Sheet now

「工場運営は“計画”がすべて」

五輪需要などの増産へ向けパネルベンダーEPを導入

葵ロール 株式会社

LINEで送る
Pocket

画像:「工場運営は“計画”がすべて」五輪需要などの増産へ向け、今年3月に導入したパネルベンダーEP-3000AC。加工スピードは通常のベンディングマシンの2倍

建築内外装部品のアセンブリーメーカー

画像:「工場運営は“計画”がすべて」代表取締役の泉健二氏

1960年、東京・大田区で自動車部品加工企業として創業した葵ロール㈱は、1980年頃からロールフォーミング技術をベースに建築内外装部品の加工事業を展開。以来40年、住宅メーカー・住宅設備メーカー向け建築内外装部品のアセンブリーメーカーとして着実に地歩を固めてきた。

現在の主力製品は防水用長物鋼板とパブリック向けトイレパネル。防水用長物鋼板は塩ビ被覆鋼板・板厚1.1~1.6㎜で長さ2mが標準。トイレパネルは塩ビ被覆鋼板・板厚0.5~0.6㎜の薄板パネルに対して、主に接着による子部品のアセンブリーまで行っている。

受注件数は月1,100件。アセンブリー製品の割合は約50%。ロットサイズは、規格品だと1,000個超まで、物件対応品(特注品)だと1個からで、平均10~20個となっている。従来は規格品60%、物件対応品40%と規格品がやや多かったが、現在は物件対応品の割合が増え、およそ半々となっている。

主要得意先は約10社。住宅メーカーは1社のみで、ほかはすべて建築資材・設備メーカーとなっている。戸建て住宅・集合住宅と商業施設の売上比率はおよそ半々。最近は都市再開発や既存施設の改修・改装など、首都圏を中心とした旺盛な不動産投資に後押しされ、ショッピングモールなどの商業施設向けやオフィスビル向けが好調。ここ3年間の売上も毎年5~8%で成長している。

1992年に2代目社長に就任した泉健二社長は、現在の業況について次のように語っている。

「東京五輪関係は全体的に計画が遅れていて、内外装関係の仕事はまだ出てきません。内外装部品は土台・骨組み・壁・屋根ができてから必要になるもの。計画が遅れているといっても完工のタイミングは変わりませんから、納期的には一番きつくなる分野だと思います。動き出せば2019年上期まで猛烈な忙しさになり、その後、一気に収束していくと思います」。

「住宅関係は、2019年10月の消費増税がひとつの節目になります。今回は3%から5%に上がった1997年や、5%から8%に上がった2014年のときのような混乱はなさそうですが、多少は駆け込み需要があると思います」。

「2019年下期以降、反動で落ち込むのは確実ですが、問題はその落ち幅です。首都圏再開発では2020年以降も切れ目なく続く案件もありますし、改修時期をむかえている建物も多い。売上が半減するような落ち込みはないと思いますが、ふたを開けてみないとわからないというのが正直なところです」。

画像:「工場運営は“計画”がすべて」左:vLot Plannerの画面。工程ごとの負荷がひと目でわかる/右:vLot Naviがインストールされたタブレット端末。現場の各工程に設置され、製品情報の閲覧や着手完了情報の入力を行う

増産へ向けパネルベンダーEPを導入

東京五輪や首都圏再開発などの案件にともなう増産が見込まれるなか、泉社長は生産性を改善する必要性を感じていた。そのことを何気なく話したアマダの営業マンからパネルベンダーEP-3000ACの提案があり、興味を引かれた。

伊勢原のアマダ・ソリューションセンターで実機を視察した泉社長は「ボタンを押すだけで、通常のベンディングマシンの2倍の速度で製品ができ上がってくる様子に驚いた」という。

パネルベンダーは、パネル製品の高速加工と自動化が大きな特徴。複雑形状の曲げ加工も金型交換なしで対応できる。曲げ作業者の熟練技術も不要で、プログラムを作成すれば一定の品質で安定的に加工できる。加工可能な寸法や形状には制約があるが、EPは高剛性な本体構造の採用により鋼板・板厚3.2㎜までの加工が可能で、従来機種(TBZ)と比べ、深曲げ加工範囲も40㎜から55㎜に、最小フランジ寸法も板厚×6~8から板厚×5に拡大した。

実証加工で品質上も問題がなかったことから、2018年3月に導入。4月に試運転、5~6月は加工できる製品の選定などの生産準備、7月から本格稼働をスタートした。

「9月の計画では、EPの稼働率は約2/3 ― 21日稼働のうち13日分です。導入効果の検証はこれからですが、生産性が改善しているのはまちがいありません。今後はフル稼働を目指し、EPで加工できる製品がもっとないか、検討を続けます」。

EPで加工する製品は、まずリピート受注が確実な規格品から、「形状」「寸法」をもとに検討していった。現在は、一品一様の物件対応品をどれだけEPで加工できるか ― 自動化のメリットを出せる最小ロットサイズを検証している。

  • 画像:「工場運営は“計画”がすべて」組立工程。子部品に接着剤を塗布している
  • 画像:「工場運営は“計画”がすべて」防水用長物鋼板。写真は塩ビ被覆鋼板・板厚1.1〜1.6㎜で長さ2mの規格品

会社情報

会社名
葵ロール 株式会社
代表取締役
泉 健二
住所
神奈川県伊勢原市鈴川29
電話
0463-97-3711
設立
1960年
従業員数
35名
事業内容
戸建て住宅・集合住宅・商業施設向け建築内外装金属部品、店舗向け什器の製造販売
URL
http://www.aoi-roll.co.jp/

つづきは本誌2018年11月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

Sheet now記事一覧はこちらから