鋼材加工業で導入が進む大板対応のファイバーレーザマシン
建築鉄骨向け切板の“フル加工”のビジネスモデル
ENSIS-6225AJ導入から2カ月で月間加工量366トンを達成
株式会社 山村
月間加工量2,000トンに手が届く
建築用部材の加工や販売などを手がける㈱山村は、送電線の鉄塔、橋梁などのインフラ関連のニーズ拡大にともない月間加工量が2,000トンあまりに増えた。
今後も業務量の増加を見込んでいるため、2022年は群馬支店ちかくの敷地に第4工場を増設。平板開先加工機やオートボーラー、ショットブラストなどの2次加工設備を集約し、群馬支店で加工したスプライスプレートやガセットプレートの2次加工に特化した工場を稼働させた。
群馬支店は2022年2月、8´×20´材に対応し、鉄骨・鋼材の高速ピアス加工と高品位切断を実現したENSIS-6225AJを10段のパレットチェンジャー(AS-6225)、セカンドステーション、インクジェットプリンター(IJP)付きで導入。3月には加工重量366トン、4月には296トンと早期立ち上げを実現した。月間加工重量のピークは2021年末の1,960トンだったが、今年度中には月間2,200トンの達成も視野に入っている。
「建築鉄骨向け切板のフル加工」と「最短納期での対応」で顧客のニーズに応える
山村春美社長は、大阪に本社があるブリキコイルセンターで勤務後、40歳で個人企業「山村」を起業し、ブリキ製品の輸出を主とした薄板販売事業を行うようになった。
2010年、知人を介して日鐵商事(現・日鉄物産)系列の群馬鉄鋼販売㈱の「厚板溶断事業」の事業譲渡を持ちかけられた。リーマンショック後で苦しい状況だったが、「70~80社の得意先と従業員、設備もそろっている。これはチャンス」と考えた山村社長は、山村の群馬支店「GSC事業部」(Gunma Steel Cutting)として厚板加工事業をはじめた。
経営環境はきびしかったが、逆境こそ飛躍のチャンスと考え、厚板加工業の経験が少ないことを逆手に取って「先入観と固定観念を捨てろ」とリーダーシップを発揮。その甲斐あって、GSC事業部の業績は少しずつ上向いていった。
また、切板だけでなくH形鋼・形鋼・鋼管・冷延鋼板・熱延鋼板・亜鉛めっき鋼板の穴あけ・曲げ・開先・ショットブラストといった2次加工まで手がけることで、「建築鉄骨向け切板の“フル加工”」と「最短納期での対応」を特徴として打ち出し、顧客のニーズに応えていった。
9㎜・12㎜を中心に加工して加工重量を稼ぐ
村社長はENSIS-6225AJ導入の経緯を次のように語る。
「鉄骨ファブ業界では、鉄骨部材の継ぎ手に取り付ける添え板と呼ばれているスプライスプレートが必要で、継ぎ手は高力ボルト接合か溶接により一体化させます。プレートの板厚は鉄骨部材によってさまざまですが、9㎜、12㎜、16㎜、19㎜、25㎜が大半です。継ぎ手の耐力は、高力ボルトの本数、プレートの厚み・幅で変わり、母材より高い耐力となるよう設計されます」。
「LC-θⅢもENSIS-AJも9㎜、12㎜のプレートを中心に加工することで加工重量を増やしています。従来のレーザの加工能力では板厚が上がると加工スピードが落ちてしまいますが、ENSIS-AJは加工速度が速いのが魅力です」。
「レーザ切断、プラズマ切断、ガス切断を切断面品質で比較すると、良い順にレーザ、プラズマ、ガスとなります。ただし、レーザ切断はバリの発生が課題で、バリ取りのために外国人技能実習生を採用しているのが現状です」。
「板厚19㎜、25㎜をバリレスで、かつ、9㎜、12㎜の2/3くらいの速度で切れるのであれば、現在の発振器の出力を12kW、15kWに載せ替えても良いと思います。しかし、1/2程度までしか上がらないのであれば、今のような使い方になると思います。われわれの業界では加工重量がすべてで、重量を稼ぐには時間をかけて厚板を加工するよりも、9㎜、12㎜を数多く加工した方が効率的です」。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 山村
- 代表取締役
- 山村 春美
- 本社
- 千葉県鎌ケ谷市粟野626-1-110
- 群馬支店
- 群馬県伊勢崎市日乃出町644-1
- 電話
- 0270-24-7712(群馬支店)
- 設立
- 1988年
- 従業員数
- 85名
- 主要事業
- レーザ加工・プラズマ加工、NCガス加工、丸鋸・ショットブラスト・開先・穴あけ・曲げ加工/スプライスプレート、H形鋼、コラム、アングル、チャンネル、FB、その他の鋼材の加工全般
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