3兆円の建設機械産業を支える板金サプライヤーの最新動向
油圧ショベル、クレーンのパネル・カバーなどの主力サプライヤー
グローバルサプライチェーンの中核を担う
神戸鈑金工業 株式会社
高砂工場の2階が溶接工程となっており、TIG溶接・アーク溶接を行っている
コベルコ建機の主力サプライヤー
製造部の古家久宗副工場長(左)とサポート部の藤谷侑取締役(右)
神戸鈑金工業㈱は1944年、藤谷良樹社長の祖父が神戸市内で金属加工業として創立した。戦後は神戸製鋼のコンプレッサー、産業機械、建設機械関連の金属加工の仕事を受注するようになった。
1999年に神戸製鋼の建設機械部門、油谷重工、神鋼コベルコ建機が統合。コベルコ建機が発足した後はコベルコ建機の主力サプライヤーとなり、1次サプライヤーとして広島事業所(広島県広島市)で生産する中・大型の油圧ショベル、大垣事業所(岐阜県大垣市)で生産する7トン以下のミニショベル、大久保事業所(兵庫県明石市)で生産するクレーンの板金部品を生産する。
板金部品の加工は「高砂工場」に加え、2019年に事業譲渡された津久田工業㈱の薄板板金加工事業を取り込んだ「広島クリエイトファクトリー」(広島県北広島町)、本社・グループ会社からの塗装完成品を集約し、組立作業を行う「広島サプライセンター」(広島県広島市)の3拠点で行っている。また、コベルコ建機の中国進出に対応して同社も2004年に無錫、2010年に成都に工場進出し、グローバルサプライチェーンの中核を担っている。
2台のファイバーレーザマシンENSIS-AJを設備している。手前のENSIS-3015AJ(9kW)は棚付きのセルラインで、イージーカットを行っている
HG-8025をはじめとした12台のベンディングマシンが曲げ加工を行う
外観パーツ・内部パーツを一貫生産
油圧ショベル向けは外観パーツ・内部パーツを主に生産している。ボデーなどの外観パーツの大型部品は高砂工場にある1600トン、1000トン、600トンの大型油圧プレスでZAS絞り型、簡易金型などを活用して成形加工した後、3台の3次元レーザマシンでピアス、トリムカットしている。また高砂工場では出力2kWと9kWのファイバーレーザマシンENSIS-3015AJ+ASFH-3015G、3台のパンチングマシン(L/UL+棚)、12台のベンディングマシンで薄板からの部品製造を行い、半自動溶接・TIG溶接・スポット溶接などで溶接組立した後にカチオン電着塗装・焼付塗装をする。組立・梱包・パレット格納まで行い、必要な部品を必要なときに必要な数だけ出荷(JIT納品) ― すべての工程をワンストップで対応できる生産体制を構築している。
コベルコ建機の各事業所へは組立着手の3日前に、生産機種1台単位にセットした板金部品をJIT納品している。ひと月あたりのアイテム数は2,000種類以上で、部品数は10万点超。材料はSPCC、SPHC、SS400が主体で、板厚は1.0~3.2㎜の薄板が多い。ほかに4.5㎜、6.0㎜、9.0㎜といった中板、コンプレッサー部品に溶融亜鉛めっき鋼板を使用する場合もある。ひと月に加工する鋼材は高砂工場が450トン、広島クリエイトファクトリーが160トンとなっている。
従業員数は高砂工場、広島クリエイトファクトリー、広島サプライセンターを合わせて262名。そのうち正社員が151名で、残りはベトナムからの技能実習生や特定技能、契約社員となっている。また、中国工場は無錫が70名、成都が80名で、グループ全体で412名となる。
2022年度の売上高は104億円で、今期は108億円と微増を見込んでいる。
加圧能力1600トン、1000トン、600トンの油圧プレスで建設機械部品の成形加工を行う
塗装が終わった出荷前の建機部材
会社情報
- 会社名
- 神戸鈑金工業 株式会社
- 代表取締役社長
- 藤谷 良樹
- 所在地
- 兵庫県高砂市荒井町新浜2-11-25
- 電話
- 079-443-8881
- 設立
- 1944年
- 従業員数
- 262名(グループ全体で412名)
- 主要製品
- ショベルカー、クレーン用パネル、カバー関連パーツ、コンプレッサー用パーツ、産業機械用パーツ
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