板金論壇

スマートファクトリー実現には「泥臭い」作業が必要

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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「スマート化」に取り組む企業経営者の言葉

最近、お客さまを取材している中でクラウド環境を活用して生産管理を自前で開発・運用されているソフトに強い社長からお聞きしたのが「スマートファクトリー構築のためにクラウドを使ったものづくりプロセスの可視化を進めているが、『スマート』といえるようなカッコいいものではなく、実に『泥臭い』ことをやっている気がします」という言葉だ。

作業者がタブレット端末を見ながら工程や図面を確認して作業の着手・完了情報をアップロードしていても、現場でやっているのは従来と同じ「泥臭い」作業であり、作業者の経験や勘というアナログの世界が強く残っている。それだけに「泥臭さ」から抜け出ることなどはできるはずもない。頭からそう考えてしまえば納得もしやすい。デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速するとしても、ものづくりの現場作業は従来と大きくは変わらず、「泥臭い」ものなのだという気がする。

スマート化実現のために、まずは情報を整流化する

あるお客さまは、「今年から外部のコンサルタントに毎月来社してもらい、情報の整流化を含む工場内の『5S活動徹底』に取り組み始めています。製品を加工するためには製品データはもちろん、得意先、納期、ロット数、品質、コストテーブル、新規品・リピート品、図面番号、製品番号、注文番号など、さまざまな情報が不可欠です。ところがこうした情報は必ずしも一元化されておらず、しかも情報は電子化されたものから紙のものまで千差万別です。さらに、そうした情報を紐づけして一元管理するためには過去の実績データにまでさかのぼる必要があり、それは膨大な量になります。しかし、それをしなければ統合管理を実現するのは難しい」。

「スマート化は、まずこうした壁を乗り越えなければゴールが見えてきません。ですから、まずは情報の整流化に取り組まなければならない」と、自身に言い聞かせるように決意を述べておられました。

過去の製品図面や受注台帳までさかのぼるとなれば膨大な労力が必要になる。その一方、新規に現場に流れている製品に関するさまざまな情報に対しても、並行して同様の取り組みが必要になる。

コストテーブルを作成するためには見積り金額の適正化が必要で、そのためには社内で製品ごとの標準作業時間(ST)を算出しなければならない。社長や営業担当者が鉛筆をなめて作成していたのでは、いつまでも正確な見積書はつくれない。しかし、STを算出するためには製品ごとに加工の実績データがなければできない ― というように堂々巡りになってしまう。情報の整流化を行うだけでも大変な労力が必要で、そのうえものづくりプロセスの整流化をやろうとすればさらに膨大な手間と時間が必要になる。

つづきは本誌2021年7月号でご購読下さい。

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