母と社員への思いから事業継承を決意
Webマーケッターからの転身
株式会社 藤田製作所 営業部・営業係長 藤田 貴士 氏
2015年に導入したパンチ・レーザ複合マシンACIES-2512T+ASR-2512NTK
モノづくりとは縁遠かった少年時代
藤田貴士氏
藤田貴士係長は、家業の㈱藤田製作所に入社するまで、モノづくりとは縁遠い生活を送ってきた。
社長である父親は、子どもを工場には近寄らせなかった。その真意は、今となってはわからない。父親は13年前 ― 藤田係長が20歳のときに亡くなった。
藤田係長は「同じ境遇である事業継承者の方々に話を聞くと、学生時代に工場でアルバイトをしていたり、どこかで『自分が継ぐことになるのだろう』と意識していたりする方が多いようです。しかし私の場合、ずっと家業とは距離を置いた生活を送ってきたこともあり、自分が会社を継ぐとは夢にも考えていませんでした。好きな仕事に就いて、自由に生きていくことが当たり前だと思っていました」と語る。
ところが父親が病気で亡くなる直前、「今までは継がせるつもりはなかったが、やはり継いでくれないか」と言われ、動揺した。当時の藤田係長は20歳の大学生。父の遺志とはいえ、それまで何の接点もなかった家業を継ぐことは、あまりに唐突で現実離れしていた。
藤田係長は地元には帰らず、東京のIT系企業に就職。藤田製作所の事業は、母親の藤田茂子社長が引き継ぐこととなった。
レーザ加工
曲げ工程。3mまでの曲げに対応するHG-1703(手前)と小物曲げ用に導入したサーボベンディングマシンEG-6013(奥)
2輪・弱電関連のプレス加工で成長
藤田製作所は、藤田係長の祖父が1958年にプレス加工業として設立。当初は暖房機器や台所用家電製品の部品加工を手がけていた。その後は、2輪関連や弱電関連の部品製作が中心となり、薄板・小物部品のプレス加工に特化していった。
1989年、2代目となる父親の代に、NCタレットパンチプレスやベンディングマシンを導入し、板金加工に参入。主力だった2輪関連や弱電関連の仕事が海外移転で減少する中、徐々に板金加工のウエイトが高まっていった。プレス・板金のほかにも、金型製作・バフ研磨・シルクスクリーン印刷に社内で対応できる能力を備える。さらに、協力会社と連携することで塗装・組立まで一貫で対応し、完成品まで仕上げるOEM生産体制も構築している。
現在の仕事量は、板金とプレスでほぼイーブン。プレス部門で従来の得意先の仕事に対応しながら、板金部門を強化することで新規開拓につなげていこうとしている。2015年にはパンチ・レーザ複合マシンACIES-2512T+ASR-2512NTK、2016年には長さ3mまでの曲げ加工に対応できるベンディングマシンHG-1703、2017年には小物の曲げ加工用にサーボベンディングマシンEG-6013を導入した。板金工程の加工領域を拡大するとともに、自動化・合理化に対応する設備の増強により、加工品質の向上と競争力強化を図っている。
加茂市商工会議所に所属する金属部品加工企業11社の1社として地域のモノづくりブランド「Tech×Tech KAMO」にも参加している。「Tech×Tech KAMO」は公共展への共同出展などのほか、2012年から「マイクロ水力発電装置」の共同開発をスタート。今年5月にはJICA(国際協力機構)の支援を受けて、カンボジアで実証実験を行うなど、精力的に活動している。
左:プレスマシンを計23台保有し、最大200トンまで対応する/右:地域のモノづくりブランド「Tech×Tech KAMO」で2012年から共同開発をスタートした「マイクロ水力発電装置」
会社情報
- 会社名
- 株式会社 藤田製作所
- 代表取締役
- 藤田 茂子
- 住所
- 新潟県加茂市八幡2-3-51
- 電話
- 0256-52-2141
- 設立
- 1958年
- 従業員数
- 49名
- 主要事業
- オートバイ・自動車関連部品、OA機器関連部品、産業機器関連部品、水処理装置関連部品などの加工および表面処理・組立/金型および冶工具の製作
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