最大板厚への挑戦 ― 1台で2台分の働き
2013年から30%以上の資源生産性向上を目指す
株式会社 樫本商店
①ENSIS-4020AJで加工したSS材32㎜/②9kWファイバーレーザ発振器を搭載したENSIS-4020AJ+AS-4020G
支援制度を活用してファイバーレーザ導入
濱屋慎吉社長
㈱樫本商店は、1949年に先々代の樫本勇氏が福岡県八幡市山王町にて個人創業、製鋼原料の取り扱いを始めた。1968年に薄板用レベラーを新設して鋼板の委託加工を始めた。1974年に㈱樫本商店を設立し、樫本通夫氏が代表取締役となった。1981年には本社所在地を陣山に移転、翌年には特殊鋼の素材販売および切断加工販売を開始した。1993年、先代社長の逝去にともない、娘婿であった濱屋慎吉氏が代表取締役に就任した。
濱屋社長はバブル崩壊後の社会経済の変化に対応すべく、1994年に本社を若松区安瀬の響工業団地に集約するとともに、新規に400Aプラズマ切断機を導入。2006~2007年には自走式のCO2レーザマシン2台を相次いで導入し、設備力強化に努めてきた。
そうした中で、産業界では2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災などを経て、地球温暖化や地球資源の枯渇などの環境問題、資源価格の高騰や変動、レアメタルなどの諸国間での争奪戦がクローズアップされるようになり、単位資源あたりの生産性を重視する考え方が重んじられ、投入資源あたりの生産性向上をはかることが、経営上の重要課題として捉えられるようになってきた。
政府は2013年3月、資源生産性の大幅な改善が見込まれる事業計画を実現するための先端生産設備等の導入に際して、事業者への補助を行う「円高・エネルギー制約対策のための先端設備等投資促進事業」を公募。濱屋社長はこの公募に際し、従来のCO2レーザマシンに比べ電気使用量の大幅な削減が期待される、アマダのファイバーレーザマシンFOL-3015AJ(2kW)+LST-3015FOLと他社の自走式ファイバーレーザマシンの導入を計画、申請し採択された。濱屋社長はこれを契機に「資源生産性の改善」という課題に対応する方法は、エコマシンの導入以外にないと考えるようになった。そして翌年、FOL-3015AJ(4kW)+LST-3015FOLを導入。2017年にはENSIS-3015AJ(2kW)を導入した。そして2019年3月には、FOL-3015AJ(4kW)と自走式CO2レーザマシン(4kW)の代替えとして、ENSIS-4020AJ(9kW)+AS-4020Gを導入した。
現在は、ENSIS-3015AJ(2kW)、ENSIS-4020AJ(9kW)、FOL-3015AJ(2kW)、自走式ファイバーレーザ(2kW)の4台で、省資源化と生産性の大幅改善に取り組んでいる。
JASS6改定により建築分野のレーザ加工が増加
2013年にアマダと他の1社から1台ずつ、計2台のファイバーレーザを導入したが、「板厚9㎜まではFOL-AJの切断スピードの方が速かったため、9㎜以下はアマダマシン、それ以上の板厚については自走式レーザマシンというように使い分けていました」(濱屋社長)。
そうしたところに2kWで19㎜まで切断できるENSIS-3015AJが登場したため、2017年に導入した。
その後、2018年にJASS6が改定され、建築で使われる高力ボルトを取り付けるスプライスプレートなどの孔あけに関して、従来は機械加工での加工が指定されていたが、切断・切削と孔あけの各加工にレーザが使えるようになったので、導入機による建築関係の切断比率はいっそう高まった。
左:加工された製品はすべてIJPで製番がマーキングされている/右:事務所の大型画面(右)には生産管理システムAPC21の生産の進捗画面が掲示され、その横に設置されたVC-BOX(左)では、IoTサポートに対応するマシンの稼働状況を確認することができる
会社情報
- 会社名
- 株式会社 樫本商店
- 代表取締役
- 濱屋 慎吉
- 住所
- 福岡県北九州市若松区安瀬1-23
- 電話
- 093-751-6211
- 設立
- 1974年(1949年創業)
- 従業員数
- 38名
- 事業内容
- レーザ切断、ガス溶断、シャー切断、プラズマ切断、鋼板曲げ加工、一般鋼材販売、高張力鋼板販売
つづきは本誌2019年10月号でご購読下さい。