安定成長する医療機器を支える板金加工
血液自動分析装置の仕事が70%弱
「ファルマバレー構想」への取り組みがきっかけ
株式会社 秋山機器
「ファルマバレー構想」で工場移転を決断
静岡県沼津市にある㈱秋山機器は、超精密板金加工を主とし、売上の70%ちかくを臨床検査に関わる血液自動分析装置関連が占めている。
静岡県は医薬品・医療用具生産額が全国トップレベルで、静岡県東部地域は、それを支える医薬品・医療機器産業が集積している。これらの恵まれた環境を生かすため、静岡県は2001年、県立静岡がんセンター(静岡県駿東郡長泉町)を中核に、医療・健康関連産業を集積する「富士山麓先端医療産業集積構想」(ファルマバレー構想)を発表。製薬・医療機器工場のほか、製薬企業などの研究拠点を集積し、地元企業の高い技術力を活用しながら患者・家族や医療現場のための、ものづくり・ひとづくり・まちづくりを展開し、地域の活性化を進めようとした。
そうした中で静岡県は、2007年に沼津市などを会場に開催した「2007年ユニバーサル技能五輪国際大会」の競技会場の建物をファルマバレー構想に当てはまる企業に建ててもらい、大会終了後に企業に返却する企画を発表、参加企業を公募した。
当時、秋山機器の先代社長である故・秋山佳彦氏は、生体・検体検査、分析装置の板金加工・組立の一貫した仕事が売上全体の35%を占めていたことから、静岡県の企画を医療機器分野を伸ばす絶好の機会と考え、応募、採択された。技能五輪の終了後は建物の一部を増改築、2008年8月にEML、ASTROなどを設備した新本社工場が稼働開始した。
それまでも同社は、1996年にASISネットワークシステムを導入し、パンチングマシン、パンチ・レーザ複合マシンをネットワーク運用していた。さらに主力得意先の「投入日管理」の手法を学び、工程遵守のカンバン方式によるプル生産体制を構築するなど、デジタル板金工場の先駆けを歩んできた。そうした経緯もあり、新工場でも思い切った自動化・ロボット化を進めた。
リーマンショックで一環受注に注力
新工場が稼働してすぐ、リーマンショックが起こり、同社の事業に大きな影響を与えた。
新規受注を増やすためには、これまで以上に加工から組立までの一貫受注が重要になる。そのためには設計を取り込む必要がある。しかし、設計から取り込むとなると、加工方法は板金に限らない。樹脂や木工、機械加工部品のような非板金部品もある。
そこで先代は受注コーディネーターとなって、自社で生産できない部品は企業ネットワークを活用して調達するなど、商社的な動きを行うようになった。さらに、受託加工だけでなく、企業ネットワークを駆使し、自社製品開発にも取り組むようになった。その結果、精密板金事業は内製の割合が60%程度にまで下がり、現場作業者の数も減っていった。
また、人手不足への対応を先取りして、フィリピンのセブ市とフィリピン技術教育・技能開発庁(TESDA)の協力を受け、セブ市に人材派遣会社を設立。技能実習生を日本に派遣する事業を立ち上げるなど、事業領域を拡大していった。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 秋山機器
- 代表取締役社長
- 秋山 尚毅
- 所在地
- 静岡県沼津市大岡4044-28
- 電話
- 055-960-8128
- 設立
- 1974年(1963年創業)
- 従業員数
- 44名
- 主要事業
- 精密板金関連(医療機器・OA機器・両替機・機構部品・電源BOX・半導体製造装置関連・液晶関連)/組立関連(エンジニア向け学習器・超純水製造装置・血液自動分析装置・人工透析装置)
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