グローバル化が加速する鉄道ビジネスと板金
鉄道インフラを支えるスイッチギアを製造
段取り改善を目指し15年前からIT活用
株式会社 望野板金製作所
①鉄道向けのスイッチギアに使われる製品は溶接から曲げに工法置換するなどの提案を行なっている/②工場2階から板金工場を俯瞰
ライフラインの電力網をサポート
望野昌宏社長
私たちが暮らす社会では、電気がエネルギーとして大きな役割を果たしており、電力網は社会のライフラインとなっている。このライフラインを維持するためにはさまざまな電力機器が必要で、電力消費量の多い施設―ビルや工場、商業施設、鉄道沿線、駅などでは特に、安定的に稼働し、安全性が高い電力機器が必需品である。
一般的に、電気は消費地まで高圧のまま送電した方が減衰が少なく効率的。しかし、高圧のままでは使うことができないので、受電設備(変電所)で高圧の電気を使用しやすい電圧に変換してから必要な場所へ配電する。
この受電設備にキュービクルやスイッチギア(開閉器)が組み込まれている。電力網の中でスイッチギアの重要な機能が絶縁だ。高圧の電気は危険なため、電気が目的の場所以外に流れないよう絶縁させる必要がある。
そのためスイッチギアは、金属の箱を使用して接地(アース)させることが標準となっている。また、空気を伝っての漏電を防ぐために、スイッチギアの内部に絶縁ガス(SF6)を封入したり、乾燥した空気を低圧で封入したり、絶縁性能の高い樹脂で覆ったりするなどの対策が必要となっている。
パンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT
ベンディングマシンHDS-5020NTによる曲げ加工
新興国でMRT建設が進む
交通機関でもスイッチギアは重要な役割を果たしている。例えば、鉄道沿線には鉄道用の受電施設が設置され、架線を通して車両に電気を配電している。
また、路線内で電気事故が発生した場合、すみやかに事故電流を遮断し、事故区間を限定して電力事故の影響を最小限に抑える役割も担っている。
さらに、駅や信号所、運転指令所などにも設置され、鉄道の安全・安心な運行に欠かすことのできない電気機器となっている。
この鉄道用のスイッチギアは重電各社が手がけており、鉄道インフラの海外展開に対応して海外市場の開拓が急速に進んでいる。アジア開発銀行(ADB)の発表によると、2016~2030年のアジアのインフラ需要は26兆ドル(約3,000兆円)にのぼる見通し。人口減少により国内市場が縮小するなか、政府は成長戦略の一環として、海外からのインフラ受注を2020年までには約30兆円に拡大する目標を掲げ、とりわけ鉄道インフラの受注にオールジャパン体制で取り組もうとしている。
最近は新興諸国が交通インフラ整備の一環として都市高速鉄道(MRT)の建設を積極的に進めており、そうしたプロジェクトに多くの日系企業が参加。最近ではシンガポール、タイ、アラブ首長国連邦、カタール、インド、ベトナム、インドネシアなどの都市高速鉄道の建設プロジェクトを日系企業連合が受注。そこにスイッチギアも機器の一部として使われるようになっている。
左:2017年に入社した新人が溶接治具に部品をセットする/右:鉄道向けスイッチギアの機構部品は部品段階から嵌め合い構造で製作する
会社情報
- 会社名
- 株式会社 望野板金製作所
- 代表取締役社長
- 望野 昌宏
- 住所
- 静岡県富士市比奈3031-1
- 電話
- 0545-38-1223
- 設立
- 1986年(1976年創業)
- 従業員数
- 15名
- 主要事業
- 産業機器部品・操作盤の製作、ラック部品製造、各種レーザー加工、ほか金属加工
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