Interview

レーザ加工のコンビニ、BCP対策も考慮した新工場建設を計画

レーザジョブショップとしての事業領域を拡大

株式会社 インスメタル 代表取締役社長 福井 英人 氏

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画像:レーザ加工のコンビニ、BCP対策も考慮した新工場建設を計画福井英人氏

㈱インスメタルは国内トップクラスのレーザジョブショップ。社名は英語の「Inspire」(息吹)と「Metal」(金属)の合成語。シンボルマークの赤は炉から出たばかりの新しいメタルを、真中の細い線はレーザ光をイメージしており、この光のようにフレッシュな企業でありたい、という想いが込められている。

今や産業分野に不可欠なレーザ加工であるが、そのニーズも時代とともに高度化・多様化している。同社はレーザ加工の長い経験とCO2レーザ、YAGレーザ、ファイバーレーザなど幅広いレーザ加工技術に加えてレーザ溶接、ウォータージェット加工技術にも精通、顧客のさまざまな要望に応えられる生産能力を備えている。

千葉県浦安市、八街市、宮城県宮城郡利府町に5カ所の製造拠点を持ち、13台のレーザマシンが稼働するなど、積極的に設備力を拡充してきた。さらにCO2レーザマシンでステンレスの切断面の美しさを追求した「ブライトカット技術」を開発。切断面品質や加工速度などを向上する多様な応用技術も開発し、「レーザ加工のコンビニ」を目指してきた。

今年4月には大卒、高卒の新入社員5名に中途採用者を加えた8名が新たに加わり、従業員数135名の中堅企業となった。売上高も2019年度に過去最高の33億円を達成、2022年度はこれを上回る34億円を目標としている。

2023年には千葉市の「千葉土気(ちばとけ)緑の森工業団地」に取得した4,500坪の土地に1,500坪の新工場を計画。八街市内の製缶、レーザ、溶接の3工場を統合する。BCPも考慮し、万が一の場合には本社工場の機能を代行できるようになる。

ウクライナ侵攻を契機に3月の鉱工業生産指数はマイナスとなり、原材料価格や電気料金の大幅な値上げ、レーザ加工の必需品であるヘリウムガスの入手難など、企業環境の不確実性が増している。そこで、福井英人社長に事業環境の激変にどのように対応していくのか、うかがった。

リスクマネジメントを考え、さまざまな変化に対応

― 新型コロナによるパンデミック、ウクライナ侵攻、日米の金利差による急激な円安と企業経営を取り巻く環境が激変しています。先行きをどのように見ておられますか。

福井英人社長(以下、姓のみ) 不確実性が高まっており、先が見通せません。だからと言って政治が悪い、と責任転嫁しても始まらないので変化対応力を身につけ、自助努力で対応するしかありません。

当社は11年前の東日本大震災で液状化により本社工場が大きな被害を受け、操業が一時的に停止したことを契機にリスクマネジメントを考えるようになりました。事前の対応策を考え、社員にも備えを十二分に行うように指示してきました。2020年4月からの新型コロナによるパンデミックに対しても感染対策を徹底。「天災と戦争には打つ手がないが事前の準備はできるので万が一への予防対策など、できることはしっかりやっておこう」と話をしてきました。

ロシアによる軍事侵攻は全くの想定外で、それが化石燃料の価格高騰や、さまざまな原材料・副資材などの大幅な値上がり、電気料金などのコストアップにつながってきました。鋼材高騰はリーマンショック時にも経験しましたが市況が落ち着くと価格は元に戻りました。しかし、今回は様相がちがい、鋼材や鉄筋などが短期間で大幅に値上がりしました。価格は昨年から値上がりしてきましたが、まだ値上げが止まらない。需要なき値上げといった感があります。

今後も高炉メーカー、電炉メーカーともに製鋼コストがさらに上がるので大幅に値下がる気配はありません。また、ウクライナ侵攻が終結すると復興のため大量の鋼材・資材などが欧州、米国、中国などからウクライナに向かい、国内の素材不足が新たな問題になると思います。現在は値段だけが先行していますが、今後は鋼材不足で満足な受注ができない可能性も出てくる心配があります。

