第36回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その2)
訓練生7名の強みを結集させた意欲作 ― 職業人としての資質向上につながる
「CUBIC BALL」が「学生作品の部」の金賞を受賞
山形県立庄内職業能力開発センター
高い技能や製作背景が高い評価につながる
「第36回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「学生作品の部」に出品した山形県立庄内職業能力開発センターの「CUBIC BALL」が「学生作品の部」の金賞を受賞した。同賞は「学生の作品で特異性があり特に優秀と認められる作品」に贈られる。
「学生作品の部」の応募作品のレベルは年々高くなっており、表彰式の講評でも「このまま製品あるいは製造技術に結びつくのではないかという高いレベルのものが出品されている」と評されている。その中でも金賞を受賞したこの作品は「板金加工全工程における高い技能を感じる作品で、個々の学生技術者の意欲・能力の向上や、作品をつくり上げるために互いに協力し合う一体感が感じられる」ことが高い評価に結びついた。
立方体から球体への形状変化を表現
「CUBIC BALL」は山形県立庄内職業能力開発センターの2023年度訓練生である髙田矩行さん、畠山莉来さん、伊藤陽一さん、榊新さん、中島章さん、遠藤輝樹さん、池田園子さんの7名が力を合わせて製作した作品だ。
正八胞体(超立方体)から着想を得てデザインされており、立方体から球体への形状変化を表現している。板金・溶接に加え、各種工作機械(旋盤・フライス盤など)や3次元CADなど、センターの訓練で習得した技術・技能をもとに訓練の集大成として製作された。作品の軸となる中心部は旋盤・フライス盤による加工、球体部はニブリング加工と塗装、周辺の14個のキューブは板金加工(抜き・曲げ)・TIG溶接・仕上げ(バフ研磨など)・塗装によって製作されている。ボルトの一本一本まで、この作品のために設計・製造されており、形状・バランス・均一な仕上げなど、細部までこだわりを感じる作品となっている。
材料は耐食性と仕上げに適したステンレスSUS304、板厚は溶接ひずみなども考慮して1.5㎜を採用。加工性や軽量化のため、真鍮やアルミも使用している。
受賞作品を製作した2023年度訓練生は3月に修了してしまったため、取材では髙橋昌之所長と濵﨑哲文指導専門員に話をうかがった。
基礎から応用力まで身に付けた即戦力を育成
山形県立庄内職業能力開発センターは、山形県酒田市にある求職者などを対象にした公共職業能力開発施設。「金属技術科」では金属製品の製作に必要な加工技術の基礎知識を学び、板金加工や産業機械の取り扱い、各種溶接方法、機械加工など、ものづくりに必要な技能を習得できる。訓練期間は1年間で、4~12月中旬は板金加工(塑性)・溶接・機械加工に対する学術的・技能的な基礎を学ぶ「基本訓練」、12月中旬~3月は修了後の就職分野を考慮し、各自の専門分野に分かれてさらに高度な訓練を行う「専門別訓練」となっている。1,400時間におよぶ座学・実習を通して、企業が求めるスペシャリストを育成する。
設備は隣接する県立産業技術短期大学校庄内校の生産エンジニアリング科と共有しており、センターで所持するベンディングマシン、溶接機などの汎用機械のほか、短大の持つ旋盤やフライス盤なども使用できる。
基礎から応用力までの知識・技術を身に付けた訓練生たちは修了後には即戦力としての活躍が期待され、毎年、センターには周辺企業から多くの求人の問い合わせが寄せられる。訓練生たちは訓練を通して自身の得意分野を見つけ出し、7~8月には会社訪問を済ませ、9月頃には就職先への内定が決まっていることが多い。
髙橋所長は「12月中旬からの『専門別訓練』では、訓練生それぞれが内定企業からの要望や課題 ― 『この資格を取っておいてほしい』『この技法についてもっと練習してきてほしい』などに合わせてより専門的な訓練をしていきます。基礎を固めた後は実践的課題に取り組むことで、訓練生も入社のための準備ができます。できるだけ企業と近い視点で取り組むことで、入社後も戸惑いなく仕事ができる―これは当センターの特色でもあります」と説明する。
学校情報
- 学校名
- 山形県立庄内職業能力開発センター
- 所長名
- 髙橋 昌之
- 所在地
- 山形県酒田市京田3-57-4
- 電話
- 0234-31-2700
- 生徒数(定員)
- 1959年(1947年創業)
- 従業員数
- 20名
- 学科
- 金属技術科
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