大手と付き合うには“受け皿”が必要
研修会の開催や公共展への参加も考えたい
神奈川県シートメタル工業会 会長 太田 光昭 氏 (トーカイ工業 株式会社 取締役会長)
太田光昭氏
一般社団法人日本建設機械工業会によると、2018年の建設機械出荷金額の総合計は前年比8.1%増の2兆7,590億円。ピークだった2008年を超え、過去最高となった。米中貿易摩擦の影響が心配された外需も17.1%増となり、中国向けの落ち込みをそれ以外の地域への輸出でリカバーできたことで2年連続増加を記録した。高水準の需要が継続している地域のおかげで、今のところ2019年も横ばいが見込まれている。
神奈川県秦野市にあるトーカイ工業㈱は、好調な建設機械の基幹モジュールに使われる板金部材の1次サプライヤー。そこでトーカイ工業の取締役会長であり、神奈川県シートメタル工業会の会長でもある太田光昭氏に、板金業界の動向やシートメタル工業会の役割について話を聞いた。
2019年の建設機械業界は横ばい
― 米中貿易摩擦などにより中国市場の減速がいわれていますが、2019年の景況をどのように予測されていますか。
太田光昭会長(以下、姓のみ) 半導体製造装置関連は昨年9月以降から減速が続き、こうした仕事をされている企業は仕事が減っているようですが、落ち込みが長期化する様子はなく、年度が変わる頃から徐々に回復してくるという見方もあります。
工作機械も受注が減少傾向ですが、受注残がかなりあるので、生産は秋口まで高原状態が続くと思います。国内の社会インフラ関連は堅調で、ポスト五輪後も大阪万博をはじめとした大型プロジェクトが続くので、大きな心配はしていません。当面は横ばいのままいくと思います。
建設機械は、中国市場で減速が少しずつ目立ってきています。最近発表された建設機械4社の2018年4~12月の連結決算によると、売上高が10%前後、落ちています。しかし、北米やアジアなどで高水準の需要が続いているため、全体的には大きくは響かないと思います。
中国市場は、2月の春節明けの個人消費をはじめとした経済の動向が目安になると思います。当社は建機以外に特殊車両や工作機械などの仕事も受注していますが、仕事は減っていません。
メーカーとサプライヤーの密なコミュニケーション
― 板金業界でも、人手不足や人材育成が大きな課題となっています。どのような取り組みをされていますか。
太田 板金業界で一番問題になっているのは「人手不足」です。その解決策は、AIやIoTなどを活用し、自動化を進めることだとよく言われますが、AI・IoTの活用は生産性向上の“手段”のひとつです。あくまで、生産性を上げること ― 生産性を上げることによって人手不足を解消することを“目的”にしなければいけません。AI・IoTの活用という“手段”が、“目的”になってしまってはいけないと思います。いかに少ない人手で良い製品を速くつくることができるかに専念しなくてはいけません。
そのために重要なのは、お客さまからいただく製品情報である図面です。ムダのない図面をつくり、最新鋭の設備を使って生産性を上げることが、人手不足を解消する一番の近道だと思います。そのためには発注元であるメーカーと当社のようなサプライヤーとのコミュニケーションが大切だと思います。
設計者の方にも、モノづくりのプロセスを理解し、設備のスペックや保有する金型情報を理解していただいたうえで設計していただければ、加工する際のムダもなくなります。逆に、私たちサプライヤーは加工提案や改善提案を行うことによって、図面段階で品質やコストをつくり込むことができます。継続取引を行うなかでこうした努力を続けることで、Q,C,Dをさらに満足させる製品が生まれていくと思います。
サプライヤーが受注する加工製品には、自社で加工できずに外部調達する部材もあります。そうした部材のなかには、手配から入手までに時間を要する足の長いものもあります。部材を調達できないと納期遅延などの問題が起きるので、内示情報を早めに提供していただくことも必要です。当社の主力のお客さまには内示を早い段階で出していただけるように要望しています。
メーカーとサプライヤーがコミュニケーションを密にすることによってムダは減り、生産スピードを速めることができます。これからは、メーカーとサプライヤーの一体化が非常に重要となってくるのではないでしょうか。
会社情報
- 会社名
- トーカイ工業 株式会社
- 取締役会長
- 太田 光昭
- 代表取締役社長
- 太田 光俊
- 住所
- 神奈川県秦野市戸川3-3
- 電話
- 0463-74-2560
- 設立
- 1961年
- 主要事業
- 板金・溶接部品の製造、板金加工および組立溶接作業一切の業務、線材加工および溶接工程
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