また、電気も基本契約料金が今後2.5倍くらい上がります。同業者の中には電力自由化で新電力に切り替えていたために「電力難民」になってしまったところもあります。電力卸しを始めた新電力が軒並み電気料金を大幅に値上げ、事業から撤退するところも出てきました。電力供給を受けられなくなった企業が元の電力会社に再契約をお願いに行ったら、電力需給がひっ迫していることを理由に良い返事をもらえなかったという話も聞きます。これらをも包含したリスクマネジメントを考えないといけません。経営者の責任、判断力が問われています。

  • 画像:レーザ加工のコンビニ、BCP対策も考慮した新工場建設を計画浦安工場に設備された4kWファイバーレーザマシンと9kWファイバーレーザマシンが中板の高速加工に対応する
  • 画像:レーザ加工のコンビニ、BCP対策も考慮した新工場建設を計画FLC-AJ(9kW・手前)、FOL-AJ(4kW・奥)と2台のファイバーレーザマシンが並んでいる

2022年度は売上34億円を目指す

― コロナ禍の影響はありますか。

福井 これまでの設備投資などの効果で2019年度の売上は過去最高の33億円を達成しましたが、2020年度はそれを下回りました。

現在、全国5カ所の製造拠点で活動、月間2万2,000件以上のオーダーに対応しております。1件で1点の注文もありますが、ロットが10個を超える注文もあるので個数としては10万個以上となっています。ジョブショップですから切板で納品することが一番利益率が高いのですが、お客さまからは曲げ、溶接、機械加工、塗装などの川下工程まで含めた完成品で、といった希望が増えています。要望に沿えるよう企業ネットワークを組んでいますが、機械加工や塗装は協力会社にお願いしているので、川下へ行くほど利益率は下がります。それでもお客さまのニーズに対応しなければいけません。条鋼加工の仕事も増えています。

― ニーズが増加している条鋼加工への対応についてもう少し詳しくお教えください。

福井 CO2レーザとDDL(ダイレクトダイオードレーザ)の2台のパイプ加工レーザマシンは両方ともフル稼働です。DDLパイプレーザマシンは2021年3月に導入したばかりですが、これまで加工できなかったアルミや銅・真鍮などの非鉄形鋼(丸・角パイプ、アングル、チャンネル、H鋼など)のレーザ切断およびタップ加工が1台で完了します。従来の機械加工をレーザ加工に置き換えることによって、納期の短縮、コストダウンが実現できます。将来的には5台程度のパイプレーザマシンを導入したいと思っています。

レーザジョブショップとして厚板加工から中板の高速加工への対応が課題です。厚板に関しては搭載型の大板加工機を「八街工場」に導入、「浦安本社工場」では中板の高速加工を主体に考えています。われわれのようなビジネスでは、人件費や電気料金や消耗品費が上がっていくのであれば、加工賃も上げていただかないと利益率が下がってしまいます。営業には受注単価 ― 加工賃の値上げにも言及するように指導していますが、競争が激しく、社内での発奮を期待するしかありません。

画像:レーザ加工のコンビニ、BCP対策も考慮した新工場建設を計画左:ベンディングマシンHDS-2203NTなどが並ぶ曲げ工程/右:加工後に梱包され、出荷を待つ製品。月間2万2,000件のオーダーに対応している

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会社情報

会社名
株式会社 インスメタル
代表取締役社長
福井 英人
本社・浦安工場
千葉県浦安市鉄鋼通り1-7-1
電話
047-355-6511
設立
1967年(1962年創業)
従業員数
135名
主要事業
レーザ切断加工、折曲加工、ウォータージェット加工、溶接加工一式
URL
http://www.insmetal.co.jp/

つづきは本誌2022年6月号でご購読下さい。

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