ファイバーレーザ溶接システム活用事例
高付加価値の宅配ボックス部品に活用 ― 仮付け・仕上げレスで生産量3倍超
東京・大田区の都市型工場がファイバーレーザ溶接システムを導入
株式会社 深川通信工業
工場スペースに制約がある都市型工場に適したコンパクトタイプのファイバーレーザ溶接システムFLW-3000Le。2024年3月に導入し、同年7月頃から本格稼働を開始した
ブランク~溶接の自動化パッケージを構築
深川純一社長
東京・大田区で宅配ボックスなどの精密板金加工を手がける㈱深川通信工業は、ファイバーレーザ溶接システムFLW-3000Leを導入した。
3階建ての工場建屋の2階にあった現場事務所を撤去し、事務所・会議室・食堂などがある3階へと移設。2階の空いたスペースにFLW-Leの溶接ブースを設置した。FLW-Leは小型ロボットを採用し、従来のFLWシリーズと比べて設置スペースが約35%減少したコンパクトタイプ。東京23区・城南エリアに立地する都市型工場で、工場スペースに制約がある同社のニーズに合致した。
これにより、ブランク工程のファイバーレーザ複合マシンACIES-2512T-AJ(3段×2棚・テイクアウトローダー仕様)、曲げ工程の自動金型交換装置付きベンディングロボットシステムASTROⅡ-100NTと合わせ、板金全工程(ブランク・曲げ・溶接)の自動化パッケージを構築した。
FLW-Leは、以前から増産を求められていた宅配ボックスの「トビラ」の溶接に活用している。同社の溶接技術には定評があるが、これまでは工数・スペースの制約により需要増に対応できなかった。顧客からの度重なる増産要請と、同社の工場に設置可能なコンパクトタイプのFLW-Leがラインナップに加わったことで、導入に踏み切った。約1年間の準備期間を経て2024年3月に導入し、同年7月頃から本格稼働を開始した。
FLW-Leの導入によって、「トビラ」の溶接時間はTIG溶接と比べて約1/2に短縮した。さらに、「仮付けレス」と「仕上げレス」で加工を完了できるようになり、「トビラ」の生産能力(1日の生産数量)は導入前と比べて3~3.5倍に向上した。供給能力を増強したうえでコストダウンを実現し、顧客満足度も高まった。
深川純一社長は「FLW-Leを導入したことでブランク工程から溶接工程までの自動化・ロボット化が実現し、ひとつのパッケージをつくり上げることができました。長年の取り組みがようやく実を結んだと感じています」と語る。
①製品を治具にセットし、ハンマーで叩いて微調整するオペレータ。「仮付けレス」でティーチング(補正)はロット初品のみ/②これからFLW-Leで加工する「トビラ」のコーナー部/③溶接後のコーナー部。「仕上げレス」で出荷する
24時間・365日稼働する「デジタル板金工場」へ
同社は「お客さまファースト」を掲げ、都市型工場でありながら自動化・ロボット化を徹底的に追求してきた。
2008年に2代目経営者に就任した深川社長は、自社のコンセプトを明確化し、「選択と集中」によって強みを発揮できる生産体制を構築してきた。騒音・振動を気にしなくてすむ京浜島の工業団地という立地を生かし、少数の多能工が複数の自動化設備を運用して24時間・365日稼働する「デジタル板金工場」を目指した。
ISO9001・ISO14001を取得して大手企業との直接取引で求められる管理体制を整え、強みを発揮できる薄板・リピート・量産の案件をターゲットに事業を拡大していった。
現在の顧客数は20~25社。そのうち上位5社で売上全体の約90%を占める。リピート・量産の仕事を求めて地方の大手企業を開拓し、主力5社の納品先は福島・埼玉・神奈川・長野・静岡と、直線距離で250㎞超の範囲に分散している。
製品分野で見ると、比重が大きい順に宅配ボックス、サーボアンプ、情報通信機器、金融機器、医療機器と並ぶ。全体的に好調だが、中でも活況なのが宅配ボックスだ。ライフスタイルの多様化と電子商取引(EC)の拡大、「物流の2024年問題」が重なり、宅配業者の再配達を減らす宅配ボックスの市場は2030年までゆるやかに拡大すると見られる。
前期(2025年4月期)は過去最高の売上・利益を達成した。FLW-Leの導入による宅配ボックス部品の増産に加え、そのほかの主力顧客からの受注量も増加。生産高は前期比20%増となった。直近7年間で従業員数は15名から12名に減少したが、自動化・多能工化の効果で人員の不足はなく、パーヘッドは月200万円を超えている。
ファイバーレーザ複合マシンACIES-2512T-AJ。受注増により24時間・365日稼働に迫っている
ベンディングロボットシステムASTROⅡ-100NT。安定加工により、FLW-Leの「仮付けレス」運用に貢献
会社情報
- 会社名
- 株式会社 深川通信工業
- 代表取締役
- 深川 純一
- 所在地
- 東京都大田区京浜島2-7-13
- 電話
- 03-3790-1929
- 設立
- 1978年(1968年創業)
- 従業員数
- 12名
- 主要事業
- 宅配ボックス、サーボアンプ、情報通信機器、金融機器、医療機器などの精密板金加工
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