Interview

ロボットの知能化を推進し、ロボット産業の拡大に貢献する

熱加工現場におけるプロセス改善を進める

リンクウィズ 株式会社 代表取締役CEO 吹野 豪 氏

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画像:ロボットの知能化を推進し、ロボット産業の拡大に貢献する吹野豪氏

リンクウィズ㈱は、インテリジェントロボットシステムのソフトウエアや、自動ロボットコントロールシステム「L-ROBOT」の開発・販売、3次元形状認識テクノロジーを活用した定量検査システム「L-QUALIFY」の開発・販売などを行っている。2015年3月にロボットの「目」となり自律的に対象物を認識する制御ソフトを開発、ロボットの知能化を推進しロボット産業の拡大に貢献することを目的に設立された。

創業メンバーの3人 ― 吹野豪氏(代表取締役CEO)鈴木紀克氏村松弘隆氏は、浜松市内にある研究開発型ものづくり企業、パルステック工業㈱のインテリジェントロボットシステムの開発プロジェクトメンバーだった。残念ながら当時のプロジェクトは失敗に終わったが、その後、CPUやハード性能の飛躍的な進化を背景に「当時のメンバーが再結成すれば今度こそ実現できる」と思い立ち、リンクウィズを創業した。

以来、「お客様の働き方ごと革新できるような全く新しいプロダクトを開発しよう」という目標を掲げ、インテリジェントロボットのシステム開発に取り組んできた。

2017年には㈱INCJ(産業革新機構)からの投資を受けた。2019年にはINCJ、パナソニック㈱、㈱ミツトヨなどから総額9億円以上の資金を調達し、事業を拡大・発展させているスタートアップ企業である。

資本金は1億円に増資。スタッフは浜松にUターンしてきたエンジニアを新規に採用し、46名まで増やすことができた。さらに、プロトタイプとして発表した製品を正式にリリースすることもできるようになった。販売先の90%は自動車関連業界となっている。

現在、吹野社長はロボットシステムの導入提案や設計を行う事業者が加盟するFA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)の幹事としても活躍する。経済産業省に協力して、ロボット自動計測のJIS規格化にも取り組んでいる。

吹野豪社長に同社の事業、ロボットシステムの将来展望などについて話を聞いた。

転機となった2019年

― 御社が創業して間もない2016年、初めておうかがいしてお話を聞きました。当時と比べ本社事務所の環境、社員の数なども各段に改善・拡大されています。

吹野豪社長(以下、姓のみ) 当時は知り合いの工場の一角をお借りして事業をスタートしたばかりで、スタッフも5名程度で開発に十分なリソースもなく、開発資金の調達にも苦労していました。

2017年に㈱INCJ(産業革新機構)から資金を調達、本社事務所を浜松市中区高林へ移転しました。2018年には経済産業省の「地域未来牽引企業」に選定されました。2019年にはそれを契機にロボットメーカーやソフト開発会社、測定機器メーカーなど、これまで当社の開発パートナーとして応援してくださっていた企業などにお願いして、総額9億円の資金調達に成功。同年5月には現在の場所にあったカスタムバイク用品店の店舗をリフォームしました。クラフトマンシップを大切にしていた店舗だったようで、外観は工場然としていましたが、内部は今のままのオープンな空間になっていました。外装や内装に少し手をかけ、本社事務所が完成しました。

1階はさまざまなメーカーのロボットを設置して、お客さまと協業してロボットシステムやアプリケーションソフトの開発、検証ができる実証ラボ・会議室。2階はオフィスと社員食堂などの福利厚生施設となっています。オープンテクノロジーを掲げて仕切りをなくし、ペーパーレス化を推進するためクラウド環境を設定して社員同士のコミュニケーション、顧客や商品に関するさまざまな情報共有ができるようにしました。

業務時間は9~18時までにしていますが、働き方改革への対応や新型コロナウイルスへの感染対策で、リモートワークにも対応しています。

画像:ロボットの知能化を推進し、ロボット産業の拡大に貢献する左:ラボにはさまざまな企業から製品サンプルが持ち込まれ、溶接ロボットによる自動化に対応するアプリケーション開発を行っている/右:1階のラボには国内ロボットメーカー各社のロボットが設置され、さまざまなテストに対応している

パナソニックと共同事業開発契約を締結

― 2019年6月にパナソニックとの間で共同事業開発契約を締結したというニュースを拝見しました。

吹野 パナソニック㈱様は1957年に溶接事業を開始して以来、60年以上にわたり自動車業界・建設機械業界・造船業界などに溶接機・溶接ロボットを提供するなど、熱加工事業を展開されています。

ものづくりの現場では昨今、「労働人口の減少」「低迷を続ける労働生産性」「物流量の急増」「超スマート社会」「働き方改革」といった社会背景のもと、さまざまな改善や改革が求められています。中でも自動車業界などの熱加工作業の現場では、技能伝承の困難さによる適正人材の不足や、EV化にともなうより軽量でより高強度な素材の接合、CSR重視による高品質の長期維持、トレーサビリティーの厳格化などが課題になっていました。

当社は独自のアルゴリズムを活用して産業用ロボット制御のシステムソフトウエアの開発・販売を行っており、溶接や塗装などを行うロボット制御ツールのソフトウエアと生産ラインにおける全量検査などを行う自動検査用ソフトウエアを開発、大手企業をはじめ多くの納入実績があります。

そこで、パナソニック様が培ってこられた製造現場での知見に、当社が持つ自律型ロボットシステムソフトウエアの知見などを組み合わせることで、「切断」「溶接」「検査」といった熱加工現場のプロセスの最適化を実現しようと考えました。人手不足や加工品質などの課題に対応し、熱加工現場におけるプロセス改善に向けたソリューション開発分野で共同事業開発契約を締結することになりました。

画像:ロボットの知能化を推進し、ロボット産業の拡大に貢献する左:ワークをスキャンしたデジタルデータをもとにロボット動作のパスを自動生成する/右:目視検査や治具検査をロボット化し、3次元スキャンデータを活用した自動検査を行う

会社情報

会社名
リンクウィズ 株式会社
代表取締役CEO
吹野 豪
所在地
静岡県浜松市東区篠ケ瀬町1044-2
電話
053-401-3450
設立
2015年
従業員数
46名
主要事業
インテリジェントロボットシステムのソフトウエアの開発・販売・技術コンサルティングなど
URL
https://linkwiz.co.jp/

つづきは本誌2021年12月号でご購読下さい。

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