視点

下期の板金トレンドは“価格競争”と“2極化”

LINEで送る
Pocket

4-6月の実質GDPが年率で1.2%(2次速報値)のマイナスになった。その要因は個人消費の低迷。物価上昇に賃金上昇が追い付いていないという。物価上昇にはいろいろな理由があるが、大きな要因が円安による輸入物価の上昇。特に小麦粉、乳製品などの食料品価格が上昇、生活防衛から消費を手控える傾向が顕著になっている。

反面、円安によって中国、台湾をはじめとした訪日外国人が大幅に増加。1月から7月までに来日した外国人は1,000万人を超え、来日した外国人旅行客が滞在中に使ったお金は1-3月期が前年同期比64.4%増の7,066億円、4-6月期が前年同期比82.5%増の8,887億円、1月から6月までで1兆5,953億円となり、通年では2兆円超えが確実となっている。国内の消費低迷を訪日外国人が補完してくれるカタチとなった。

しかし、訪日外国人の多くがアジアからの訪日客。ここへ来て顕著となった中国経済の減速、それに連動した人民元の切り下げ、株価の急落などによってアジア経済全体へのマイナス影響が今後本格化する。そのため上期のような勢いで訪日外国人が増え、“爆買い”をすることは減ることが予想され、訪日外国人が日本で消費する金額も下振れが避けられない。

さらに、上期までは好調だった半導体製造装置、工作機械業界も7月を契機に受注の伸びが止まり、板金業界に対する発注量が減る傾向も見られるようになった。反面、鉄道車両やバスなどの業界は2020年東京五輪に向けた交通網の整備に対応、新造車両や新型バスの増産が始まっている。五輪関連では、メイン会場の国立競技場の着工が建設費の問題でリセット。計画が大幅に遅れることが分かり、建築業界は盛り上がりに欠けている。

その一方、「災害に強い国」を目指した「国土強靭化」が進められており、東海道新幹線や首都高などの交通インフラの大規模修繕が始まり、関連する仕事が一部板金業界にも発注されるようになった。来年からは阪神高速道路の修繕も始まることから、今後は国土強靭化に対応する建設・土木関連業界からの仕事が期待できる。

また、ここへ来て円安と海外―特に中国の人件費上昇から、海外へ生産移転していた仕事が国内へ回帰する動きも目立つ。地産地消、最適地調達という流れは変わらないものの、中国から日本へ製造回帰する傾向が目立つ。

下期の国内景気は下触れリスクが高まる一方で、五輪関連、国土強靭化、海外からの製造回帰によって内需志向が高まる可能性が高い。反面、発注単価はさらに下がることが予想される。特に日本へ製造回帰する製品は一物一価の考え方が強く、海外で調達されていた際の単価が目安となる。

また、上期に採択されたモノづくりに関連した各種補助金・助成金を活用して導入される新鋭設備が来年4月以降から本格稼働する。その結果、業界全体の供給能力はかなり増大するため、受注競争が激化する可能性もある。

さらに、中国・台湾・韓国などのサプライヤーが、アジア中で内需が安定している日本市場に的を絞って営業するチャンスを狙っている。すでに各地で開催されるパブリックショーに海外の板金サプライヤーが出展し、日本市場で本格的な受注活動を計画している。下期以降、競争相手は国内のみならず、東アジアの有力な板金サプライヤーも想定しておく必要がある。外部環境の変化は業界内の2極化をさらに強めることだけは間違いない。

LINEで送る
Pocket

関連記事

視点記事一覧はこちらから