特集

第36回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その2)

不均一な変形を見せるスクリュー羽根 ― 3次元設計と熟練技能の融合で挑む

「テーパースクリュー」が「審査委員会特別賞」を受賞

絹川工業 株式会社

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画像:不均一な変形を見せるスクリュー羽根 ― 3次元設計と熟練技能の融合で挑む①審査委員会特別賞」を受賞した「テーパースクリュー」(SUS304・板厚2.0㎜、W400×D80×H80㎜)/②SheetWorksで作成した3次元モデル/③ビードカットとバフ研磨で芯棒と羽根を一体化

先端へ向かうにつれて径が細くなる「テーパースクリュー」

画像:不均一な変形を見せるスクリュー羽根 ― 3次元設計と熟練技能の融合で挑む左から、業務部・原子大輔部長、製造部・石坂一樹課長、同・田中隆一チーフ、業務部・西井隆宏主任、泉昇志社長

「第36回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「溶接品の部」に出品した絹川工業㈱の「テーパースクリュー」が「審査委員会特別賞」を受賞した。

この作品は、先端へ向かうにつれて、らせん状の羽根の径が徐々に小さくなるテーパー形状のスクリュー。両端の羽根の外径比は2:1で、最も大きい根もと部分は外径80㎜、最も小さい先端部分は外径40㎜となっている。

羽根は、少しずつ径が変わるC形状のブランク材(SUS304・板厚2.0㎜)を5枚製作し、突き合わせ溶接でつなぎ合わせて1部品としている。その後、羽根の両端を昇降式溶接テーブルで引っ張ってらせん状に変形させながら、羽根の内径部分と芯棒(φ15㎜)を溶接した。

径が異なると、同じ引っ張り強さでも均等には変形しない。少しずつ引っ張りながら、径が小さく変形が大きい先端部分から順番に接合していき、隣接ピッチ80㎜±0.5㎜の均一ならせん形状になるよう調整している。溶接箇所はビードカットを行い、最後にバフ研磨を行って芯棒と羽根が一体に見えるように仕上げた。

設計段階では、3次元ソリッド板金CAD SheetWorksを使って3次元モデルを作成し、それをもとに溶接による膨張・収縮を考慮しながら展開を行った。

羽根の部分のモデルは、①SheetWorksの「関係式駆動カーブ」機能によりらせん状のガイドラインを描く、②「スイープ」機能により断面形状をガイドラインに沿って押し出し、径が同一のスクリューのモデルを作成する、③羽根の外周部をテーパーカットして径が徐々に小さくなる形状に修正する ― という3ステップで作成している。

らせん曲げ用の特殊金型などを使用することなく、汎用的な3次元CADと加工設備を駆使して製作しており、高度な技術・技能が融合した一体感のある作品として評価された。

画像:不均一な変形を見せるスクリュー羽根 ― 3次元設計と熟練技能の融合で挑む左:C形状の5枚のブランク材。らせん状に伸ばす際の不均一な変形のしかたを踏まえ、4回ほど展開図を修正した/右:5枚のブランク材を突き合わせ溶接でつなぎ合わせて1部品にした

「目標管理指標」に板金フェアへの挑戦を設定 ― 「中期経営計画」からブレークダウン

絹川工業は1947年の創業以来、70年超にわたって金属加工に携わり、1980年代後半からは製缶板金加工を主体に発展を遂げてきた。

現在は主力の「本社工場」のほか、主にステンレス製品の溶接を手がける「野々市工場」(2010年開設)と、建設機械部品に特化した「水澄工場」(2019年開設)の3拠点を展開。今年4月には、導入後14年が経過したパンチ・レーザ複合マシンをファイバーレーザ複合マシンACIES-2512T-AJe(2棚・TK仕様)に更新するなど、設備投資にも積極的だ。

売上構成は、繊維機械部品が最も多く、建設機械部品、搬送機器部品、トラック架装部品、制御盤、半導体製造装置部品などと続く。鉄系材料の製品を主に手がけてきたが、近年は食品包装機械や半導体製造装置といったステンレス製品の案件も増える傾向にある。

今期(2023年9月~2024年8月)は、2020年に作成した「中期経営計画(2020~2025年)」の3年目。泉昇志社長が中期経営計画で重要テーマとして掲げたのが「ステンレスに特化した新技術の獲得」だ。付加価値の高いステンレス製品にターゲットを定め、中でも景気変動の影響を受けにくい食品機械や、成長産業である半導体製造装置の分野で新規開拓を目指している。

さらに、中期経営計画からブレークダウンするかたちで、グループごとに毎期の「目標管理」を行い、期初(9月)に設定した「目標」に基づいてさまざまな活動を進めている。泉社長は2023年9月、今期の「目標」のひとつとして「板金加工技術の向上」を設定し、その管理指標のひとつとして「優秀板金製品技能フェアでの入賞」を掲げた。

泉社長はその意図について「通常業務の受託加工とはちがい、板金フェアの作品づくりでは企画から設計・製造までの全プロセスを一貫して手がけることになります。当社の技術と知識を生かしながら独自性のある作品づくりに挑戦し、利害関係のない第三者の方々に客観的な目で評価していただくことは、自分たちの技術レベルを知り、技術を磨く絶好の機会になると考えました」と語る。

画像:不均一な変形を見せるスクリュー羽根 ― 3次元設計と熟練技能の融合で挑む左:両端を昇降式溶接テーブルで引っ張って、らせん状に変形させる/右:らせん形状の反発力を考慮しながら仮溶接を行っていく

会社情報

会社名
絹川工業 株式会社
代表取締役社長
泉 昇志
所在地
石川県白山市福留町378-1
電話
076-277-0125
設立
1988年(1947年創業)
従業員数
45名
主要事業
繊維機械部品・物流機械部品・食品機械部品・建設機械部品・半導体製造装置部品・各種自動化部品などの製造・組立
URL
https://kinukawa.co.jp/

つづきは本誌2024年6月号でご購読下さい。

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