特集

第36回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その1)

曲線とすき間の調和で魅せる ― 曲げ加工時の変形影響を高い技能で克服

「瓢箪ランプシェード」が「中央職業能力開発協会会長賞」を受賞

リョーユウ工業 株式会社

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画像:曲線とすき間の調和で魅せる ― 曲げ加工時の変形影響を高い技能で克服「中央職業能力開発協会会長賞」を受賞した「瓢箪ランプシェード」(SUS304・板厚1.0㎜、W300×D300×H380㎜)。曲げ加工時に起こる変形影響を克服した高い技能が評価された

高い技術力でダブル受賞を達成

画像:曲線とすき間の調和で魅せる ― 曲げ加工時の変形影響を高い技能で克服左から藤井裕子常務、プログラムを担当した業務課・千代広武さん、プレス課・田中隆二リーダー、曲げを担当したプレス課・宮本俊司さん、業務課・溝川卓也課長、ブランク課・渡邉悠太さん

「第36回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「単体品の部」に出品したリョーユウ工業㈱の「瓢箪ランプシェード」が「中央職業能力開発協会会長賞」を受賞した。同賞は「卓越する技能を用い、独自の手法を開拓したと思われる作品」に贈られる。

この作品はランプシェードに合った優しい曲線と適度なすき間の調和が美しい。SUS304・板厚1.0㎜の板に5㎜間隔でスリットを入れ、スリット部の上段部の曲げ、中間部の逆曲げ、下段部の曲げを順番に繰り返している。スリット加工した短冊部の曲げ加工時に起こる反りやひねり、ねじれなど、変形影響を克服した高い技能が評価された。

今回は「組立品の部」に出品した「織りかご」も「最新の加工技術、設備機器を駆使して品質・コストの改善に寄与したと思われる作品」に贈られる「アマダ賞」を受賞した。

同社はこの5年間、委員会活動の一環として板金フェアに参加している。初参加だった第32回(2019年度)で「山笠」が、第34回(2021年度)で「涅槃像」がそれぞれ「造形品の部」の「技能賞」を、第35回(2022年度)で「板金 origami」が「単体品の部」のグランプリを受賞。今回は「中央職業能力開発協会会長賞」「アマダ賞」のダブル受賞と、着実にステップアップしている。

建築板金・精密板金・内装製作などがメイン

リョーユウ工業は1972年の創業以来、鉄・アルミ・ステンレスの切断、曲げ加工を一筋に事業展開をしてきた。建築板金・精密板金・内装製作・サイン(看板)製作・装飾金物・特殊車両トラックのボディー製作など、手のひらサイズから最長8mまで幅広い製品に対応する。図面のバラシから切断、曲げ、溶接までを一貫して加工可能な体制をつくり上げるとともに、品質管理体制も確立。多品種少量や短納期など、多様化する顧客のニーズに応えている。

それを可能にしているのが、同社の強みである「技術力」だ。諸石裕社長はマシンの自動化・システム化などにより差別化が難しくなってきた今、「技術力」の強化が必要だと考えた。また、図面をもらうまで仕事ができない「待ち工場」から脱却し、「メーカー型ビジネス」を目指すためには、みずから考え、行動する「自走の精神」を社員たちにも持ってもらう必要がある。そこで、人材育成のために5年前から導入したのが同社独自の全員参加の「委員会」制度だ。

画像:曲線とすき間の調和で魅せる ― 曲げ加工時の変形影響を高い技能で克服4回の試作を重ね誕生した「瓢箪ランプシェード」(クリック拡大)

「委員会」活動で「自走の精神」を育む

同社の委員会には「働き方改革推進委員会」「広報委員会」があり、求人活動やSDGs対応、B to C市場の開拓、5S対応など、活動内容によって7つの班に分かれている。活動は1年度ごとの区切りで行われており、班ごとに予算も配分されている。委員会活動による残業は1回1時間までと決められているが、頻度はそれぞれの班の判断に委ねられており、残業としての申請が認められる。結果報告のための発表会が年3回行われ、最後の発表会では費用対効果や整合性などの7つの審査項目を社員みんなで評価。一番評価が高かった班は諸石社長が主催する食事会に招待される。

各班のリーダーにはその班の前年度の班員のうち1名がそのまま繰り上がるかたちで就任する。ほかのメンバーは年度ごとに第1~3希望を選び、その回答をもとに振り分けられる。

全社員を小集団化して、興味のあるテーマで取り組むことで、問題意識や向上心が芽生え、解決のために何をすべきかを考え、行動する。それにともない、スキル向上やコミュニケーションの円滑化などにもつながる。

藤井裕子常務取締役は発表会を開催する意味について、「仕事柄パソコンに触れる機会の少ない現場作業者にも、パソコンの操作に慣れ、プレゼンテーション力を培ってもらいたいと考えました。高齢化が進む中、定年年齢の引き上げは必然ですし、シニア世代も必要な戦力です。体力が落ち現場作業がきびしくなったとしても、パソコンを使えれば何かしらの管理業務をお願いすることができます。本人にとっても必ず役に立つスキルとなってくるでしょう。発表会はそのための下準備としての意味合いもあります」と語っている。

委員会活動を始めて5年、プレゼンテーション力と資料のレベルは年々アップしており、諸石社長が想定していた以上の効果を生んでいる。

画像:曲線とすき間の調和で魅せる ― 曲げ加工時の変形影響を高い技能で克服左:パンチ・レーザ複合マシンACIES-2515B/右:曲げ長さ8mのベンディングマシン。ここまで長尺に対応するマシンを保有している企業は少ない

会社情報

会社名
リョーユウ工業 株式会社
代表取締役
諸石 裕
所在地
福岡県糟屋郡宇美町障子岳南5-3-5
電話
092-933-6811
設立
1972年
従業員数
49名
主要事業
建築板金・精密板金・内装製作・サイン(看板)製作・装飾金物・特殊車両トラックのボディー製作など
URL
https://ryo-u.com/

つづきは本誌2024年5月号でご購読下さい。

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