特集

「ものづくりはひとづくり」を実践する板金企業

「理念経営」「アメーバ経営」を実践 ― 従業員の仕事観と経営参加意識を醸成

オフィス家具のOEM事業で発展 ― 多品種少量生産への急速シフトに対応

株式会社 一ノ坪製作所

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画像:「理念経営」「アメーバ経営」を実践 ― 従業員の仕事観と経営参加意識を醸成2025年3月、「本社工場」に導入したファイバーレーザマシンVENTIS-3015AJe(4kW、7段パレットチェンジャー仕様)。従来機と比べ、1日の生産能力は3倍弱に上昇した(以降の写真はすべて「本社工場」)

スチール製オフィス家具のOEM事業で発展

画像:「理念経営」「アメーバ経営」を実践 ― 従業員の仕事観と経営参加意識を醸成「『プラスアルファの付加価値』の源泉は従業員の知識と技術と情熱」と語る一ノ坪英二社長

㈱一ノ坪製作所は1948年の創業以来、一貫してスチール製品のOEM事業を展開してきた。中でもスチール製オフィス家具の分野を得意とし、大手オフィス家具メーカーとの取引が全体の約60%を占めている。

一ノ坪英二社長の「プラスアルファの付加価値を創造してこそ意義がある」という考えのもと、顧客の製品化プロセスを強力にサポート。企画・開発段階から携わり、設計・製造・品質管理・梱包・発送までワンストップで対応する。顧客の管理業務の負担やランニングコストを軽減し、総合的なコスト削減と効率化を提案することで強力なパートナーシップを構築している。

近年はOEM事業に加え、ディスプレイスタンドを中心とするオリジナル製品の開発・製造・販売にも力を入れている。リーマンショック後に本格的に立ち上げ、売上全体の約10%を占めるまでに成長した。オリジナル製品に盛り込まれた技術力・デザイン性・生産能力などが評価され、OEM事業の新規受注につながるといった相乗効果ももたらしている。2020年には開発実験室「東京Labo」(東京都港区)を開設し、顧客との共創体制を整備した。

製造拠点は「本社工場」(奈良県香芝市)と「三重工場」(三重県伊賀市)の2カ所で、いずれもブランク・曲げ・溶接・塗装・組立・梱包・出荷の一貫生産ラインを持つ。両拠点に保有設備や機能の差はほとんどなく、BCPや稼働状況に合わせた相互のバックアップが柔軟に行える。

本社工場の敷地内には研究開発室「THINC(シンク)」がある。ここではオリジナル製品の各種試験(荷重転倒試験・棚板荷重試験・走行試験・輸送振動試験など)のほか、各種治工具を製作するなど生産技術の機能も持つ。

コロナ禍の影響で2021年3月期の売上高は約30%減と落ち込んだが、その後は右肩上がりで回復。2025年3月期は前期比16%増となり、過去最高の売上高を達成した。

画像:「理念経営」「アメーバ経営」を実践 ― 従業員の仕事観と経営参加意識を醸成左:研究開発室「THINC」ではオリジナル製品の各種試験や、各種治工具の製作を行う/右:ネットワーク対応型ベンディングマシンが4台並ぶ曲げ工程。手前はOJT研修中。女性オペレータも活躍している

多品種少量生産へのシフトが加速

主力のスチール製オフィス家具は、順調に受注が回復している一方で、多品種・変量・多頻度・短納期へのシフトが明確に加速している。

コロナ禍をきっかけにテレワークやハイブリッドワークが普及し、オフィスの役割が多様化したことで、オフィス家具にも多様なデザイン・仕様が求められるようになった。大手オフィス家具メーカーも従来の生産方式では対応しきれない個別ニーズへの対応を重視し、必要な時に必要なモノを必要な数量・仕様で生産する方針へと切り替えた。この傾向は一時的なものではなく、職場の快適さや働き方の多様化などを背景に、今後も継続・進展すると見られている。

一ノ坪社長は「ものづくりの内容が大きく変わってきました。製品の種類が増え、細かい注文をたくさんいただくようになり、生産計画の見直しも頻繁に発生しています。管理工数が極端に増えています」と語っている。

10年ほど前までは標準的なロットサイズが200個程度、多いものだと5,000個という製品もあったが、現在は中心ロットサイズが20個程度、多いものでも300個程度に減少した。製品によっては10個以下のオーダーも珍しくなくなった。

リピート率は約90%と高いが、標準納期は1週間と極端に短く、ときには納期3日という特急品もある。その間にブランク・曲げ・溶接・塗装・組立・梱包の全工程を完了させなくてはならない。同社では以前から短納期に対応するため、塗装・組立・梱包を同一ラインで行い、組立・梱包作業の順番に合わせて塗装ラインに部品を流す同期生産方式を実践。乾燥後の製品がハンガーに吊るされている状態から組立作業に着手するなど、工程間のロスを極限まで削減し、スピーディーな出荷を実現している。

多品種少量生産へのシフトが急速に進む中でも従来と同水準のQ,C,Dを実現しており、それも同社が提供する「プラスアルファの付加価値」となっている。近年は新たに工程管理システムを導入したほか、最新の加工設備を導入し、生産効率のさらなる改善をはかっている。

  • 画像:「理念経営」「アメーバ経営」を実践 ― 従業員の仕事観と経営参加意識を醸成自動粉体塗装ライン(ノードソン)
  • 画像:「理念経営」「アメーバ経営」を実践 ― 従業員の仕事観と経営参加意識を醸成組立ライン。乾燥後の製品がハンガーに吊るされている状態から組立作業を開始。塗装・組立・梱包を同一ラインで行う同期生産方式によりスピーディーな出荷を実現している

会社情報

会社名
株式会社 一ノ坪製作所
代表取締役
一ノ坪 英二
本社工場
奈良県香芝市今泉625
三重工場
三重県伊賀市玉滝10005
電話
0745-76-3181(本社)
設立
1958年(1948年創業)
従業員数
約120名
主要事業
オフィス家具・事務機器用ラック・住宅部材等の設計開発・製造/ディスプレイスタンドなど自社オリジナル製品の開発・製造・販売
URL
https://www.ichinotsubo.co.jp/

つづきは本誌2025年10月号でご購読下さい。

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