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【特集3】 FLW-ENSIS
ティーチング作業の外段取り化で作業時間を短縮する
株式会社 TCO
多様な技術に精通した「板金加工のエキスパート」
㈱TCOは、溶接を主体にキッチンシンク、産業用機械、特殊装置、半導体製造装置、タンク、ガス容器(ボンベ)などの板金加工を行っている。2次請けの仕事が多く、作業者の一部は発注元に常駐して溶接の受け取り作業を行っている。
塚原憲一社長は今年で51歳。9年前に同社を創業する前は松本市内の精密板金工場で十数年勤め、工場長も経験した。若い頃よりパソコンに精通していたため、展開・プログラムを担当し、3次元CAD SolidWorksの導入から立ち上げ、運用までを手がけた。板金業界ではSolidWorks普及の黎明期に操作に習熟したパイオニアのひとりだ。
さらに、溶接までのあらゆる工程に精通しており、生産管理や品質管理も独学で習得した。前職の精密板金工場が東京に営業所を開設した際には、板金加工のエキスパートの塚原社長が単身赴任し、営業活動を行った。1年半ほどの間にさまざまな業種の新規開拓に成功し、それが塚原社長にとっても貴重な経験になった。
営業活動中、さまざまな会社の経営者たちと知り合う機会があり、営業活動を通して設計担当者、購買担当者との人脈も構築。関東地区でのネットワークも広がり、知見を深めていった。1年半ほどして長野に戻り、退社。しかし、42歳という年齢にもなると再就職先を見つけることもままならず、フリーランスとして活動を始めることを決心し、㈱TCOを設立した。
塚原社長は「これまでの経験から、板金業界では、約70%の企業がCAD/CAMのソフトとしてアマダのAP100を利用しており、機械加工業界やほかの製造業と比較しても特殊な環境にあるという認識を持っています。しかも、繁忙期と閑散期が交錯します。それならAP100を使っている企業同士がプログラム工数をシェアすればスマートに進捗できるのではないかと考え、受注変動を平準化するために『仕事をシェアするビジネス』を考えました」という。
そこで数百万円を投資し、インターネット上にマッチングサイトを立ち上げた。ところが時期尚早だったのか、利用する企業はあまり集まらなかった。
コンサルから仕事の仲介、斡旋業を始める
一方、東京で知り合った同業者から「フリーランスになったのなら、我が社の製造を見て提案してほしい」といったオファーが舞い込んできた。それ以来、複数の企業に毎月訪問して工程改善を手伝うようになり、板金工場のものづくり全般のコンサルタントをはじめるようになった。
また、「図面を預かって仕事の仲介などもしてほしい」という依頼も来るようになり、商社のように仕事を仲介・斡旋する仕事も始めた。その結果、自宅の一室では手狭になり、設立後1年で岡谷市内に30坪の貸工場を借り、事務所兼倉庫にした。仕事量も月2,000万円超になった。図面を見て得意・不得意を判断して仲介するようになったが、顧客からの支払いは手形、仲介先への支払いは現金のため、キャッシュフローは窮屈になる。
そこで付加価値改善を意識するようになり、自社で加工の仕事ができるよう、設備投資を考えた。抜き・曲げの設備は高額になるため、とりあえずTIG溶接機1台を導入し、溶接の仕事を始めた。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 TCO
- 代表取締役
- 塚原 憲一
- 所在地
- 長野県塩尻市大字広丘野村251-11
- 電話
- 0263-87-7495
- 設立
- 2012年
- 従業員数
- 9名
- 主要製品
- 産業機械、特殊機械装置部品の溶接、厨房機器の板金加工
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