鋼材業界のファイバーレーザ+棚システム最新活用事例
「倉庫から工場へ」をスローガンに能力増強 ― 切板の一貫生産体制を構築
「製品販売事業」と「リサイクル事業」を展開する「循環型企業」
花村産業 株式会社
中核拠点で切板の一貫生産体制を構築 ― 中期経営計画に基づき順次増強
花村産業㈱は、中核拠点の「市場事業所」(長野県松本市)に大板材対応ファイバーレーザマシンLC-VALSTER-6225AJ(10kW)をパレットチェンジャー仕様(8段)で導入し、2023年12月に稼働を開始した。導入後15年以上が経過した1台目の自走式CO2レーザマシン(4kW)との入れ替えで、加工スピードは従来機比6~7倍に改善した。
LC-VALSTER-AJは導入効果を最大限発揮するため、フルオプションで導入した。8´×20´の大板材を8枚収納できるパレットチェンジャー仕様で、長時間スケジュール運転に対応。加工を止めずに印字を行えるIJP(インクジェットプリンター)とセカンドステーション、粉塵の飛散を防ぐ固形化装置などを完備し、稼働監視カメラ(4カ所)も設置した。
同社は「倉庫から工場へ」をスローガンに掲げ、第8次中期経営計画(2018~2020年度)、第9次中期経営計画(2021~2023年度)の一環で、加工設備・生産体制の充実をはかってきた。
LC-VALSTER-AJは、2024年5月期を最終年度とする第9次中期経営計画を締めくくる大型投資。これにより同事業所の鋼板切断工程はLC-VALSTER-AJ、2台目の自走式CO2レーザ加工機(4kW)、ガス溶断機の3台体制になった。導入に先立ち、工場内の大幅なレイアウト変更を行って作業動線を最適化。第8次計画で導入したオートボーラー、第9次計画で導入したショットブラスト、開先加工機と合わせ、切板加工の一貫生産体制が整った。
平賀豊常務取締役は「一連の投資により、月300トン前後だった切板加工量を400トンまで引き上げたい。主要顧客である鉄骨ファブのお客さまは人手不足が深刻で、切板だけでなく、きり穴、ショット、開先まで一気通貫で対応してほしいという要望が強くなっている。一貫生産体制の構築によりお客さまの要望に応え、受注拡大と付加価値創出につなげたい」と語っている。
「製品販売事業」と「リサイクル事業」を展開 ― 時代の要請にマッチした「循環型企業」
同社は1909年(明治42年)に創業して以来、「金属の総合商社」として115年の歴史を積み重ねてきた。創業当初から金属製品の流通販売事業と回収・リサイクル事業を手がけ、同社の最大の特徴である「循環型」のビジネスモデルを進化・発展させてきた。
現在も、金属材料や加工品の供給・提案を行う「製品販売事業」と、役目を終えた金属を回収し、再資源化へ向けて適正なルートで流通させる「リサイクル事業」が同社の両輪。両事業の比率は「製品販売事業」が35%、「リサイクル事業」が65%となっている。
「製品販売事業」では、長年築き上げてきた企業ネットワークを駆使し、社会インフラなどに使用される鋼材から、OA機器に使用される精密部品まで幅広く手がける。かつては金属材料の仕入・販売のみだったが、顧客の要望に応えるかたちで切板や形鋼、精密部品の加工に対応するようになり、事業領域を広げていった。
市場事業所の総取扱量は、形鋼や直送分なども含めて月間約2,000トン。そのうち社内加工品は約15%となっている。
切板の顧客は鉄骨ファブが70%を占め、ガセットプレート、胴縁ピース、ブレースシートといった建築用部材が多い。切板の母材となる大板材は、SS400で板厚4.5~55㎜、規格材ではSN400B・SN490B・SN490C・SM400A・SM490A・SM490Bの板厚9~40㎜を常備する。
一方、「リサイクル事業」では、加工企業で排出される金属を回収し、選別・解体などの加工を施して、再生メーカーへと販売する。また、同社の「アルミニウム工場」(長野県松本市)では、みずからが再生メーカーとしてアルミニウム原料を溶解し、アルミニウム二次合金地金や再生塊を鋳造して、ダイキャスト加工企業などへ販売している。
同社にとって金属加工業界は、「製品販売事業」の“顧客”であると同時に、「リサイクル事業」の“仕入先”でもある。こうした「循環型」のビジネスモデルを全国規模で展開している例は珍しく、両事業が相互に連携を取りながら拡販につなげるケースも多い。サーキュラーエコノミー(循環型経済)やSDGs(持続可能な開発目標)といった時代の要請にもマッチした「循環型企業」として、さらなる発展を目指している。
会社情報
- 会社名
- 花村産業 株式会社
- 代表取締役会長
- 花村 泰年
- 代表取締役社長
- 山本 整
- 所在地
- 長野県松本市市場5-26(本社・市場事業所)
- 電話
- 0263-27-1850
- 設立
- 1947年(1909年創業)
- 従業員数
- 210名
- 主要事業
- 各種金属製品、加工品の販売/金属リサイクル/アルミニウム二次合金地金の製造販売/金属素材の精密切削加工/FRP製橋脚検査路の加工/防災用品販売
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