Interview

自社ブランド商品のカーボンオフセットに対応

2011年から「環境経営」を推進

有限会社 志村プレス工業所 代表取締役会長 志村 正廣 氏

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画像:自社ブランド商品のカーボンオフセットに対応志村正廣氏

㈲志村プレス工業所は2024年10月、自社ブランド商品「Ti-iro」に関して「カーボン・オフセット認証」を取得した。

「Ti-iro」は、純チタンの持つ特徴とレーザ加飾技術を融合した同社のアクセサリーブランド。「カーボン・オフセット認証制度」は、企業などが実施するカーボンオフセットの取り組みに対して、認証機関である一般社団法人カーボンオフセット協会が認証基準を満たしていることを確認し、認証を付与する制度だ。

「Ti-iro」ブランドのアクセサリーの製造によって排出する温室効果ガスを、同社が毎月使用する電力量から算出し、最大限の努力をしても削減しきれない分の「カーボンクレジット」(排出権料)を購入する。具体的には、木曽三川水源造成公社が実施する「間伐促進プロジェクト~水源の森づくりプロジェクト~」で発行されるカーボンクレジットを購入することで、削減しきれない排出量を相殺する。

「カーボンクレジット」とは、温室効果ガスの削減量や排出権を企業間で売買できる仕組み。企業や団体が森林の保護や植林、省エネ機器の導入などに取り組むことで生まれた温室効果ガスの削減効果(削減量・吸収量)を、クレジットとして発行する。このクレジットは企業間で売買でき、市場での取引が可能となる。排出量を削減しきれない企業が、カーボンクレジットを購入することで排出量の一部を相殺することを「カーボン・オフセット」と呼ぶ。

今回の認証取得、これまで力を注いできた環境経営の取り組み、中小企業による脱炭素化の考え方について、志村正廣会長に聞いた。

ものづくり一筋57年―社長交代を決断

画像:自社ブランド商品のカーボンオフセットに対応左:2024年に自社ブランド商品「Ti-iro」に関して「カーボン・オフセット認証」を取得した/右:「Ti-iro」は純チタンの持つ特徴とレーザ加飾技術を融合した自社ブランドのアクセサリー

― 経営者として30年余り勤められ、昨年10月に72歳でご子息の志村雄司氏にバトンタッチしました。社長交代のお考えについて聞かせてください。

志村正廣会長(以下、姓のみ) 弟(志村隆専務)が一足先に引退したこともあって、息子へのバトンタッチを考えるようになりました。後継者も人材も育ってきたので、私はチタンを活用したものづくりにもう少しじっくり取り組みたいと考え、バトンタッチを決めました。

私は15歳で両親が創業した工場に入社し、定時制高校に通いながら工場を手伝うようになり、それから57年間、ものづくり一筋でまい進してきました。

「僕の前に道はない、僕の後ろに道は出来る」という高村光太郎の「道程」の一節を励みにしてきました。私たちを取り巻く社会経済環境は絶えず変化し、その変化に対応しなければ前へ進むことはできません。「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一、生き残るのは変化できる者である」というダーウインの言葉にあるように、時代を見据え、変化に対応するためにいち早く改革に取り組み、他社ではなしえない技術力と人材の育成に取り組んできました。

「志村、お前は技術を身につけろ。身につけた技術は絶対に逃げないから」という先輩の言葉は片時も忘れたことがありません。

時代を見据え、変化に対応

― プレス加工業から精密板金加工業への事業転換をはじめ、「変化対応力」を十分に備えていたことが持続的な企業成長につながっているように思います。

志村 当社は1964年に創業しました。1968年に犬山市内にある物置の大手メーカーからプレス加工部品を受注したことを契機に、「志村プレス工業所」と社名を変え、1981年に有限会社に改組しました。

1971年にニクソンショック、1976年からは円高が進行し、1985年のプラザ合意後は円高・ドル安が加速しました。その折に中国を視察して、「これから量産の仕事は中国へ移管され、日本は空洞化する」と感じました。このままプレス加工業を続けても発展は見込めないと考え、板金加工業への事業転換を決めました。

1985年にベンディングマシンを導入し、1988年にはベンディングロボットBM-100を導入して自動化に取り組みました。1996年には、英国製のYAGレーザ発振器(500W)を搭載した溶接ロボットを導入しました。

1998年に2代目社長に就任するとともにレーザマシンを導入しました。2003年にはパイプ加工用のインデックス装置を搭載したレーザマシンQuattroを導入し、パイプの加工にも対応しました。

2004年に3次元レーザマシンを導入し、成形加工された自動車部品を型レスでピアス・トリムカットする仕事も手がけました。2008年には曲げ工程にネットワーク対応型ベンディングマシンを順次導入しました。

2005年にはベトナム人の大卒エンジニアを採用し、3次元ソリッド板金CAD SheetWorksを活用して設計提案力を強化しました。また、生産管理システムWILLや進捗管理システムiP進捗を導入し、生産情報・加工情報のデジタル化と一元管理に取り組みました。

振り返ってみると、常に時代の先端を目指しながら、自分を信じてがむしゃらに走り続けてきた気がします。

  • 画像:自社ブランド商品のカーボンオフセットに対応ファイバーレーザマシンVENTIS-3015AJe(6kW・フォーク式パレットチェンジャー仕様)
  • 画像:自社ブランド商品のカーボンオフセットに対応ベンディングロボットシステムEG-6013AR。自動化により使用電力量の平準化に挑戦

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会社情報

会社名
有限会社 志村プレス工業所
代表取締役会長
志村 正廣
代表取締役社長
志村 雄司
所在地
愛知県小牧市大字三ツ渕原新田371-1
電話
0568-77-0135
設立
1981年(1964年創業)
従業員数
18名
主要事業
レーザ切断加工、精密板金加工、溶接(レーザ溶接加工)、プレス加工、組立、試作提案
URL
https://shimura-press.com/

つづきは本誌2025年3月号でご購読下さい。

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