Interview

「やっている姿を感謝で見守って信頼せねば人は実らず」

ものづくり一筋で55年 ― 時代を見据え、変化へ対応

有限会社 志村プレス工業所 代表取締役社長 志村 正廣 氏

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画像:「やっている姿を感謝で見守って信頼せねば人は実らず」志村正廣氏

志村正廣社長は15歳で両親が創業した工場へ入社して以来55年、ものづくり一筋の道をあゆんできた。一方で、華道をはじめとした芸事にも熱心で「技術は芸術」と語り、「鳥の目」「虫の目」「魚の目」と独自の嗅覚で変化の激しい経済環境を乗り越えてきた。

新型コロナウイルスの影響で景気が停滞する中、㈲志村プレス工業所の2021年9月期決算は前年同期比で増収となり、売上・利益とも過去最高を達成した。今期の第1四半期(2021年10~12月)も売上が好調で、このまま推移すれば前期に続き好業績はまちがいなさそうだ。

同社では従業員20名のうち8名がベトナム人の高度人材と技能実習生となっている。また、志村社長と弟の志村隆専務工場長の子どもたち4名が在籍しており、残り8名の日本人社員のうち、半数が女性である。そのような状況下で、どのようにして高収益体質を構築してきたのか。

聞けば、志村社長の目覚めは午前2時、早朝の静けさの中でいろいろなことを考えるとアイデアが湧いてくるという。「仕事は楽しく」をモットーとされる志村社長にその秘訣を聞いた。

売上の40%を占める半導体関連が絶好調

― コロナ禍の中、2021年9月期決算で過去最高の売上・利益を実現された要因は何ですか。

志村正廣社長(以下、姓のみ) 売上の40%を占める半導体製造装置関連が忙しいということです。すでに11月までの内示をいただいていて、7月までは確定注文が出ています。前年度は8月を除いて毎日2時間残業をしましたが、今年度も同様になりそうです。

画像:「やっている姿を感謝で見守って信頼せねば人は実らず」左:省エネとDXの促進を目的に導入されたファイバーレーザマシンFLC-2412AJ+ASFH-2412/右:ベンディングロボットシステムEG-6013AR+EGROBOT。自動化マシンやロボットを活用することで使用電力量を平準化する

自分が変わらなければ変化に対応できない

― 御社が「お客さまから必要とされるサプライヤー」であり続けている秘訣は何ですか。

志村 15歳で定時制高校へ通いながら工場を手伝うようになり、55年間ものづくり一筋で会社をけん引してきました。「僕の前に道はない、僕の後ろに道は出来る」という高村光太郎の「道程」の一節を励みにしてきました。私たちを取り巻く社会・経済環境は絶えず変化し、その変化に対応しなければ前に進むことはできません。「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一、生き残るのは変化できる者である」というダーウインの言葉どおりです。時代を見据え、変化に対応するためにいち早く改革に取り組み、他社ではなしえない技術力と人材の育成に取り組んできました。むかし先輩に「志村、お前は技術を身につけろ。身につけた技術は絶対に逃げないから」と言われたことがずっと頭の中にありました。

ピンチはチャンスに

― 御社のこれまでの歩みについてお教えください。

志村 当社は1964年に創業し、1968年に大手得意先からプレス加工を受注したことを契機に志村プレス工業所と社名を変更、1981年に有限会社に改組しました。

1971年のニクソンショックで景気が減速し、1976~1978年には円高が進行、1985年のプラザ合意後は円高・ドル安が加速しました。このときに中国を視察して、「これから量産の仕事は中国へ移転、日本は空洞化する」と感じました。このままプレス加工業を続けても発展は見込めないと考え、1985年にベンディングマシンを導入し板金加工に着手。1988年にベンディングロボットBM-100を導入しロット加工の自動化にも取り組みました。1996年に英国製のYAGレーザ発振器(500W)を搭載した溶接ロボットを導入しました。

1998年に2代目社長に就任した直後にはレーザマシンを、2003年にはパイプ加工用のインデックス装置を搭載したQuattroを導入、形鋼の加工に対応するようになりました。2004年には3次元レーザマシンを導入し、絞り加工製品のピアス、トリムカットに型レスで対応。2008年にはCO2レーザ発振器(4kW)を搭載したFOを導入。ネットワーク対応型のベンディングマシンも順次導入していきました。

2005年には事務所のエンジニアリング機能を強化するため、ベトナム人の大卒エンジニアを採用してSheetWorksを担当してもらい、設計を強化しました。さらに生産管理システムWILLを導入して情報の一元管理も行ってきました。

そこにリーマンショックがやってきて一気に仕事が半減しました。しかし、おかげでじっくり考える時間、社員と向きあえる時間がたっぷりできました。これから何が必要か、何をすべきかを見極めるとき、「ピンチはチャンス」と捉え、社員には「うちはつぶれない会社にしてあるから安心しなさい。給料も賞与も出すので仕事がなくても出社して、次に新しいことを始めるための勉強をしよう」と話しました。そして会社の規模を大きくするよりも社員が人間らしく、楽しみながら働くことができる企業を目指そうと決めました。

周りからは「こんな時期に志村は何を考えている」と懐疑的な声もありましたが、デザイナーを含む4名の社員を採用しました。また、新たにチタンの加工技術を勉強しはじめました。そのときに得た技術と、新たに採用したデザイナーの感性が組み合わさって、装飾品などのオリジナル製品の開発につながっていきました。

画像:「やっている姿を感謝で見守って信頼せねば人は実らず」左:純チタンの特性を活かした自社ブランドのアクセサリーは、社員のモチベーションアップにも一役買っている/右:2021年に完成したショールームには、アクセサリーから家具までさまざまな自社ブランド商品が並んでいる

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会社情報

会社名
有限会社 志村プレス工業所
代表取締役社長
志村 正廣
所在地
愛知県小牧市大字三ツ渕原新田371-1
電話
0568-77-0135
設立
1981年
従業員数
20名
主要事業
レーザ切断加工、精密板金加工、溶接(レーザ溶接加工)、プレス加工、組立、試作提案
URL
http://www.shimura-press.co.jp/

つづきは本誌2022年3月号でご購読下さい。

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