積極投資で飛躍をはかる中四国の板金企業
サイン・モニュメント・空間ディスプレイの専門家集団 ― 「究極の注文生産」を目指す
3次元CAD/CAMによるデジタル一貫生産へシフト
株式会社 ハーベスト
「第三工場」に導入したファイバーレーザ複合マシンEML-2515AJ-PDC(2棚・TK仕様)。材料供給・バラシ作業・金型段取りを自動化し、生産スケジュール全体を前倒しできた
「第三工場」を開設 ― 生産性は15%以上改善
岩田学社長(左)と木村亮太工場長(右)
広島県広島市の㈱ハーベストは、特注品の高付加価値なサインやモニュメント、空間ディスプレイを得意とするエキスパート企業。「究極の注文生産」を目標に掲げ、図面に表現されない顧客の意向やその背景まで踏み込んだ提案を行うことで、顧客とのパートナーシップを構築してきた。
3次元CAD/CAMと最先端の加工設備によるデジタル一貫生産体制と、30年超をかけて培ってきた高度な技術・技能も同社の強み。設計・エンジニアリングから板金加工・溶接・仕上げまでの全工程で高度なパフォーマンスを発揮し、提供価値を高めている。
2022年には「第一工場」(2016年開設)の隣に「第三工場」を開設し、工場面積が約1.7倍に広がった。
それまでは「第一工場」で板金加工と溶接組立、徒歩3分の距離にある「第二工場」で形鋼加工を行っていた。新設した「第三工場」に板金加工設備・形鋼加工設備を集約し、「第一工場」を溶接組立工場とすることで、同じ敷地内で完結できる体制となった。「第二工場」には、同社のものづくりの根幹となる3次元モデルと加工プログラムを作成する製造技術課を配置した。
「第三工場」には、2023年にファイバーレーザ複合マシンEML-2515AJ-PDC(2棚・TK仕様)と自動金型交換装置付きベンディングマシンHG-1003ATCを導入し、自動化・省力化・スキルレス化を進めた。
EML-AJは、パンチ・レーザ複合マシンLC-C1NT(単体仕様)との入れ替えで導入した。これにより材料供給とバラシ作業、金型段取りを自動化し、作業者の負担を大幅に軽減。定時後の長時間スケジュール運転も可能になった。15時頃までにプログラムができていれば、その日の夜に自動で加工し、翌朝はバラシまで完了した状態から作業を始められる。先頭工程のボトルネックが解消されたことで、生産スケジュール全体を半日程度前倒しでき、サイン業界で求められる超短納期への対応力が高まった。
一連の投資により、生産性(総労働時間に対する利益率)は15%以上改善した。働き方改革により建築業界全体で施工時期の平準化が進んでいることと相まって、社員の平均残業時間はピーク時の半分以下になった。
「営業設計」では顧客の依頼に基づいて3次元設計から対応する
平板・パイプ兼用レーザマシンFO-MⅡ RI3015。現在はパイプ・形鋼の専用加工機となっている
サイン・モニュメント・空間ディスプレイで70%超
同社は1989年、岩田学社長の父親である岩田明氏が設立した。当初は建築金物と業務用厨房設備の板金部品を手がけていたが、数年のうちにサインメーカーとの取引が本格化し、サイン・モニュメント・装飾金物が主力製品となった。
現在の売上構成は、サイン・モニュメント関係が60~70%、装飾金物・建築内装などの空間ディスプレイ関係が10%、建築金物が5%、業務用厨房設備や工作機械部品などが数%ずつ。定期的に取引している顧客は60~70社。そのうち上位6社で、売上全体の80~90%を占める。
コロナ禍の影響で2021年5月期の売上高は約30%減と大きく落ち込んだが、翌期からは上向きに転じ、現在はコロナ前を上まわる水準まで回復した。新型コロナの5類移行後は、人流回復を円安が後押しするかたちでインバウンド需要が増加。都市部を中心に商業施設・宿泊施設などへの投資が活発化し、同社の業績も堅調に推移している。
左:曲げ工程。HG-1003ATC(手前)をはじめ、曲げ長さ3~4m対応のベンディングマシンが並ぶ/右:溶接工程。パイプ・形鋼を組み合わせて大型サインのフレームを組み上げる
会社情報
- 会社名
- 株式会社 ハーベスト
- 代表取締役
- 岩田 学
- 所在地
- 広島県広島市安佐北区安佐町久地唐音2895-11
- 電話
- 082-837-2702
- 設立
- 1989年
- 従業員数
- 54名
- 主要事業
- サイン・看板・モニュメント、機械部分品(カバー等)、鋼構造物(シェルター・パーゴラ等)、調理用機器(お好み焼き鉄板台等)、装飾金物、内装什器、ハイブランド什器、ディスプレイ什器、モニター金物などの製作
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