大板材6m対応の高速・高生産性レーザマシン導入事例
自走式ではできなかった月間200トンに挑戦
大板材6m対応、高速・高生産性レーザマシンの導入
武部産業 株式会社
墨田区本所で創業して72年
武部産業㈱は、東京都墨田区本所の㈱武部シャーリング工業所で経験を積んだ長澤裕介社長の祖父、中谷半治氏が、武部シャーリング工業所の「亀沢倉庫」(本所亀沢地区)を譲り受けて1947年に創業した。本所界隈はシャーリングマシンで必要な寸法に切断、切板として販売するシャーリング加工業者が数多く集積していた。
その後、千葉県浦安市に「浦安鉄鋼団地」が造成されると、その一角を購入して工場を建設、本格的なアイトレーサー式のガス溶断機を導入した。
看板設備のシャーリングマシンを撤去
長澤社長は「当時はシャーリングで板厚16㎜まで切っていましたが、主力は3.2~12㎜でした。次第に厚板の仕事も出てきたため、アイトレーサー式のガス溶断機を導入し、溶断事業に本格参入しました。併せてプラズマ切断機、4mシャーリングマシンなども導入し、加工設備の充実をはかりました。しかし、アイトレーサーで切断(型抜き加工)する工程は手間がかかり、体力的にもきつかった。そこで、浦安鉄鋼団地で最初にCAD/CAMを導入し、評判を呼びました」。
「シャーリング、ガス溶断、プラズマ切断で月に600トン以上加工していました。シャーリングで板厚9~12㎜を切断すると加工重量も増えました。ところが、建築業界では加工精度が重視されるようになり、6㎜が中心になってきました。シャーリング加工は板厚に関係なく手間は同じですから、同じ手間をかけても鋼材が薄くなると加工重量が稼げない。それまで当社は、シャーリング加工のためにケガキに2名、切り方に2名、材料や製品の搬入・搬出に3~5名の作業者がいたので、人件費の負担も大きかった」。
「また、ケガキ作業はかがんで鋼材にケガキ線を入れていくので足腰を痛めやすく、若い人材が育たなくなり、技能伝承もままなりませんでした。そこで、創業来の“看板設備”だったシャーリングマシンの撤去を決断しました」と自社の足跡について語っている。
レーザマシンの導入
1990年、千葉県八街市に同社グループのレーザ部門という位置づけで㈲ティー・エル・シー(TLC)を設立。3次元レーザ加工機と、自走式を含む2kW、4kW、6kWのレーザマシン、計4台のレーザマシンを活用している。
また、シャーリングから撤退した時点で、TLCの古いレーザマシンを浦安に移設し、浦安でもレーザ加工を採り入れるようになった。2013年には新たに4kWの自走式レーザマシンと400Aプラズマ切断機を導入。それまで主体だった建設機械向け以外の建築や鉄骨、橋梁といった建材分野へと間口を広げた。
第2工場計画とレーザマシン増設
2011年の東日本大震災では液状化によって大きな被害を受けたが、これを契機に工場建屋を増築、自走式レーザマシンのレール延長とガス溶断ヤードの増床を行った。
震災後の復興需要や東京五輪開催も決まり、これからは建築関連の需要が伸びるという見通しも出てきた。それにともなって建設機械・建築関連の仕事が増えると考えたが、工場が手狭になってきた。
「2017年になって、当社から3軒先の貸工場に空きが出ることがわかりました。そんなに近くに空き物件が出ることはめったにありません。見に行くと天井高さ、工場出入口の位置などに不自由さがあるものの、ロケーションを考えると絶好の物件でした。しかし、製品の置き場として使うにはコストがかかる―そこでこの工場に、月間150トン程度の加工ができるレーザマシンを導入することを検討しました。ちょうどその頃、アマダマシンツールの営業マンがレーザマシンLC-6030θⅢの話を持ってきてくれました」。
「5月にアマダのソリューションセンターへ見学に行き、平板とパイプ・形鋼を加工できるENSIS-RIを見て、興味を持ちました。しかし、このマシンでは月間150トンの仕事はこなせない。それまでは4kWの発振器を搭載した3,000×25,000㎜の自走式レーザ加工機を使っていたので、切断能力として19㎜や22㎜の板厚が加工できる6kWがほしかった。しかし、建屋の関係上、自走式では難しいと考え、LC-6030θⅢを検討するようになりました」(長澤社長)。
会社情報
- 会社名
- 武部産業 株式会社
- 代表取締役
- 長澤 裕介
- 住所
- 千葉県浦安市鉄鋼通り1-1-6
- 電話
- 047-354-0541
- 設立
- 1947年
- 従業員数
- 32名
- 事業内容
- レーザ切断(0.1~28㎜)、プラズマ切断(4.5~50㎜)、ガス溶断(9~55㎜)、2次・3次加工
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