特集

医療産業の展望と課題

医療機器で売上高比率30%を目指す

岡谷・諏訪地域を医療機器の産業集積地に

株式会社 平出精密

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画像:医療機器で売上高比率30%を目指す①ベンディングロボットシステムEG-6013ARによる曲げ加工/②EG-6013ARで曲げ加工した医療機器部品

地域で医療機器産業への参入を目指す

画像:医療機器で売上高比率30%を目指す平出正彦社長

長野県南信の岡谷・諏訪地域は、明治期の製糸機械、第2次世界大戦中の疎開工場からの技術伝播、戦後の時計・カメラなど精密機械工業の隆盛により、精密加工に関連する基盤技術が培われ、工業集積地が形成された。エプソンや三協精機といった精密機器の大手企業も立地していた。

ところが1985年のプラザ合意によって円高が加速、海外への生産移管が進み、精密機械工業は大幅に縮小した。地場の中小製造業は新規得意先の開拓、海外展開などへの対応を迫られ、電気機械・金属製品・輸送用機械器具ど業種の多角化を進めていった。その中で期待されたのが、医療機器・医療器具業界だった。

野県には、医療用・工業用内視鏡で世界トップシェアメーカーであるオリンパスの工場(伊那市)がある。医療機器事業全体で2021年3月期には2016年3月期比約50%増の9,000億円の売上高を目指しているオリンパスは、長野オリンパスで一部生産を行うことも発表している。こうした背景もあって、長野県や岡谷市、諏訪市などでは地域経済の活性化を目指すために医療機器産業への参入を熱望している。

画像:医療機器で売上高比率30%を目指す左:パンチ・レーザ複合マシンACIES-2512Tによるステンレス製品のブランク加工/右:ファイバーレーザ溶接ロボットFLW-4000による医療機器部品の溶接

2016年9月にISO13485を取得

㈱平出精密は、1964年に平出正彦社長の父が平出精密鈑金製作所を創業し、3年後の1967年に法人化、今年で設立50周年を迎える。2016年9月、同社は医療機器製造の品質マネジメントシステムの国際標準規格「ISO13485」の認証を取得、医療機器の設計から組立までのリスク管理ができるようになった。

これによって、国内外から医療機器や部品の加工を受注しやすくなるとともに、「将来的には自社開発した部品洗浄機の技術を応用し、医療器具の洗浄機の開発に取り組むと同時に、取得したノウハウを岡谷市内の他企業にも提供、この地域に医療機器部品加工を手がける企業を集積したい」と平出正彦社長は抱負を語る。

ISO13485は医療機器やその部品を製造する際に、作業者の清潔さの確保、製造・検査工程でのトレーサビリティー確保など、医療機器特有の品質管理要件が盛り込まれている。今回の認証取得の費用は186万円。岡谷市が2016年度から始めた独自の認証取得支援制度の第1号として、取得費用の20%の助成を受けた。

医療機器関連は同社の売上全体の10%を占めており、ISO13485の認証取得を契機として医療機器関連の受注を増やし、「売上高構成比を早い段階で30%程度に引き上げたい」としている。その一方で、「医療機器分野へ参入する企業の個別相談に応じ、取得したノウハウを開示します。岡谷市には医療機器関連のインフラが整っていることをアピールしていきたい」と平出社長は語る。

画像:医療機器で売上高比率30%を目指す左:インクリメンタル加工で成形した盃/中央:精密板金加工製品をインサートして、3Dプリンターで製作した「ハイブリッド精密板金加工製品」/右:福井大学大学院・大津雅亮教授の研究室との共同研究で開発したテーラードブランク製品の曲げ加工事例

会社情報

会社名
株式会社 平出精密
代表取締役
平出 正彦
住所
長野県岡谷市今井1680-1
電話
0266-22-8866
設立
1967年
従業員数
134名
主要事業
半導体製造装置、医療機器、通信機器、航空・宇宙関連、燃料電池などの精密板金加工
URL
http://www.hiraide.co.jp/

つづきは本誌2017年4月号でご購読下さい。

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