特集

第35回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その2)

甘曲げを1,000回以上繰り返し、折り紙でつくる形状を再現

「板金 origami」が「単体品の部」グランプリを受賞

リョーユウ工業 株式会社

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画像:甘曲げを1,000回以上繰り返し、折り紙でつくる形状を再現①「単体品の部」でグランプリを受賞したリョーユウ工業㈱の「板金 origami」(SUS304・板厚1.2㎜、W335×D298×H70㎜)/②「板金 origami」を3個組み合わせたランプシェード。床面に独特の幾何学模様を照らし出す

折り紙でつくる形状を板金加工で再現

画像:甘曲げを1,000回以上繰り返し、折り紙でつくる形状を再現作品づくりを担当した「広報委員会」第3班のメンバーと諸石裕社長。左から営業課の下川和弥主任、プログラム課のプロタソフ・アレクサンダーさん、営業課の別府建司係長、諸石裕社長、プレス課の田中隆二さん、シャー・ブランク課の賀來帝二係長

リョーユウ工業㈱の「板金 origami」が「第35回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「単体品の部」グランプリを受賞した。

この作品は、折り紙でつくる形状を板金加工で再現してみたいという発想から生まれた。折り紙でつくるのは簡単だが、板金加工では難しい。一度に所要角度まで曲げてしまうと、それに引っ張られて別の部分が変形してしまうため、各所を1~2度ずつの角度で少しずつ曲げ、トータルで1,000回以上の曲げ加工を行った。角部が丸くなったり寸法精度が低くなったりすることもなく、加工難易度が高い板金加工で折り紙を再現したことが評価された。

同社は九州シートメタル工業会の会員企業で、諸石裕社長は板金フェア上位賞の常連であるナサ工業㈱(福岡県)㈱ナダヨシ(同)の経営者とも親交がある。

諸石社長は「両社とも10年以上前から板金フェアに継続して参加し、結果を出してきました。板金フェアに参加することで社員のスキル向上、モチベーションアップだけでなく、企業価値向上にも役立っているという話を聞き、刺激を受けました」と語る。

「待ち工場」からの脱却を目指し小集団活動に取り組む

同社は毎月200社以上から受注し、5,000アイテム以上を短納期で納品する受託加工業者。一品一様の仕事が約90%を占めている。

「かつては図面をいただかないと仕事ができない『待ち工場』でしたが、いずれは『メーカー型ビジネス』にチャレンジしたいと考えていました。お客さまからの指示を待つのではなく、自分たちで考える能力を身につけ、アイデア出しから設計、加工まで対応する。そして自社製品の売上が全体の10~20%を占めるような会社にしたいと考えました」。

「そこで4年ほど前から小集団活動に取り組み始めました。2年前には『働き方改革推進委員会』『広報委員会』を発足させ、2つの委員会の下に4班ずつ組み込みました。職務・職制にかかわらずリーダーを決め、リーダーを中心に1年間活動し、3カ月ごとに活動の進捗状況を報告します。1年間の活動が終わると全社員が、自分が所属する班を除く班の中から、どの班の活動と成果が良かったか投票します。上位1~3位は、私が主催する食事会に招待します」(諸石社長)。

  • 画像:甘曲げを1,000回以上繰り返し、折り紙でつくる形状を再現SheetWorksで3次元モデルを作成するアレクサンダーさん
  • 画像:甘曲げを1,000回以上繰り返し、折り紙でつくる形状を再現賀來係長(右)はパンチ・レーザ複合マシンACIES-2515B(左)で作品のブランク材を加工した

「折り紙建築」が発想の原点

「広報委員会」は、企業イメージ向上の活動のひとつとして板金フェアへの応募をテーマに掲げ、それが今回のグランプリ受賞につながった。アイデア出し、デザイン、設計、展開・プログラム、切断、曲げまでを完結して作品を完成させることを「広報委員会」のミッションとし、どの班が製作を担当するかは委員会で決めた。

その結果、製造部シャー・ブランク課の賀來帝二係長がリーダーを務める「第3班」が製作を担当することに決まった。第3班には賀來(かく)係長のほか、営業部営業課の別府建司係長、下川和弥主任、製造部プレス課の田中隆二さん、製造部プログラム課のプロタソフ・アレクサンダーさんが所属している。

2022年7月に第3班が作品づくりを担当することになり、メンバーが集まって議論した。アイデアがなかなか出ず、募集4部門のどこに応募するかも決まらない中、リーダーの賀來係長が「板金 origami」を提案した。

「たまたまケント紙のような紙に切り線・折り線を入れて折り曲げ、建築物や記念碑を立体的に再現する『折り紙建築』という技法があることを知っていたので、それを板金加工でできないだろうかと考えました」。

「その時点で『板金 origami』という名前が思い浮かび、メンバーに相談したところ、全員が『おもしろい』と言ってくれました。次はどんな形状にするか議論し、ランプシェードや花瓶シェードを『板金 origami』でつくることに決まりました。当初は3個製作して組み立てるつもりでしたが、試作を繰り返す中で、そのうちの1個を板金フェアの『単体品の部』に出そうという話になりました」(賀來係長)。

  • 画像:甘曲げを1,000回以上繰り返し、折り紙でつくる形状を再現曲げ加工をする田中さん
  • 画像:甘曲げを1,000回以上繰り返し、折り紙でつくる形状を再現甘曲げした部分の側面

会社情報

会社名
リョーユウ工業 株式会社
代表取締役社長
諸石 裕
所在地
福岡県糟屋郡宇美町障子岳南5-3-5
電話
092-933-6811
設立
1972年
従業員数
49名
主要事業
建築板金・精密板金・内装製作・サイン(看板)製作・装飾金物・特殊車両トラックのボディ製作など
URL
https://ryo-u.com/

つづきは本誌2023年6月号でご購読下さい。

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