に挑み続ける!」

“量”から“質”の経営に転換

株式会社 ファイネス 代表取締役 金杉 賢治 氏

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画像:「ものづくりの可能性に挑み続ける!」金杉賢治氏

金杉賢治社長は1998年に「金杉精密」を創業したのち、2000年に㈲ファイネスに社名変更し法人化。2014年には現在地に2,000坪の土地を取得し、第1工場(板金加工)、第2工場(組立)、第3工場(機械加工)を完成。「ものづくりの可能性に挑み続ける!」を経営理念に掲げ、ステンレス加工をメインとする精密板金加工、マシニングセンタ3台とターニングセンタによる機械加工、組立配線に対応する一貫生産体制を構築。搬送装置・包装機械・食品機械・半導体製造装置などの製造・組立を一貫で行っている。

ファイネス(finesse)という社名には「手ぎわの良さ」や「巧みな」「技巧」などの意味があり、「世界中の人々にファイネスのより良い製品をお届けし、喜んでいただきたい」との想いが込められているという。

同社は数年前からモノづくりの可視化に挑戦。300~400点の部品で構成される受注製品の部品単位での原価管理、品質管理を徹底するため、生産プロセスの進捗・実績管理を徹底。顧客満足度改善に取り組むとともに、“量”から“質”への転換に取り組んでいる。

10連休明けから仕事は戻る

― 米中貿易摩擦を背景に景気減速が心配されています。業績に変化の兆しはありますか。

金杉賢治社長(以下、姓のみ) 現在の得意先は50~60社、そのうち数社で売上の80%弱を占めています。食品や日用品、医薬品などの包装機械関連が半数を占め、その他、紙オムツの自動包装機械、医薬製剤機械、半導体製造装置などとなっています。

昨年10月過ぎから半導体関連の仕事が減少傾向となり、それに引きずられるように全体的に仕事量が減り、3月末にはその傾向が顕著になりました。しかし、営業開拓の成果もあって、5月の10連休明けから仕事が戻っています。

新規の案件としては、医療施設で検体を検査室まで搬送するライン装置の配送ステーションを受注しました。これまでもエアーによる搬送装置はありましたが、今回受注した装置は、検体を容器に入れ、動力で搬送するラインです。

配送ステーションはタッチスクリーンの画面を備え、自動販売機ほどの大きさがあります。検体を格納するボックスがいくつもあり、構成する部品は板金加工、機械加工、溶接組立、電装組込技術を持つサプライヤーでなければ受注できない仕事でした。しかも建設中の病院の施工まで一時的に在庫できるスペースを備えていることが必須で、当社はそうした条件を備えており、受注に成功しました。大きな病院ではこうしたステーションが20~30基は必要になるようです。

一方、搬送装置関係は従来のパーツ単位の発注から、アセンブリーまで含むセット発注に変わり、ワンストップ加工ができる1次サプライヤーでなければ対応できなくなっています。当社もその能力は備えていますが、ボリュームが大きく、短納期化しているため、失注する案件もあります。また、大がかりな案件よりも小ぶりな案件が増える傾向もみられ、受注環境が大きく変化していると感じています。

画像:「ものづくりの可能性に挑み続ける!」左:生産管理システムWILLで作成したガントチャート/右:WILLの「IP進捗キット」を導入。iPod touchのカメラ機能で作業指示書のバーコードを読み取り、着手完了情報を登録する

売上よりも利益重視へと転換

― 2020年の売上高10億円達成を目指されていました。

金杉 生産プロセスの可視化、経営の可視化を進めてきた結果、現在では売上高よりも利益に重点を置いた目標に転換しています。

以前導入した生産管理システムWILLでは進捗を取っていなかったので、加工時間や原価を把握していませんでした。売上・原価・営業利益は月次で把握していましたが、実態は“どんぶり勘定”でした。

そんな中、機械加工の技術者として入社してもらった斎藤宏取締役業務部長が、機械加工工場に独自開発した生産管理システムを導入して進捗・実績を管理するようになりました。その経験をもとに2017年、斎藤部長が中心になってアマダの「IP進捗キット」を導入し、WILLを再活用することを決めました。

各工程に進捗端末を設置し、現場の社員全員にiPod touchを配布し、バーコードが印字された作業指示書を内蔵カメラで読み取ることで、着手・完了を入力する仕組みを構築。併せて、各工程のST(標準作業時間)を決め、コストテーブルをつくり、現場はST ― 目標原価に基づいて仕事に取り組むようになりました。その結果、受注案件ごとに目標原価と営業利益率が見えるようになりました。

この取り組みによって当社の目標も、私自身の考えも、売上高から営業利益率へと変わりました。売上が増えても営業利益はすずめの涙という仕事ばかりでは、事業発展は見込めない。そこで“量”から“質”へ ― 利益率を重視する経営に切り替え、加工現場ではSTを基準にどこまで作業時間を短縮できるのかを意識にするようになりました。

見積りは営業担当者が作成していますが、STは常に私自身が確認しており、受注製品ごとに目標原価と実績を把握することで、生産プロセスの可視化にとどまらず、経営の可視化も実現できるようになりました。

  • 画像:「ものづくりの可能性に挑み続ける!」ハンディファイバーレーザ溶接機FLW-300MTでステンレス溶接を行う女性社員
  • 画像:「ものづくりの可能性に挑み続ける!」同社の特長を生かした板金部品と機械加工部品を組み合わせた食品加工機械向け製品

会社情報

会社名
株式会社 ファイネス
代表取締役
金杉 賢治
住所
埼玉県飯能市茜台3-5-4
電話
042-978-7406
設立
2000年
従業員数
40名
事業内容
ステンレス加工をメインとする精密板金加工、粉体・液体容器製作、医療機器・食品機械の製作・組立
URL
http://finessecorp.com/

つづきは本誌2019年8月号でご購読下さい。

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