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新たな日常に対応する食品機械

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日本食品機械工業会が主催する「FOOMA JAPAN 2021」(2021国際食品工業展)が6月1日から4日まで、愛知県国際展示場(Aichi Sky Expo)で開催された。

開催趣旨は「食品機械・装置および関連機器に関する技術ならびに情報の交流と普及をはかり、併せて食品産業の一層の発展に寄与することとし、『食の安全・安心』に関心が高まる中、食品機械の最先端テクノロジー、製品、サービスを通して、『食の技術が拓く、ゆたかな未来』を提案する」としていた。

愛知県では6月20日まで新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の拡大にともなう緊急事態宣言が発令されていて、不要不急の外出自粛が要請される中での開催であった。会場では入場者数を制限するなど、徹底した感染予防対策がとられており、中部国際空港駅から会場までも人の波にもまれることなく、スムーズに移動することができた。

会期中の来場者数は2万2,420人で、2019年の来場者数と比較すると1/4弱となった。開催場所が名古屋に変更になったことや、名古屋駅から電車で30分ほどかかる立地など、誘客には不利な条件もあったが、それなりに来場者が入っていた。ブース内が密になると入場制限を行う出展者も見られた。

新型コロナの影響で国内外の移動が制限され、年間3,000万人もの海外からの観光客 ― インバウンド需要はほぼゼロの状態になっている。これにより、土産物を商う商店をはじめ、「食」に関連する業界は非常に苦しい環境に置かれており、食品機械業界もその影響を大きく受けている

その一方で「巣ごもり需要」が旺盛になり、テイクアウトや冷凍食品、スーパー向けのスイーツ、菓子類の需要が伸びるなど、二極化が起きている。

さらに、1年の猶予期間が終わり、改正食品衛生法によって6月1日からHACCPへの対応が完全義務化された。規模に関わりなく食品工場、飲食店は衛生管理の取り組みにおいては「計画」「実施」「記録」のサイクルを実施することが必須となっている。

人手不足もさることながら、「食の安全・安心」を担保するための取り組みが求められていることもあって、FOOMAの会場ではロボットを活用した食品加工ラインやHACCPに対応してトレーサビリティーを重視したシステムが展示されていた。

中堅以上のメーカーがテーマに掲げていたのが、食品加工工場の「スマートファクトリー」だ。クラウド環境を活用していつでもどこからでも稼働状況や、品質の履歴管理を可視化できるシステムをPRした。それと併せて、人手不足・熟練作業者不足に対応し、IoTを活用した遠隔サポートシステムを出展していた。

また、製造する食品の種類が多様化しているため、ラインの組み換えが容易に行えるように、加工機能をモジュール化、ブロック&ビルド方式でフレキシブルに対応できるシステムを展示するメーカーもあった。

客席を持たずデリバリーのみで顧客に料理を提供するゴーストレストランの登場など、「食」に関連した日常が大きく変化してきている。メーカーも消費者の価値観の変化に柔軟に対応するために多機能でコンパクト、省人化、さらにはカーボンニュートラルに対応する省エネ志向の新製品を出展していた。そして来場者の関心がどこにあるのか、変化の兆しを捉えようとする積極的な姿勢が目立っていた。

食品機械には板金製品 ― 中でもSUS304を使う製品が特に多い。それだけに変化対応力を備えた食品機械メーカーのこれからの衛生設計に対応したものづくりの変化を注視しなければいけない。

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