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5Gネットワーク網の整備に必要なニッチ市場を開拓

「特殊仕様の通信機器ラック」と「アンテナ基地局の取付金具」を開発

株式会社 長村製作所

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画像:5Gネットワーク網の整備に必要なニッチ市場を開拓左:5Gネットワークの中継局(基幹局)に設置される特殊仕様の通信機器ラック(W800×D1,200×H2,100㎜)/右:光ファイバー配線ラック。部品点数200点以上。テレワークの普及で通信インフラの増強が課題となっており、受注拡大が見込まれる

情報通信インフラのニッチ市場を開拓

画像:5Gネットワーク網の整備に必要なニッチ市場を開拓代表取締役の飯山進氏。ニッチ市場を開拓し、業績を伸ばしている

㈱長村製作所は、1938年の創業以来80年余にわたり、NTTグループ(旧・日本電信電話公社)の指定工場として、公衆電話ボックス、光配線盤、19インチラック、通信用機材・資材などを製造し、通信インフラの整備・構築に貢献してきた。

長年培ってきた精密板金加工の技術とノウハウ、充実した加工設備を武器に、設計・開発から加工、溶接・組立、塗装、検査、梱包・出荷までの一貫生産体制を構築。主力得意先であるNTTグループのきびしい品質管理基準に対応しながら、短納期・低コストを実現し、高い評価を得てきた。

2018年12月に代表取締役に就任した飯山進社長は、わずか1年半の間に商品群を刷新し、大手メーカーでは対応できないニッチ市場を開拓することで急速に業績を伸ばしている。

主力の情報通信分野では、第5世代移動通信システム(5G)の基幹通信網の中継局(基幹局・支局)に設置される「特殊仕様の通信機器ラック」に注目し、開発・製品化に成功。これから全国で設置が本格化する「5G対応アンテナ基地局の取付金具」や、棚板・トビラ・金具などの「ラック周辺商材」の開発にも取り組んだ。

また、今年4月に改正健康増進法が施行されたことを受け、公衆電話ボックスの製造技術を応用した屋外用喫煙ボックスのラインアップを整備。9月からインターネット販売を開始し、今後は一般家庭向けの温室などへ水平展開していこうとしている。

2020年3月期の売上高は前期比30%超増の12億円。2024年3月期までの4年間で2.5倍の30億円を目指す。

  • 画像:5Gネットワーク網の整備に必要なニッチ市場を開拓ブランク工程。2018年2月に導入したファイバーレーザ複合マシンLC-2512C1AJ+AS-2512NTK+ULS-2512NTK(手前)とパンチングマシンEM-2510NT+ASR-48M(奥)
  • 画像:5Gネットワーク網の整備に必要なニッチ市場を開拓曲げ工程。8台のベンディングマシンを備え、曲げ長さ4mまで対応する

5G向け特殊仕様の通信機器ラックを展開

「2018年末に社長に就任したタイミングで、これからは5Gに特化していこうと決めました」と飯山進社長は語る。

「東京五輪の後、2020年秋以降は、他国の例に漏れず日本も不景気になる。不景気になれば、国は必ず景気浮揚策を講じる。そのときは、5Gネットワーク網の整備に大規模予算を投じる可能性が高いと予想しました。5Gネットワーク網の整備には10年ほどかかります。5Gの波にしっかり乗ることができれば、2020年以降の10年、さらにその次の6GやBeyond 5Gにもつなげていけると考えました」。

飯山社長は、5Gネットワーク網に必要な商品群として「特殊仕様の通信機器ラック」「5Gアンテナ基地局の取付金具」の2つにターゲットを絞り込んだ。

5Gの中継局(基幹局・支局)に設置される通信機器ラックには、主に海外メーカー製のサーバーやルーターといった通信機器が収納される。5G対応の通信機器はサイズが大きく、それらを収納するラックも特殊仕様となる。しかも、収納する通信機器は高密度化がますます進み、発熱量も増しているため、熱対策として高い開口率やヒートシンクの活用、エアフローを考慮した構造が求められる。さらに、地震大国・日本ならではの要求仕様として、震度7の耐震テストをクリアしていることが必須条件となる。

同社はNTTドコモなどにヒアリングしながら製品開発に取り組み、1年かけて基幹局向けの大型ラック(W800×D1,200×H2,100㎜)を開発、今年3月から出荷が始まった。さらに第2弾として、支局向けに一回り小さいW600×D600×H1,800㎜のラックを開発。今秋からは第3弾として、第1弾の大型ラックよりもさらに大きいサイズのラックの開発に着手する。

「当社が手がけている特殊仕様のラックは、1機種あたり多くて200~300台の販売台数を想定しています。大手ラックメーカーの製品のように何万台と出るような類のものではありません。その一方で、耐震テストを行うためには1回あたり500万円程度の費用がかかります。大手にとっても中小にとっても対応が難しいニッチな領域の製品だからこそ、当社ならではの強みにしていけると考えました」(飯山社長)。

画像:5Gネットワーク網の整備に必要なニッチ市場を開拓左:通信機器ラックの溶接・組立工程/右:同社の工場敷地に設置された屋外用喫煙ボックス

会社情報

会社名
株式会社 長村製作所
代表取締役
飯山 進
所在地
栃木県栃木市大平町横堀みずほ5-1
電話
0282-45-1341
設立
1938年
従業員数
65名
主要製品
各種光配線盤、各種シールドキャビネット、情報通信機器ラック、屋外用公衆電話ボックス、大型精密板金製品などの設計・試作・製造・販売
URL
http://nagamura.co.jp/

つづきは本誌2020年10月号でご購読下さい。

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