特集

事業承継者が活躍する愛知の板金業界

ITツールの活用と機械化・ロボット化で自動化・省人化を推進

包装機械部品の仕事が順調に拡大

株式会社 鈴重

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画像:ITツールの活用と機械化・ロボット化で自動化・省人化を推進2022年に導入したファイバーレーザマシンVENTIS-3015AJ(4kW・パレットチェンジャー仕様)。ステンレスの薄板から中厚板までのワイドレンジで、高品質な加工が可能になった

ITを駆使して組織を強化

画像:ITツールの活用と機械化・ロボット化で自動化・省人化を推進鈴木肇社長

㈱鈴重は1971年、鈴木肇社長の父・鈴木宏司氏が愛知県清須市新清洲で「鈴重鉄工所」として個人創業した。1982年に「㈲鈴重鉄工所」として法人化。1987年に工場を清須市清洲に移転し、NCタレットパンチプレスを導入して板金加工の能力を強化した。

1993年に鈴木宏司氏が急逝したことで、夫人(鈴木社長の母)の鈴木住子氏が2代目経営者に就任した。その後は1999年にレーザマシンを導入するなど、板金加工の多様化に対応していった。

2004年に株式改組し、社名を「㈱鈴重」に変更した。当時、鈴木社長は専務として母親を支え、ITを駆使して組織を強化し、新規得意先の開拓と事業拡大に力を注いだ。

2005年頃からは生産プロセスの改善に着手。生産管理システムを刷新する一方で、工場内ネットワークシステムを構築し、曲げのネットワーク化にも取り組んだ。

新工場への移転で工場スペースは2.5倍に

2007年に鈴木肇社長が3代目経営者に就任。同年、ISO9001の認証を取得し、品質管理体制を強化した。2012年にはベンディングマシンHD-8025NTを導入。2011年には立形マシニングセンタを導入し、事業領域を機械加工分野まで広げた。

その結果、工場が手狭になってきたことから、工場移転を計画。取引銀行から、750坪の敷地に3階建ての事務所と2棟の工場が建つ稲沢市内の物件を紹介された。当時の工場から車で10分という好立地だったため購入を決断し、2016年に本社工場を移転。これにより工場スペースは2.5倍に拡大した。

2018年にはパンチ・レーザ複合マシンLC-2012C1NT(パレットチェンジャー仕様)と2台目のベンディングマシンHD-8025NTを導入。2022年には、1999年から使用していたCO2レーザマシンをファイバーレーザマシンVENTIS-3015AJ(4kW・パレットチェンジャー仕様)に更新した。新しい設備が加わったことで、工場スペースだけでなく、加工能力も強化された。

  • 画像:ITツールの活用と機械化・ロボット化で自動化・省人化を推進パンチ・レーザ複合マシンLC-2012C1NT
  • 画像:ITツールの活用と機械化・ロボット化で自動化・省人化を推進HD-8025NT×2台などのベンディングマシンが並ぶ曲げ工程

包装機械部品の仕事が50% ― 「即日板金」への対応で受注拡大

同社の業績は、2023~2024年と横ばいで推移している。「2025年も先が読めない」(鈴木社長)というものの、売上構成で約50%を占める包装機械メーカーの仕事が順調に伸びており、数年前と比較すると受注量は3倍に拡大した。

主力得意先の包装機械メーカーは、1948年に売り出されたキャラメルを包む包装機械を開発。その後も食品を中心とするさまざまな商品に対応した包装機械を送り出し、日本の包装機械業界のリーディングカンパニーと呼ばれるまでに成長した。

鈴重は、板金部品を加工するサプライヤーの中でも得意先メーカーの製造拠点に近く、ロケーションの優位性を生かしながら特急・割込みの案件にも迅速・柔軟に対応することで信頼を獲得していった。

「包装機械には標準機もありますが、食品工場などのエンドユーザーの要望に応えるカスタマイズが頻繁に発生します。組立段階で設計変更が発生すると、部品が手戻りして特急でつくり直しになることも少なくありません」。

「朝になるとお客さまから何十枚というファクスが届き、製品番号・注文番号・図面が送られてきます。それらを受注登録して作業指示書を発行。図面から作成した加工データをデータサーバーに登録し、加工に着手します。そうした即日対応する案件は、毎月1,500~2,000件あります」。

「現場への作業指示書は紙で出力し、それ以外の文書類は文書管理ソフトウエアDocuWorksを活用しています。スキャンした紙の文書や電子文書などを一元管理でき、紙の文書と同じような感覚で編集できます。現場の情報端末で図面や文書を閲覧できるようになったことで、特急案件にも即応しやすくなりました」(鈴木社長)。

こうした改善の取り組みが功を奏し、包装機械メーカーからの受注量は順調に増加。今では同社の売上全体の約50%を占めるまでになった。

「お客さま1社からの売上が50%を占めている状況には不安もありますが、先が見えない景気動向の中で大きな手ごたえを感じられているのもたしか。これからも短納期対応をはじめ、お客さまの要望に応えるための努力を惜しみません」と鈴木社長は語る。

日本包装機械工業会の予測によると、2024年度の包装機械の生産高は前年度比6.6%増の4,639億円と2年連続で増加する。内訳を見ると、個装・内装機械全体で同5.7%増の3,877億円、外装・荷造機械全体で同11.3%増の761億円が見込まれており、引き続き堅調な伸びが期待できそうだ。

  • 画像:ITツールの活用と機械化・ロボット化で自動化・省人化を推進TIG溶接作業。アーク溶接ロボットによる自動化や、ファイバーレーザ溶接機による品質向上も推進中
  • 画像:ITツールの活用と機械化・ロボット化で自動化・省人化を推進同社が製作した包装機械部品(SUS304)

会社情報

会社名
株式会社 鈴重
代表取締役
鈴木 肇
所在地
愛知県稲沢市千代町砂畑22
電話
0587-50-0333
設立
1982年(1971創業)
従業員数
16名
主要事業
包装機械・工作機械・産業機械の板金部品加工、溶接組立
URL
https://www.suzushige.com/

つづきは本誌2025年3月号でご購読下さい。

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