研究室訪問

パワー半導体用SiCウェハのレーザスライシングを研究

京都大学大学院 工学研究科 材料化学専攻 下間(しもつま) 靖彦 准教授

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画像:パワー半導体用SiCウェハのレーザスライシングを研究京都大学大学院 工学研究科の下間靖彦准教授

パワー半導体の課題に着目

京都大学大学院 工学研究科 材料化学専攻の下間靖彦准教授の研究テーマ「次世代パワー半導体結晶基板の高効率レーザスライシングに関する研究」が、天田財団の2023年度「重点研究開発助成」にレーザプロセッシング分野で採択された。

電力の変換や制御をつかさどる半導体として注目されている「パワー半導体」は、高い電圧や大きな電流に対しても壊れないよう通常の半導体とはちがった構造を持っている。ただ、大電力による発熱で高温になりやすく、それが故障の原因につながる。このため、発熱の原因であるパワー半導体自身の電力損失を小さくし、さらに発生した熱を効率よく外に逃がす工夫を施す必要がある。

市場拡大するSiCパワー半導体

パワー半導体は主に電圧変換、周波数変換、直流交流変換などの電力変換に使われている。モーターを低速から高速まで精度良く回転させたり、太陽電池で発電した電力を無駄なく送電網に送ったり、さまざまな家電製品・電気器具に安定した電力を供給する際などに、欠かすことのできない重要な役割を担っている。

中でも急速に製品化が進み、市場シェアを拡大しているのが、SiC(炭化ケイ素)パワー半導体だ。フランスの市場調査会社によると、SiCおよびGaN(窒化ガリウム)のデバイスは2027年末までに、パワー半導体市場全体の30%のシェアを獲得し、シリコン製のMOSFETやIGBTに置き替わっていくという。そのため、パワー半導体の基板となるSiCやGaNを高精度かつ高効率に加工する技術が必要になる。特にSiCに関しては、レーザ加工によって基板の高精度な切断や穴あけ加工が可能なだけではなく、表面の損傷を小さくでき、半導体結晶の内部を直接加工できることから、レーザ加工はウェハ加工技術としての可能性を秘めており、パワー半導体の製造コスト削減への寄与が期待されている。

ダイヤモンド、炭化ホウ素に次いで硬度が高い単結晶SiCインゴットからウェハを切り出す方法としては、ダイシングソー技術が一般に用いられてきた。SiCは難加工材であるため、スライシング時のデブリ洗浄や摩擦熱の冷却のため、ウエット環境下で行われることが一般的で、この際の切断面の欠けやクラック発生などによるウェハの強度の低下で、ワイヤあたり180㎛以上の切り代が必要となる。表面研磨後には最終的に250㎛程度の損失が生じ、歩留りは悪い。結果として、厚さ500㎛のSiCウェハの作製では、厚さの50%をSiCインゴットの25%のSiC結晶が、くずとして捨てられている現状がある。

つづきは本誌2024年6月号でご購読下さい。

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