視点

将来計画を立て直す一年に

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明けましておめでとうございます。

波乱を招く「寅」が支配していた2022年は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、その後のロシアの核使用をちらつかせての恫喝、中国の「ゼロコロナ政策」による世界経済の混乱、原油価格をはじめとした資源価格、小麦などの食糧価格の高騰に端を発した物価高騰からの世界的なインフレの高まり、それにともなう欧米を中心とした金融引き締めと金利上昇により景気の回復ペースは鈍化している。また、弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮、台湾の武力制圧も辞さない中国の軍拡姿勢、東アジア情勢の危機の高まりなど地政学的な課題が顕著になっている。こうした課題は引き続き2023年も継続する気配だ。

経済協力開発機構(OECD)は、2023年の世界経済の成長見通しを2022年9月発表で下方修正し、11月発表で据え置いた。欧米経済はインフレ率が高めに推移しており、金融引き締めと継続的な利上げは景気の下振れ要因となっている。中国経済は「ゼロコロナ政策」の影響や住宅市場の下振れなどから、景気回復ペースが鈍ると見られており、世界経済の落ち込みが予測される。

日本経済については、2022年は経済活動の再開で堅調な伸びが見込まれていたが、OECDは2022年9月発表で物価高による消費の下振れなどを主因に下方修正した。2023年は、9月発表で1.4%に下方修正したが、11月発表では前年を上まわる1.8%に上方修正した。2022年度第2次補正予算による総合経済対策の効果が期待される。

2023年の干支は「卯」。「優しさ」と「静寂」の前触れとも言われ、前年から抱えている課題が解決に向かうとされる。一方、「怠惰なリズムが始まる地味な年」とも言われ、ダイナミックな変化は期待できないかもしれない。個人も組織も過去を振り返り、将来の計画を立て直す一年になると思われる。

板金業界も2022年はコロナ禍から回復し、サプライチェーンの混乱による「モノ不足」で生産調整を強いられたケースもあるが、売上はコロナ禍以前の水準まで回復したとみられる。半導体製造装置・工作機械・建設機械・医療機器・食品機械など好調な業種もあり、小誌が11月に実施した新春景気見通しアンケート調査によると、2023年の国内景気は「横ばい」から「増加」と回答する企業が半数を超えた。

一方、人手不足、従業員の高齢化、人材不足はますます深刻化。さらに、部材調達をめぐる大手企業のDXを織り込んだ見直しも気になる。特に部材調達に関わる設計・品証・資材の各部門の風通しを改善するため、3次元CADデータを活用し、新商品開発を除く汎用製品の部材調達のアウトソーシングを進める傾向が見られている。半導体製造装置や工作機械業界ではすでにその取り組みが始まっている。

2050年のカーボンニュートラルを目指し、脱炭素化への取り組みがいよいよ本格的になっている。大手企業では、企業が長期的に成長するためには環境・社会・ガバナンス(統治)を重視するESG経営への対応が必要との考えが広まっており、サプライヤーも真剣に対応すべき段階になっている。

「良いモノを安く早く」ということだけ考えてきた経営者には発想の転換が必要になっている。具体的には、これまでのQ,C,Dに加え、カーボンニュートラル、SDGsへの対応から、グリーン調達の「G」を加えた「Q,C,D,G」への対応が必要となっている。

卯年は深く静かに将来を考えるとともに、その跳躍力から飛躍・向上の年とも言われる。あらためて将来を考えた計画を立て直す一年にしなければならない。

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