Webマーケティングが少数精鋭企業の要に
“選択と集中”と“マーケットイン型”の発想力
株式会社 星製作所 代表取締役 星 肇 氏
板金ケースのサンプル製品。表面処理まで対応が可能
東京都八王子市にある㈱星製作所は、産業・電子機器向け部品、基板実装関連部品、情報・通信関連部品などの薄板・精密板金加工を得意とする。
星肇社長は1965年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)を卒業後、中外製薬㈱に入社し、営業として7年間、神奈川県の県央・西部地域の大学病院など基幹病院を担当した。1995年、30歳で事業継承を決意し、同社に入社。2007年、42歳で2代目社長に就任した。
2008年のリーマンショックで売上が激減する中、2010年に板金ケースの自動見積り・セミオーダーに対応したWebサイト「板金ケース.com」を公開。Web経由での新規受注開拓に乗り出した。マーケットイン型の発想に根差したこの取り組みにより、現在ではWeb経由での受注が売上の30%弱を占めるまでに成長した。
その後も「自作ケース.com」「エフェクターケース.com」と複数ブランドを展開、今年は新たに板金筐体の設計から製品化に対応する「筐体設計.com」を立ち上げた。従業員8名という少数精鋭の企業がWebマーケティングを活用し、事業の柱に育てていった経緯を星社長にお尋ねした。
「板金ケース.com」をオープン
星肇氏
―2010年に自動見積り・セミオーダーに対応したWebサイト「板金ケース.com」を立ち上げることになった経緯を教えてください。
星肇社長(以下、姓のみ) 現在の工場が完成し、私が2代目社長に就任したのが2007年。その直後にリーマンショックが起き、売上が30%減少しました。受注が下振れすることも想定して新工場建設費用の返済計画を立てていたのですが、キャッシュフローも厳しくなっていきました。
当然、新規開拓が不可欠ですが、当社のような小規模企業は人的資源が限られ、営業が不得意です。そのためWebマーケティングに着目して、Webサイトに営業マンの役割を担ってもらおうと考えました。
“マーケットイン型”の発想
2010年にオープンした板金ケースの自動見積り・セミオーダーサイト「板金ケース.com」
―「板金ケース.com」では、製作個数・寸法・素材・穴数・表面処理などを入力すると、自動計算で概算見積りが表示されます。この独特のサービスには、どんな狙いがあったのでしょうか。
星 当時、TAMA産業活性化協会が主催する「阿部経営塾」(塾長はキリンビバレッジの元社長の阿部洋己氏)や、社会人向けビジネススクール「グロービス経営大学院」の勉強会などでマーケティングやブランディングの考え方を学んでいました。
「板金ケース.com」の直接的なヒントになったのは、埼玉を中心に展開しているスーパーマーケット「ヤオコー」の取り組みでした。ヤオコーでは、カレーやスパゲッティといったメニューごとの特設コーナーをつくって、その料理に必要な食材をまとめる販売手法を採っていました。お客さまは、必要な食材を探し回らなくて良いので、とにかく便利。この話を聞いて当社も“選択と集中”が必要だと考えました。
モノづくり企業は、「この加工ができる」「この加工が得意」といった個々の加工技術の競争に陥りがちです。しかしお客さまは、そこまで高度な技術を求めていなかったり、個々の加工技術までニーズを落とし込むことができなかったりするので、ミスマッチが起こっていました。
そこで従来の“プロダクトアウト型”の発想から、“マーケットイン型”の発想に切り替え、お客さまによりわかりやすく伝わるように「板金ケース」という製品に特化して、お客さまが最も気になるコストについてもオープンにしました。
①別ブランド「エフェクターケース.com」で提供するエフェクターケース(銅・板厚1.5㎜)/②SheetWorksとPD(Production Designer)による設計・プログラムを担当する鈴木道人工場長
会社情報
- 会社名
- 株式会社 星製作所
- 代表取締役
- 星 肇
- 住所
- 東京都八王子市美山町2161-15
- 電話
- 042-659-0808
- 設立
- 1984年(1974年創業)
- 従業員数
- 8名
- 主要事業
- 産業・電子機器向け精密板金加工、基板実装関連部品、ページング(構内放送設備)関連部品、タッチパネル関連部品、情報・通信関連部品の製造
つづきは本誌2016年11月号でご購読下さい。