多摩地域の同業連携を提唱 ― エンジニアリングチェーン構築へ
同業者間の受発注プラットフォームをプレビュー公開
株式会社 マキノ
ファイバーレーザ複合マシンEML-2512AJ-PDC(手前)とパンチングマシンHMX-3510NTが自動倉庫HYPER MARS(奥)と連動し、24時間×365日の無人稼働に対応する
多摩地域のエンジニアリングチェーン構築へ
牧野拳一郎社長
東京・町田の㈱マキノが、多摩地域の産業振興へ向けた同業連携に取り組んでいる。
日本有数の産業集積地である多摩地域でも、製造業の事業所数は減少の一途をたどり、製造品出荷額も縮小傾向にある。こうした状況を踏まえ、牧野拳一郎社長は以前から、M&Aや資本参加によるグループ化、加工企業同士が柔軟に仕事を融通し合える環境の整備、地域内のエンジニアリングチェーン構築などを提唱してきた。
業務提携などを通じた事業継続支援は、継続的に行っている。2021年には車で30分ほどの距離にある㈱バーコムシートメタル(神奈川県相模原市)をM&Aで取得。後継者不在のバーコムシートメタルが事業継続の道を模索する中、マキノが手を挙げ、M&Aが成立した。
2025年1月にはブランク加工に特化した会員制の見積り・加工サイト「MetaLink」のプレビュー版を公開した。これは地域の板金加工企業同士のスムーズな受発注を実現するWebプラットフォームとして企画され、2017年頃から断続的に開発を進めてきた。現在はテスト環境で、マキノとバーコムシートメタルの間で見積りから受発注、納品、検収、支払までのフローが円滑に進められるか検証中。多摩地域の一部の同業者にはすでにアナウンスし、今後は本格的に参加を呼びかけていくことになる。
左:会員制の見積り・加工サイト「MetaLink」のプレビュー版を公開した/右:2024年に導入したファイバーレーザマシンREGIUS-3015AJe(6kW、フォーク式パレットチェンジャー仕様)
最先端の自動化技術・デジタル技術をフル活用 ― 24時間稼働に対応する精密板金工場
同社は1969年に東京都府中市で創業して以来、多摩地域に集中する大手電機メーカーを主な得意先とし、通信機器や無線応用機器などの弱電機器、半導体・FPD製造装置関連の精密試作板金を強みに発展してきた。
「試作板金でどれだけ自動化を進められるか」をテーマに、常に最先端の自動化技術・デジタル技術を採り入れ、スマートファクトリー化を推進。企業理念である「すべてはお客様のために」を実現するため、「即日板金」(超短納期)に対応する生産体制を築き上げてきた。
2006年12月には、東京都町田市に最先端のデジタル板金工場を開設した。材料自動倉庫HYPER MARS(12段×18列)を中核に据え、多種多様な材料を常備することで「即日板金」に対応。2台のブランク加工マシンをHYPER MARSと接続することで、24時間×365日の無人稼働に対応できる体制を整えた
2018年には工場から徒歩3分の場所に自動搬送機能を備えた物流倉庫「マキノパーツセンター」(MPC)を開設。在庫管理の集約化と出荷作業の平準化により、工場全体の生産性が劇的に向上した。
2024年にはファイバーレーザマシンREGIUS-3015AJe(6kW)、微細ファイバーレーザマシンPRELAS-1212AJ、自動金型交換装置付きベンディングマシンEGB-6020ATCe×2台などを一気に導入した。
主要得意先は約30社。主力製品のひとつである半導体製造装置関連部品は、前工程(半導体チップ製造プロセス)・後工程(パッケージ製造プロセス)で欠かせないスパッタリング装置や露光装置に用いられる。
月間受注件数は8,000~1万件。加工材料は、鉄系10%・ステンレス50%・アルミ40%で、アルミの比率が徐々に高まっている。対応板厚は、シムなどに用いる0.1㎜以下の箔から12㎜程度の中厚板までと幅広く、ボリュームゾーンは1.0~3.0㎜。近年はリピート品が増えており、リピート率は70%程度まで上昇した。それでも中心ロットサイズは10個以下で、典型的な多品種少量生産となっている
左:EGB-ATCeのタブレットHMIに表示された支援情報を確認しながら曲げ工程を行う/右:ファイバーレーザ溶接システムFLW-4000。ステンレス・アルミなどの高品位な溶接に対応する
会社情報
- 会社名
- 株式会社 マキノ
- 代表取締役
- 牧野 拳一郎
- 所在地
- 東京都町田市小山ヶ丘3-10
- 電話
- 042-798-5611
- 設立
- 1969年
- 従業員数
- 61名
- 主要製品
- 半導体製造装置関連部品・通信機器間連部品・その他の精密板金部品
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