産業・医療分野で実用化が期待される小型集積レーザーの研究開発
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理化学研究所 放射光科学研究センター グループディレクター 平等 拓範 氏 (分子科学研究所 社会連携研究部門 特任教授/天田財団 理事)
平等拓範氏
理化学研究所(以下、理研)の平等拓範先生は、「マイクロ固体フォトニクス」の世界的権威。
2026年2月の取材段階で、平等先生は理研 放射光科学研究センター 先端放射光施設開発研究部門 レーザー駆動電子加速技術開発グループのグループディレクターと、分子科学研究所(以下、分子研) 社会連携研究部門の特任教授を兼務している。光の波長と同程度のミクロンオーダーで物質・材料の性質を制御する「マイクロ固体フォトニクス」の研究を通じ、光と物質の相互作用にかかる基礎知見を小型集積レーザーへと応用。新市場の創出をともなう社会実装により、豊かな未来の実現への貢献を目指している。
1990年頃に提案されたマイクロチップレーザーは、小型化による高性能化に成功したものの多くの制約を抱えていた。これに対し、マイクロ固体フォトニクスに基づく小型集積レーザー(TILA:Tiny Integrated Laser)は、高出力なパワーレーザーや高性能固体レーザーのウェハプロセスによる製造を可能にした。チップサイズで数十メガワットは達成しているので、将来的にはギガワット級の出力を実現し、低価格化とともにモバイル・ユビキタス環境への対応も視野に入れている。メンテナンスフリーで信頼性が高く、安定して活用できることから産業・医療分野での実用化が期待できる。
2019年4月には分子研と民間企業で、研究成果の社会実験を行うための「TILAコンソーシアム」が発足、現在は37団体の企業などが参加している。
今回は平等先生にTILA開発の現状と将来、実用化の可能性について話を聞いた。
セラミックレーザー技術と原子レベル接合を組み合わせる
― 平等先生はレーザーの小型化による性能向上を研究されています。研究の進捗についてお聞かせください。
平等拓範先生(以下、姓のみ) ミクロン単位で性質の整った物質の集合体『(マイクロ)ドメイン』を高精度に制御することで、物質に新たな光機能を発現させ、周期化による強調効果やマイクロ共振器による共鳴効果を通じた、高コヒーレントかつ高輝度な光発生が可能となります。
さらに、セラミックレーザー技術と原子レベル接合技術を組み合わせて、従来は不可能だった性能向上を実現する研究が進行しています。これは、真空環境下で高速原子ビームを照射して材料表面を活性化させ、接着剤を使わずに異種材料を室温で直接接合する技術です。この技術によりサファイア(Al2O3)とネオジムヤグ(Nd:YAG)といった、従来は困難とされていた異種材料の接合を可能としました。これらの物質・材料研究成果として、まずは、マイクロチップレーザーによる世界初の自動車エンジン点火装置が実証されました。
また、真空紫外(波長118㎚)からコヒーレンス長に合わせたマイクロドメイン分極制御、および擬似位相整合(QPM)による大口径非線形素子の開発にも成功。これにより、中赤外領域(11㎛)からテラヘルツ波(0.1~0.8㎜)に至る広帯域な高効率波長変換を実証しています。
近年では、中間層を介した室温での表面活性接合(il-SAB)に成功したことで、一体型多層ディスクレーザー構造が実現でき、さらなる可能性が広がりました。この接合技術による分布面冷却(DFC)多層チップや、高性能マイクロチップレーザーの構築により、さらなる高出力・高強度レーザーの実現が期待されます。
左:小型集積レーザーを使ってレーザーフォーミングで曲げ成形したアルミ部品/右:レーザーフォーミングで加工された製品サンプル
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