Interview

人との縁を大切に、一つひとつの仕事を大切に

「日本で一番信頼される板金加工企業を目指す」

株式会社 竹中製作所 代表取締役社長 山口 美佐子 氏

LINEで送る
Pocket

画像:人との縁を大切に、一つひとつの仕事を大切に山口美佐子氏

㈱竹中製作所は1964年に竹中敏氏と夫人によって事業を開始した。会社の発展とともに社員が増え、パンチングマシンPEGA-244の導入を契機として大きく飛躍、2次サプライヤーとして同業者から仕事を集めることを目指してきた。売上構成比は得意先1社あたり20%を超えないようにし、15社ほどの同業者を得意先として事業を拡大していった。

創業者の長女として誕生した山口美佐子社長は19歳で同社に入社し、経理事務としてパソコンを駆使し、経理業務を合理化した。その様子を見ていた竹中氏は、これからの時代はコンピュータを活用したものづくりに変わっていくと予感。パンチングマシンをはじめとした自動機の導入を積極的に行い、工程管理・生産管理にもコンピュータを活用して合理化を目指すようになった。

山口社長は10年ほど会社を手伝ったあと、自分の道を進むために退社。その後は長男や次男が業務を手伝うようになったが、2人はのちに退社し独立した。

2020年12月、80歳まで第一線で社長として活躍してきた竹中氏が突然の病に襲われ、山口社長に会社へ戻ってくれるように説得した。

当時、山口社長は1996年にWBA(世界ボクシング協会)ライトフライ級世界チャンピオンになった山口圭司氏と結婚して、大阪環状線の天満駅前で飲酒店「函館Bar Hamed」を開いていた。先代から事業承継についての電話があったのは新型コロナの影響で店を休業していた時期だった。80歳の父親からの要請をむげにすることはできなかった。30名あまりの社員とその家族、お客さまを守るためには自分が引き継ぐしかない、と事業承継を決意。夫の山口氏も「引き受けるべきだ」と背中を押してくれた。

2021年2月に山口社長は2代目社長に就任した。20年ちかく遠ざかっていた板金加工業界での社長業に戸惑いはあったが、両親がともに働く後ろ姿を見て育った山口社長には事業を承継するという考えしかなかった。30名の経験豊かな社員や夫、友人、知人たちに支えられて社長業に励む山口美佐子社長に話を聞いた。

「日本で一番信頼される板金加工会社を目指す」

― 社長就任から半年以上が経過しましたが、社長業には慣れましたか。

山口美佐子社長(以下、姓のみ) 昨年12月に会社に戻り、今年の2月に社長に就任しました。父も見届けてくれましたが、この4月に亡くなりました。父はこうしたことを予見していたのか、それ以前から生前分与として子どもたちに持ち株を分割、資産整理を進めていたので事業承継にともなう相続の混乱はいっさいありませんでした。

2代目を引き受けるにあたって、友人や諸先輩からいろいろなアドバイスをいただきました。「社長になったらいろいろな問題が起きてくる。困ったときには相談に来なさい」と言っていただき、たいへん心強かったです。

そして何よりも社員が私を支えてくれています。当社には20代前半から78歳までの社員がいて平均年齢は40歳前後です。父は社員に対して仕事面ではきびしく指導していましたが、給与や福利厚生面では同業他社に比べて見劣りしない労働環境を整備していました。社員とはフランクに付き合い、経験や世代を超えて仲が良く、そうしたつながりや信頼感が現場での強いチームワークを生んでいました。毎年行っているボーリング大会やバーベキュー、忘年会なども社員同士が交流する大事な機会となっています。

会社全体に社員同士で気兼ねなく活発に意見交換を行う雰囲気があります。78歳のベテラン社員が20代の社員に自分の培った技術・技能を教えたり、相談に乗ったりしながら技術力の向上をはかっています。

― 設備などに関してはいかがでしょうか。

山口 先代は2代目の私が迷わないように、きちんとしたレールを敷いていてくれました。設備に関しては2013年にパンチングマシンEMZ-3510NTとベンディングマシンHDS-1303NT、2014年にパンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT、2018年にファイバーレーザ複合マシンLC-2512C1AJ、2020年に6kWのファイバーレーザマシンENSIS-3015AJを導入しました。ブランク加工設備はマニプレーターや棚、TK(テイクアウトローダー)などを装備したライン仕様でした。

また、生産管理もクラウド対応のシステムに入れ替え、タブレット端末を活用していました。私が前だけを見て進んでいける体制がすっかりできていました。

私が社長に就任するにあたって「日本で一番信頼される板金加工会社を目指していく」という会社方針を発表しました。この方針に沿って社長業に邁進したいと思います。

画像:人との縁を大切に、一つひとつの仕事を大切に左:2020年に導入したファイバーレーザマシンENSIS-3015AJ+ASFH-3015G+TK-3015L/右:2018年に導入したファイバーレーザ複合マシンLC-2512C1AJ+ASR-2512NTK

2次サプライヤーに徹する

― コロナ禍の影響についてはいかがですか。

山口 昨年4~6月は受注が減少しましたが大きな落ち込みはなく、今期も順調です。いくつもの業種、企業と取引しているので助かりました。

当社は30人規模の会社ですが、他社にはあまり見られない自社での塗装ライン、それも溶剤塗装・粉体塗装に対応した設備があることが特長だと思います。設計から板金・塗装までの工程にワンストップで対応できるので、納期の短縮・コスト削減にも対応できます。レーザ加工、パンチング加工、プレス加工、機械加工と豊富な設備を有しているので多様な加工、難易度の高い加工も可能で、お客さまのニーズに合った最適な対応ができます。

しかも、24時間稼働に対応する複合マシン2台とTK付きのレーザマシン、パンチングマシンを駆使して試作品から、オーダー品、量産品まで、お客さまが必要としている製品を必要な時に必要な数だけ供給できる設備と技術を備えています。また、レーザ溶接機の導入により、精密板金の製品もひずみが少なくきれいに仕上げることができます。こうした設備が仕事を集めてくれています。

さらに、クラウド対応型の生産管理システムを導入しているので、タブレット端末を使ってバーコードを読み込むことで進捗・実績の管理ができ、納期や急な設計変更にも柔軟に対応することができます。こうした総合力が強みになって環境変化にも柔軟に対応しています。

  • 画像:人との縁を大切に、一つひとつの仕事を大切にTIG溶接ロボットを2台導入している
  • 画像:人との縁を大切に、一つひとつの仕事を大切に溶剤塗装・粉体塗装に対応した塗装ラインも導入している

全文掲載PDFはこちら全文掲載PDFはこちら

会社情報

会社名
株式会社 竹中製作所
代表取締役社長
山口 美佐子
所在地
大阪府松原市三宅西4-733-1
電話
072-331-1891
設立
1964年
従業員数
30名
主要事業
精密板金加工・プレス加工・精密試作板金加工
URL
https://takenaka-ss.co.jp/

つづきは本誌2021年11月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

Interview記事一覧はこちらから