ECテーマパーク「しずパレ」で地域の魅力を発信
社員の元気を取り戻すため「コロナに負けないぞプロジェクト」をスタート
株式会社 山崎製作所 代表取締役社長 山崎 かおり 氏
㈱山崎製作所は緊急事態宣言発出後の5月、社内に「コロナに負けないぞプロジェクト」を立ち上げ、若手社員を中心にフロンティア精神で感染防止グッズをはじめとした新製品開発に取り組んだ。
同社は2015年に自社ブランド「三代目板金屋」を立ち上げ、ヘアアクセサリー「KANZASHI」を発売した。「三代目板金屋」のブランドコンセプトは、板金加工のルーツである彫金職人や刀鍛冶が培ってきたものづくり技術に「現代のデザイン」を融合させ、「金属」の新しいかたちを創造すること。幾度となくメディアに取り上げられ、三越伊勢丹などのデパートや高級ブランドのECサイトなどで取り扱われるようになり、売上も伸びてきた。
今年10月からは、自社商品の開発に取り組んだ経験を生かし、地元・静岡県の特産品を取り扱い、県内中小製造業の魅力を発信するECテーマパーク「しずパレ」をオープンした。
2009年に2代目社長に就任した山崎かおり社長は、こうした取り組みが評価され、2016年度「J300アワード」(内閣府共催)準大賞、2020年度「女性のチャレンジ賞」(内閣府)を受賞している。コロナ禍に負けずにがんばるものづくり企業の“今”について、山崎社長にお聞きした。
コロナ禍でも自社商品が下支え
― コロナ禍の事業への影響はありますか。
山崎かおり社長(以下、姓のみ) 7月までは順調でした。「KANZASHI」がテレビの全国ネットで取り上げられた反響が大きく、一時は売上の50%以上を占めるようになり、全体でも前年同期比プラスで推移していました。8月に入ると受託加工の仕事が落ち込み、単月で30%ほど売上が落ち込みました。10月以降は徐々に仕事が戻ってきています。8月・9月が底で、これからは回復していくと予測しています。
― 新型コロナウイルスの感染防止対策としては、どのような取り組みを行いましたか。
山崎 4月7日に政府の緊急事態宣言が発出された後、社員のみんなと話し合い、検温・行動記録・手洗い・マスク着用を義務づけ、現場も「3密」を避ける取り組みを行いました。万が一、感染者が出たときの対応も決めました。
また、重症化リスクが高い高齢社員への感染を避けるため、60歳を超えた社員は雇用調整助成金をいただきながらシフト制で休みを増やすなどの対策も実施しました
ものづくり×観光の複合施設計画は凍結
― 御社は2015年から医療産業クラスター「SPメディカルクラスター」(静岡県)に参加しています。クラスターのメンバー企業と協業し、複合施設を建設する計画を進めていたと思いますが、その後の状況はいかがですか。
山崎 当社を含めた4社で、ものづくりと観光をテーマに、静岡市内に工場を兼ねた複合施設を建設する計画を立て、3月31日に用地取得の契約を行う予定でした。この複合施設では、ものづくりの現場を一般の方々に広く公開するとともに、インバウンドで静岡を訪れた海外の方々に「Made in SHIZUOKA」の魅力を知っていただく場所にもしたいと考えていました。
SPメディカルクラスターで製作しているのは、鉗子のような医療器具です。静岡県は、製造品出荷額等では国内第4位、医療機器生産金額では国内トップです。しかし、その事実は県民を含め、あまり知られていません。そのため、この複合施設で、ステンレス材料から鉗子などができ上がるまでの工程をご覧いただき、その合間に当社の自社商品「KANZASHI」の製造工程や、受託加工の作業の様子を見ていただきながら、静岡のものづくり・観光地・県産品を紹介していく ― そうすることで板金加工をはじめとする金属加工業界のイメージアップにつながり、「Made in SHIZUOKA」を世界に広めることができると考えました。
しかし、コロナ禍により計画を変更せざるを得ませんでした。景気の先行きが不透明な中での契約は見送った方が良いと判断しました。ロケーションは最高だったので残念でしたが、複合施設の計画は仕切り直しです。当初の計画から2~3年遅れるかもしれませんが、複合施設を建設して、そこに当社も移転するという基本計画は維持します。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 山崎製作所
- 代表取締役社長
- 山崎 かおり
- 所在地
- 静岡県静岡市清水区長崎241
- 電話
- 054-345-2186
- 設立
- 1970年
- 従業員数
- 26名
- 業種
- 工作機械関連のカバー・架台・フレーム、制御盤関連・医療機器関連・食品関連など
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