板金論壇

国内の板金製品需要は2.5兆~3兆円規模

建設投資を中心に先ゆきは明るい

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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日本の国内生産額は1,018兆円 ― 第2次産業は35.8%

総務省はこのほど「産業連関表からみた平成27年(2015年)の我が国の経済構造」を発表した。それによると平成27年の国内生産額は、約1,018兆円となり、昭和30年の産業連関表の作成開始以降、初めて1,000兆円を超えた。これは、前回作成した平成23年(2011年)に比べると、8.3%の増加となる。また、輸入は22.9%増加しており、これらを合わせた総供給は、平成23年に比べて9.5%増加した。一方、総需要の内訳をみると、国内需要が8.7%増加するとともに、輸出も19.7%の増加となった。

国内生産額の産業別構成比(グラフ)をみると、農林漁業からなる第1次産業が1.3%(12.9兆円)、鉱業・製造業・建設からなる第2次産業が35.8%(364.5兆円)、そのほかの第3次産業が62.9%(640.4兆円)となり、製造業を含む第2次産業は前回の36.5%から0.7ポイント減少した。第3次産業の構成比率は前回比0.6%増で、引き続き上昇傾向にある。

また、ある産業に新たな需要(新規需要)が発生した場合に、その需要を満たすために直接・間接に必要とされる各産業の生産量の大きさは、「生産波及」として表される。たとえば、輸送機械に対する1単位の新規需要にともなって発生する生産波及の大きさは、産業全体で2.48、鉄鋼の場合は2.47、金属製品の場合は2.02などとなっており、製造業で大きくなっている。

「産業連関表」は、国または地域において一定期間(通常1年間)に行われた財・サービスの生産状況や産業間の取引状況などを行列形式でまとめた統計となっている。各産業が相互に支え合って社会が成り立っている実態を具体的な数値で見ることが可能で、市場調査を行う専門家には必須のデータベースとなっている。

画像:国内の板金製品需要は2.5兆~3兆円規模国内生産額の産業別構成比

東京五輪や大阪万博の波及効果

この産業連関表を使って、来年に迫った東京五輪の経済効果を算出すると、東京都の試算では経済波及効果(生産誘発額)は全国で約32兆円となり、東京都だけでも約20兆円となる。また、「2025日本万国博覧会誘致委員会事務局」によると、2025年の大阪万博の経済波及効果(試算値)は約2兆円と試算されている。このように産業連関表を使うとさまざまな市場規模を予測することができる。

15年以上前に、産業連関表を使い、板金業界の市場規模を推定することに試みたマーケッターたちがいた。産業連関表を活用できないかと試行錯誤されたようだが、その分類項目の中に「板金製品」や「板金機械」が含まれておらず、数字が把握できなかった。結果、板金業界の需要先である関連産業の板金化比率を予測して売上高に換算した数字を積み上げ、市場規模を予測した、と聞いた。産業連関表を活用して業種別の発注額を特定し、板金市場規模を算出できる可能性はゼロではないだろうが、現状ではなかなか難しいようだ。

少なくとも鋼製建具業界や建築金物業界などを含む建築業界や、建設機械業界、配電盤業界、厨房機器業界、空調機器業界、昇降機業界、鋼材業界のように、建設投資の波及効果が高い産業が板金業界の重要な業界であることは自明なので、こうした分野を産業連関表を使って積み上げていければ、おおよその数字はつかめるかもしれない。

つづきは本誌2019年8月号でご購読下さい。

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