第36回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その1)
重心・バランスによる動きの表現が「斬新なアイデア」として評価される
「不落のバランス」が「神奈川県知事賞」を受賞
ナサ工業 株式会社
重心バランス用いた点が高い評価につながった
「第36回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「造形品の部」に出品したナサ工業㈱の「不落のバランス」が「神奈川県知事賞」を受賞した。同賞は「将来の製品化に期待が持てるアイデアや考え方、技術・技能が含まれている作品」に贈られる。バランスによって動きを表現するという斬新なアプローチが高く評価された。
この作品は「何をしても倒れず自身でバランスを取るもの」をコンセプトに製作されている。詳細設計には、今まで活用しきれていなかった3次元CAD SolidWorksの重心機能を使用した。今、重心がどこにあるか、バランスは取れそうかを予測しながら設計した。
溶接の際には溶接ビードの数により、グラム単位の重量誤差でバランスが崩れてしまうため、微調整を繰り返した。また、金めっきも膜厚の差で数グラムの誤差が生じ、バランスが崩れてしまうため、ゴールドの塗装でミクロン単位の微調整を行った。
2010年度から参加 ― 数々の賞を受賞
同社は技術力向上と社員教育の一環として、第23回(2010年度)から板金フェアに応募している。社内で応募作品の製作を希望する社員を募集し、その中で選出されたリーダーが応募作品のテーマやコンセプトをほかの参加者にプレゼンテーションする。公表された内容に共感したメンバーでチームを編成し、作品をつくるという流れになっている。そのため、多い時には異なるテーマで、4組ほどの製作チームが誕生することも珍しくなく、社内は盛り上がる。
これまで、第25回(2012年度)で「壺」が「単体品の部」の金賞、第28回(2015年度)で「スケルトンエスカレーター」が「経済産業大臣賞」、第29回(2016年度)で「FLAT-PANEL-CHAIR」が「厚生労働大臣賞」を受賞。第30回(2017年度)では「ギアクロック」が「神奈川県知事賞」、「Stitched Tube Ring」が「日刊工業新聞社賞」、「じょうろ」が「高度溶接品の部」の銅賞とトリプル受賞を達成した。第33回(2020年度)で「曲旋」が「中央職業能力開発協会会長賞」、第34回(2021年度)で「METANICALBOX」が同社2度目の「神奈川県知事賞」、「円舞(エンブ)」が「単体品の部」の技能賞を受賞するなど、毎年応募作品の多くが上位賞を受賞している。そして、2023年度の第36回では3度目の「神奈川県知事賞」受賞となった。
全社員で作品製作チームをサポート
「板金フェアには2010年からほぼ毎年参加しています。一度に4チームで参加したこともありますが、厳選した2チームぐらいで参加するのが一番良いように思います。現在はリーダー役を決めてからメンバーを編成、作品のコンセプトやテーマを打ち合わせて、社員全員で話し合ったアイデアを盛り込んだモデルを3次元CADで作成します。メンバーに設計部門のスタッフがいればその者がモデルを作成しますが、いない場合は設計部門のスタッフがサポートメンバーとしてモデル作成に協力します」。
「同様に製作を担当する作業者が不在の場合には該当部門のスタッフがサポートすることもあります。以前は私や専務、ベテラン社員がアドバイザーとして協力していましたが、今ではチーム以外の社員も積極的に手助けをするようになっています。そのためアドバイザー制度もやめました。最近は毎年、何かしらの賞をいただけているので、応募する際にはコンセプトやテーマとは別に、どの賞を狙った作品づくりを行うのか、宣言することにしています。そのうえで集まったチームメンバーでワイガヤをし、目標の賞を目指して、製作を行っていきます」(長澤貢多社長)。
会社情報
- 会社名
- ナサ工業 株式会社
- 代表取締役
- 長澤 貢多
- 所在地
- 福岡県糟屋郡須恵町大字佐谷1323-1
- 電話
- 092-932-1126
- 設立
- 1974年(1969年創業)
- 従業員数
- 105名
- 事業内容
- エスカレーター外装(設計・製作・工事)、エスカレーター付帯製品、エレベーター付帯製品、医療・機械装置向け精密板金部品、車両部品、配電盤の設計・製作、サイン・建築金物、電気工事・プラント工事向け各種金物、各種開発設計・製作協力
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