量産から受注生産まで幅広く対応・提供できる強みを生かして成長
2027年度に売上100億円達成を目指す
布目電機 株式会社 代表取締役社長 岡本 武志 氏
岡本武志氏
半導体製造装置・自動車関連設備・各種電気設備向けのトランス(変圧器)、電源盤・分電盤などの制御盤製造を行う布目電機㈱は、量産品から一品一葉の受注生産品にも幅広く対応し、提供できる強みを生かして、業績を伸ばしている。特に1994年に国内で初となる欧州向け規格に適したトランスの認証、1998年に米国向けのUL規格、カナダ向けのcUL規格、1999年にUL規格での制御パネル工場ライセンスをはじめとした海外向け規格の取得により、海外規格に適したトランスを必要としている企業からの需要が伸びた。
とりわけ増えたのが半導体製造装置メーカーからの需要だ。2019年からの半導体スーパーシリコン・サイクル需要の高まりに対応して、製造装置に欠かせない同社製品は大きく伸び、売上全体の60%を占めるまでになった。
売上は2018年度の42.8億円から、2019年度51.4億円、2020年度61.1億円、2021年度68.5億円、2022年度85.4億円と二桁成長を続け、2023年度は69.6億円と前年度から減少したものの高い水準をキープ。半導体市場が下振れした2024年度も70億円超えが見込まれる。売上は2022年度と比べ減少したがシリコン・サイクルにともなう一時的な落ち込みとの判断で、2027年度には100億円達成を目標に掲げる。
そんな躍進が目覚ましい同社の3代目社長として、2024年11月に就任したのが岡本武志氏だ。外資系の企業で海外の規格やその認証取得業務を担当し、2019年に同社に入社。これまでの経験を活かして同社の事業発展に貢献し、社長に抜擢された。「電気を安全に扱うための技術を共創します」という経営理念を掲げる同社の「100年企業に向けたこれからの50年」の土台づくりへの手腕が期待されている。
そこで岡本社長と布施貴寛製造部門長に話を聞いた。
「お客さまとともに、高付加価値な製品をつくる」
― 御社は一品一葉の受注生産品を提供できる強みを活かし、業績を伸ばしてきましたが、この2期は売上が3年前の85.4億円から減少しました。中期経営計画で掲げる44期(2027年度)に100億円達成の目標についてはいかがですか。
岡本武志社長(以下、姓のみ) お客さまが物不足の時に多めに注文した製品の在庫調整が長引いたことと、半導体や自動車向けなどの設備投資が踊り場なので、業績としては若干の足踏み感がありますが、中期経営計画の最終年度に売上100億円達成を目指して邁進しています。今は市況や政治の動向など、私どもではどうにもできないことを憂うよりも、今まで培ってきた技術やノウハウ、海外の安全規格の認証などを活かして、お客さまとともに、高い付加価値の付いた製品をつくり上げていくことが、当社の進むべき道だと考えています。
不確実性が増すビジネス環境の激しい変化に対応して、トランスメーカーから電源ソリューションメーカーへのステップアップを目指して、これからも製品の開発に取り組んでいきたいと考えています。
― 先端技術分野での米中摩擦で、中国向けが難しくなる事態の想定も必要ではありませんか。また、中国メーカーからオファーがあった場合の対応についてはいかがですか。
岡本 日本の装置メーカーの中国向けの輸出比率が高いので注視しています。ただ、当社のトランスが先端技術製品かといえば、そうではありません。とはいえ、直接中国メーカーからオファーがあった場合には慎重に判断したいと思います。
左:ファイバーレーザ複合マシンEML-2515AJ-PDC+AS-3015NTK+ULS-3015NTK/右:ベンディングマシンHRB-1303(手前)、EG-6013、HG-1703、自動金型交換装置付きベンディングマシンHG-1003ATCが並ぶ曲げ工程
海外規格に適したトランスを、オーダーメイドでつくれる技術力
― トランスは一般にはあまり馴染みがないと思いますが、どんな機能や役割があるのですか。
岡本 トランスは、日本語で変圧器というとおり、(交流の)電圧を変えるために使用しますが、一次電圧と二次電圧を絶縁する、短絡事故時の被害を軽くするなど、電気的安全性向上の役割も担っています。
当社は差別化が難しい中で、各種トランスや制御盤製造において、1990年代から業界をリードする企業のひとつとして、最前線を走ってきたと自負しています。特に、1994年に国内で初となる欧州向け規格に適したトランスの認証を得て、海外への事業展開の道を切り拓き、1998年に米国向けのUL規格とカナダ向けのcUL規格、1999年にUL規格での制御パネル工場ライセンスを取得したことで、その他海外向け規格対応にも幅を広げ、世界中で使われるようになっていきました。
当時は、国内の企業も海外へ製造拠点を移していく時代で、海外生産をスムーズに進めるために、海外規格に適したトランスをオーダーメイドでつくることができる当社の技術力が必要とされました。とりわけ半導体製造装置メーカーからは、トランスをメインとした、電源ユニットや制御盤などへの需要がどんどん伸びていきました。また、工作機械などの産業機械業界でも機械や装置の輸出入で当社のトランスの需要が増加しました。
左:銅線を巻き付ける作業は熟練作業者が行う/右:トランスを搭載して配線組立が終了した電源盤
会社情報
- 会社名
- 布目電機 株式会社
- 代表取締役
- 岡本 武志
- 本社
- 愛知県名古屋市中川区大当郎2-1107
- 板金第2工場
- 愛知県愛西市千引町郷前47
- 電話
- 052-301-6851(本社)
- 設立
- 1983年
- 従業員数
- 268名(2025年4月現在)
- 主要製品
- 乾式変圧器、トランス(変圧器)ボックス、トランスユニット、電源盤(制御盤・分電盤)
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