特集

第33回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その2)

「技術の向上には他流試合が有効」

ジンバル機構を採用した「羅針盤」が「組立品の部」でグランプリを受賞

株式会社 田名部製作所

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画像:「技術の向上には他流試合が有効」左:「組立品の部」のグランプリを受賞した「羅針盤」(SUS304・C2801、板厚1.0㎜・1.5㎜・2.0㎜、W245×D245×H130㎜)/右:半球ケースは舟形形状の24枚ピースとφ50㎜の円盤が母材となっている。舟形形状の母材をあえてピッチの粗いFR曲げ20回で加工後、溶接・研磨を行っている。外側はうっすらと段差が識別できる程度に磨いているが、内側はあえて後加工は行わず、溶接品質が確認できる状態にしている

「モノづくりはヒトづくり」を信念に

画像:「技術の向上には他流試合が有効」左から田名部秀世会長、工場板金技能士の山田隆弘さん、田名部淳社長

㈱田名部製作所は1955年、郷土の海苔養殖や農業関連の道具・機械部品を製造する会社として創業した。事業は順調に推移し、やがて乾燥機や自動車などの部品生産にも進出。現在は空調機器や農機具などの部品生産を行っており、特に売上全体の40%を占める農機具関連の仕事が忙しい。

田名部淳社長は2001年に大手電機メーカーからUターン入社。「モノづくりはヒトづくり」の信念のもと、技術の研鑽や、ミーティングや座学による社員の意識改革とともに、仕事の目的や情報を共有できる仕組みを整えていった。

2015年には敷地面積約6,000㎡の新本社工場を開設した。新本社工場は1階建てで床面積は約2,000㎡。旧工場の3倍となり、大型トラックの出入りがしやすくなった。また、ファイバーレーザ複合マシンや平板・パイプ・形鋼兼用ファイバーレーザマシン、300トンサーボプレス、7軸制御MAG溶接ロボット、YAGレーザ溶接ロボットなど、最新の加工設備を導入。板金加工からプレス加工までを一貫生産で対応している。

輝かしい実績 ― 大臣賞を計5回受賞

田名部社長は「技術の向上には他流試合が有効」と考え、職業訓練法人アマダスクール主催の「優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)にチャレンジ。これまで「厚生労働大臣賞」3回、「経済産業大臣賞」2回をはじめ、数々の賞を受賞してきた。

第16回(2003年度)の板金フェアで「ベルトカバー」が「日刊工業新聞社賞」を受賞。それ以降も、第18回(2005年度)で「ロータリーカバー」が「中央能力開発協会会長賞」、第20回(2007年度)で「カバー」が「厚生労働大臣賞」、第23回(2010年度)で「シューター」が2度目の「厚生労働大臣賞」、第24回(2011年度)で「攪拌機」が2年連続・3度目の「厚生労働大臣賞」を受賞した。

さらに、第25回(2012年度)で「スクリューフィーダー」が「経済産業大臣賞」を受賞すると、第26回(2013年度)で「フィルター」が2年連続・2度目の「経済産業大臣賞」、第27回(2014年度)では「水車」が「板金技能名人賞」を受賞した。

しかし、2015年度以降は、新工場の建設・移転と大きな会社行事が重なり、機会を逸していた。

  • 画像:「技術の向上には他流試合が有効」「羅針盤」の半球ケースは、舟形形状のピース(写真右)24枚で構成されている
  • 画像:「技術の向上には他流試合が有効」「羅針盤」の図面データ

入社8年目で作品製作に挑戦

第33回(2020年度)の応募が始まった2020年4月、田名部社長が製作担当者に指名したのは、曲げ加工を担当する入社8年目の山田隆弘さんだった。

山田さんは九州の大学で機械工学を学び、3年生になった2011年に就職活動を始めた。しかし、その年の3月に発生した東日本大震災の影響で景気は低迷、企業の採用活動もきびしさが増していた。

山田さんは「金属加工の仕事を希望していました。大学の就職課で田名部製作所の求人票を見つけ、会社訪問をしました。金属加工といっても、私が大学で学んできたのは機械加工で、板金加工は初めて見る加工技術でした。しかし、1枚の板を切断し、曲げて溶接すると、見事なカタチになっていく。その折り紙のような工程を見て、心引かれました」。

「会社について調べてみると、板金フェアで大きな賞を何度も受賞しているとわかり、こうした製品を自分もつくってみたいと入社を決めました」。

「入社後2年間は、納品・運搬を担当し、空き時間に曲げ加工にトライしました。3年が経過して、本格的に曲げ加工を担当しました。複雑な形状の製品は、曲げ順序の工夫が必要だったり、金型のステージを何カ所か取り換えないといけなかったりして時間がかかりますが、そのぶん曲げきった時の達成感が大きく、楽しんで仕事をしていました」。

「毎年、春になると先輩の誰かが板金フェアの応募作品づくりの担当になり、構想からデザイン、設計、実加工と、ご苦労されているのを見ていました。大変そうだと思う一方、それでもいつかは自分も作品づくりにチャレンジしたいと考えていました」。

「一昨年(2019年)、次回は自分に順番がまわってくるのではないかと予想していました。昨春、社長から『次はあなたです』と指名されたときは、『ついに、きたか』という感じでした。その前からSolidWorksを使って3次元CADの勉強をしていたので、学習も兼ねて取り組もうと考えました」と指名を受けたときの心境を語っている。

  • 画像:「技術の向上には他流試合が有効」平板・パイプ・形鋼兼用ファイバーレーザマシンENSIS-3015RI+ASFH-3015G+STRI-3015
  • 画像:「技術の向上には他流試合が有効」曲げ作業をする山田さん

会社情報

会社名
株式会社 田名部製作所
代表取締役会長
田名部 秀世
代表取締役社長
田名部 淳
所在地
福岡県筑後市大字野町327-1
電話
0942-51-7277
設立
1975年
従業員数
20名
主要製品
空調機器部品、キャビネット、農機具部品、乾燥機部品、海苔養殖機械部品、プラント部品、その他板金部品
URL
http://www.tanabe-mt.co.jp/

つづきは本誌2021年6月号でご購読下さい。

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