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継続は力なり ― 事業承継で成長する変化対応力

マンションの鋼製建具が売上の90%

台風19号の被害から2週間で復旧・復興

株式会社 泰新

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画像:マンションの鋼製建具が売上の90%第2工場が竣工する時に導入したファイバーレーザマシンLCG-3015AJ(2kW)+ASFH-3015G

鉄骨加工から板金の建具製作へ事業転換

画像:マンションの鋼製建具が売上の90%臼井大史専務と夫人の臼井郁部長

㈱泰新の創業者、臼井一光社長はもともと苺や野菜を栽培していたが、気候や市況で価格が大きく変動し、不安定なことから転業、知り合いの鉄骨加工業者で鉄骨加工を学んだ。1986年、敷地内に工場を建設し、㈲泰新を設立、鉄骨工事や建造物の骨組み加工などを行うようになった。

事業は軌道に乗り、都営住宅・公団住宅、マンションなどの鋼製建具、メーターボックス、ガスチャンバーなどを主に製造するようになっていった。鉄骨加工の経験を生かし、形鋼でフレームを製作、そこにトビラなどの板金パネルを貼るという工法で製作した。その後、形鋼から板金へと工法が変わり、シャーリングマシン、パンチングマシン、ベンディングマシンといった板金加工設備を導入していった。

得意先は建材メーカーや商社が大半で、ゼネコンから直接注文を受けることはなかった。

季節変動が大きく、納期が年度末に集中

建築案件の多くは竣工時期が年度末のため、10月から翌年2月までが繁忙期。最近は公営住宅や公団住宅より民間のマンションの仕事が多い。受注する案件は1~2階の低層建物、3~5階の中層マンションが多く、15階以下が大半で、20階以上の高層マンションの案件はわずかしかない。鋼製建具の取り付けは、建物がほぼできあがった段階で階層ごとに行うため、階ごとに納入日が指定され、現場の施工日に合わせた作業が求められる。

また、製品の大半は案件ごとに形状・寸法が異なるため、受注生産が基本で、標準品という考え方はほとんどない。

事業承継者であり業務全体を把握する臼井大史専務は「現場に合わせて建具を設計するため、施工現場で原寸を確認し、設計・製作することもあります。まれに取り付け段階で不具合が見つかり、つくり直しになる場合もあります。その場合は、特急で対応しなければなりません」。

「10階前後の大型マンションの場合、総戸数が数百戸という案件もあるので、ロット数百台という場合もあります。納期は受注から2週間、短いと2~3日で対応する場合もあり、繁忙期は特急・割込みも入って大変です」という。

画像:マンションの鋼製建具が売上の90%左:「V-factory Connecting Box」を介してアマダのIoTサポートセンターとリンクしており、マシンの稼働状況もすぐに確認できる/右:ベンディングマシンHDS-1303NTによる曲げ加工

職住近接の考え方が変わり建設需要が変化

昨年4月以降は新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染拡大によって建設工事現場が工事を中断した影響もあり、8〜9月の売上は減少した。10月以降は例年どおりの忙しさに戻り、年度内は前年並みの受注を確保しているが、4月以降の見込みは立っていない。

「感染防止対策のためテレワークが普及し、職住近接という従来の考えが変わり始めています。2020年の住宅着工件数は前年を大きく下まわると見込まれており、働き方の変化が住宅事情に大きく関わってくると思います。それだけに鋼製建具の需要がどのように変わっていくのか心配です」と臼井専務は今後への不安を語る。

事業承継者の入社と第2工場の建設

臼井専務は「中学・高校時代は事業承継のことなどまったく考えておらず、ほかの仕事に就くつもりでした。しかし、卒業を控えた頃、父から『仕事を手伝って』と言われました。子どもの頃から父の仕事を見て育ち、ものづくりに興味があったこともあり家業の手伝いを始めました」。

「当時は形鋼加工から板金加工に事業転換する時で、導入した板金加工設備の操作を覚えながら、仕事に取り組みました。父や数人の社員たちは、溶接には慣れていましたが機械操作には不慣れだったので、切断から抜き、曲げまでの加工を私が担当しました」という。

創業以来、本社工場の狭い工場スペースにさまざまな設備を導入してきたが、2000年代に入って物理的な限界が見えてきたことで、新工場建設を計画するようになった。

「2006年にベンディングマシンHDS-1303NT、2008年にパンチングマシンAC-255NTを導入する際も、工場の手狭さがネックでした。そしてリーマンショック後に、現在の第2工場の土地を購入し、2014年に工場建設に着手、年末に竣工しました」(臼井専務)。

  • 画像:マンションの鋼製建具が売上の90%TIG溶接作業
  • 画像:マンションの鋼製建具が売上の90%溶接が終わった鋼製建具のボックス

会社情報

会社名
株式会社 泰新
代表取締役社長
臼井 一光
本社
栃木県鹿沼市久野716-3
第2工場
栃木県鹿沼市久野573-1
電話
0289-74-7125(第2工場)
設立
1986年
従業員数
15名
主要製品
建築鋼製建具の製作販売、都営住宅・公団住宅・民間用点検口およびメーターボックス、パイプボックス、チャンバー関係、消防車両部品
URL
https://www.t-taishin.net/

つづきは本誌2021年3月号でご購読下さい。

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