板金論壇

ニューノーマルに対応した「適者生存」の始まり

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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以前の日常には戻れない

緊急事態宣言が解除され、休業していた商店街も店を開き、小中学校の再開により登下校する児童・生徒の笑い声が聴けるようになりました。しかし、不要不急の外出自粛や3密防止の観点から時差出勤やテレワークを継続する企業も多く、通勤通学時間帯の駅構内や電車の混雑状況は以前の50~60%程度にとどまっているように思います。

新型コロナウイルス感染症が収束していない中、感染拡大の第2波、第3波がいつ襲ってくるかわからず、私たちは不安にさいなまれながらも、「withコロナ」の「ニューノーマル」(新常態)に対応することが求められています。

当社も緊急事態宣言が出ている期間はテレワークを実施し、外出を控え、オンラインで取材活動を行ってきました。これまでどおりの日常が戻るかは不確実な中、お客さまのところに訪問することも難しくなっていて、なによりも、私たちが動くことで“感染源”になってはいけないとの思いからです。今回のテレワークを機に、オンライン取材で、お客さまの現状と、新たな環境の中で成長していくための新しいスタイルや課題などに関して話を聞かせていただきました。

Web会議で風通しが改善

大半の経営者は外出を控え、得意先や仕入れ先などとはWeb会議で商談や打ち合わせをする手法を採り入れていました。定期的に得意先の担当者とWeb会議をすることで、これまでにも増して風通しが良くなったと感じる方が多くいらっしゃったことには驚きました。また、社内にいる時間が長くなっているため、工場の課題解決にも役立っていると話す方も多くいらっしゃいました。

万が一、社内から感染者が出ると2週間程度は工場を一部閉鎖しなければならず、得意先への供給責任が果たせなくなります。そこで「社員には朝礼などで、社外でも3密を避ける行動を呼びかけています。休日でもパチンコ店や飲み会などへ出かけることは自粛するよう要請しています」と語る経営者もいらっしゃいました。

さらに、事業継続の視点で、気心の知れた同業者と“万が一”に備えて、相互に生産を委託しあえる環境を整えようと動き始めた、と話す経営者が複数いらっしゃいました。ほかには、この機会に会社PR用のWebサイトをリニューアルして、インターネット受注に対応した仕組みを構築したり、YouTubeに専用のチャンネルを開設して、社員が撮影・編集した工場概要・設備・加工技術を紹介する動画をアップしたりする会社も出現するなど、Webマーケティングに積極的に取り組む先進的なケースもありました。

こうしたお客さまに共通するのは、「出ずるを制する」こともさることながら、「入るを量る」ための積極的な取り組みをされていることです。

目立ったのは、補助金を活用した取り組みです。ある企業は得意先や関連企業と協業し、新型コロナウイルスの感染拡大に対応して創出された補助金 ― 「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」を活用して、医療機器関連部品の生産を始めようと申請書を作成中とのことでした。

ある経営者は「今後数年の間に感染拡大の第2波、第3波が到来するといわれており、われわれは『withコロナ』の環境におけるビジネス遂行を通常のものとして考え、サプライチェーンのありかたを考え直す必要に迫られています」と語り、人工呼吸器や人工心肺装置といった医療機器の板金部品の生産を行う設備導入のために、補助金の活用を考えていました。

また、医療機器関連ではありませんが、チャイナリスクが高まっているとの考えから、中国工場で生産していた板金部材を国内へ製造回帰させるため、新工場開設を計画している企業でも、こうした補助金の活用を考えていました。

テレワークを導入し、在宅でプログラム作成を行える環境を整備するために、「働き方改革推進支援助成金」(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)を活用する企業もありました。中小板金工場でもテレワーク、Web会議が日常化する動きが顕著になっています。

中には、外国人技能実習生の往来が困難になることを想定し、社員の教育を拡充して、事務仕事から現場の作業まで、いくつもの仕事をこなせる多能工に育てる取り組みを始めたところもあります。

つづきは本誌2020年7月号でご購読下さい。

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