省エネ化と再エネ活用による脱炭素化を推進
社会課題の解決に挑み、次世代の企業価値を創造する
日崎工業 株式会社 代表取締役 三瓶 修 氏
三瓶修氏
川崎臨海部の京浜工業団地で事業を展開する日崎工業㈱は、各種サインを中心に、イベント造作物・建築金物・什器備品・モニュメントなど、高度な外観品質が求められる製品の設計・製作・施工をワンストップで手がけている。創業以来培ってきた加工技術と、建築CAD・3次元CADを駆使した設計能力には定評があり、長年にわたって首都圏のサイン業界で存在感を示し続けてきた。
2020年以降はコロナ禍で業績が落ち込む中、「社会課題解決事業」としてB to B向け、B to C向けの自社ブランド商品を相次いで発表。今期(2025年6月期)はこれらの「新事業」が売上全体の20%を占めるまでになった。
2014年以降は、省エネ化・再エネ活用による脱炭素化を推進してきた。2020年には「再エネ100宣言RE Action」に加入し、総勢30名に満たない中小製造業でありながら2030年までに完全脱炭素(CO2排出量ゼロ)を達成するという野心的な目標を掲げた。
脱炭素化のフロントランナーである三瓶修社長に、これまでの取り組みと今後の展望について聞いた。
東日本大震災と原発事故がきっかけ
― 「脱炭素経営」に取り組み始めた経緯を教えてください。
三瓶修社長(以下、姓のみ) 直接のきっかけになったのは、2011年に発生した東日本大震災と原発事故でした。私の父は福島県富岡町、母は浪江町の出身で、いずれも原発事故が発生した福島第一原発が立地する大熊町・双葉町に隣接しています。両親のふるさとがゴーストタウンと化していく中、普段何気なく使ってきた電力も、さまざまなリスクをはらみながら生み出されていることを痛感しました。
それと同時に、省エネ化と再エネ活用による脱炭素化を実現し、中小製造業のモデルケースになりたいと考えるようになりました。当社は創業以来、常にその時代に必要とされるニーズを捉え、「一歩先の社会から必要とされる企業」であり続けることを目指してきました。これからは「脱炭素経営」に取り組み、社会課題の解決に挑戦することで、次世代の企業価値を創造していこうと決意しました。
10年間で年間CO2排出量を60%削減
― 「脱炭素化」の具体的な取り組みとしては、どのようなものがありますか。
三瓶 まず、2014年度(事業年度)に工場内の水銀灯(54灯)をLED器具に更新しました。2015年度には工場の屋根に遮熱塗装を施し、職場環境を改善しつつ工場内の空調効率を高めました。2017年度には新電力事業者(PPS)に切り替えて電気料金を低減し、デマンド監視システムを導入して電力需要をリアルタイムで“見える化”しました。
2018年度には電力消費量が大きかったCO2レーザ複合マシンAPELIOをファイバーレーザ複合マシンLC-2515C1AJに更新し、事務所を含む全社の蛍光灯・白熱電球をLED(約90本)に更新しました。2019年以降は社有車の一部をガソリン車から電動車(BEV・PHEV)に順次置き換え、フォークリフトを電動式に更新しました。
2020年度にはCO2レーザマシンLC-αを平板・パイプ兼用ファイバーレーザマシンENSIS-3015RIに更新しました。また、工場屋根に太陽光発電パネル163枚を敷き詰め、自家消費型の太陽光発電システム(発電容量50kW)を導入しました。2021年度にはBCP対策を兼ねて13.5kWhの小型蓄電池(テスラ製)を導入しました。
2024年度には通信電流計(ENIMAS)を導入し、機械設備ごとの電力消費状況を把握。電力の使いすぎやピーク状況などを知ることで、機械の使い方や運用方法の見直し、機器の交換などを実施しています。
― かなりの投資額になります。
三瓶 2014~2023年度の10年間で、エネルギー関連の総投資額は2億円を超えます。もちろん経済合理性がなくては続けられませんから、費用対効果や回収の目処を立てながら投資判断をしています。
総投資額の中には付加価値を生む加工設備(LC-C1AJとENSIS-RI)も含まれます。イニシャルコストは国や自治体の補助金を活用しながら、ランニングコスト(電気料金やガソリン代)の削減効果も計算して、コストメリットが見込めるように実践してきました。
― 成果はいかがですか。
三瓶 2023年度実績を10年前のピーク時(2014年度)と比較すると、年間CO2排出量は約60%減、年間電気購入量は約48%減になりました。年間電気購入金額は、電気料金の高騰などにより約35%減となっています。
2020年に工場屋根に設置した自家消費型の太陽光発電パネル(163枚・発電容量50kW)
通信電流計(ENIMAS)を分電盤に設置し、機械・設備ごとの消費電力量の推移を“見える化”
会社情報
- 会社名
- 日崎工業 株式会社
- 代表取締役
- 三瓶 修
- 所在地
- 神奈川県川崎市川崎区大川町7-2
- 電話
- 044-366-7711
- 設立
- 1967年
- 従業員数
- 27名
- 主要業種
- オーダーサイン・イベント造作・什器備品など、航空機モックアップ、特注金属加工品(建築金物・実験什器など)、その他の板金加工品の設計・製作・施工/自社ブランド商品(アウトドア用品、インテリア用品、キッチンカー、トレーラーハウスなど)の製作・販売
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