組織化・合理化・ヒトづくり ― 行動で証明しながら改革を推進
板金・塗装の一貫生産を強みに成長
株式会社 アドヴァンス 代表取締役 堀 良継 氏
2017年に導入したファイバーレーザ複合マシンLC- 2012C1AJ
カーディーラーの営業マンから転身
堀良継氏
「“良継”という名前からもわかるとおり、私は生まれたときから父(堀良輝会長)の後を継ぐことが期待されていました。具体的に父との間でそういう話があったわけではありませんが、私自身も漠然と、いつかは父の会社を継ぐのだろうと考えていました」と堀良継社長は語っている。
その一方で、社会に出てすぐに家業に入るつもりはまったくなかった。“社長の息子”というレッテルを貼られ、「何もできないくせに」と思われることが嫌でたまらなかった。
「何もわからない若造が“社長の息子”だからといって後を継ぐことになったら、社員は納得できるわけがない。自分が会社を継ぐからには、社会経験を積み、少しでも“社長の息子”にふさわしい人間にならなければ」と考えた。
自動車好きだった堀社長は、大学で機械工学科を学び、自動車整備士を目指した。卒業後は地元のカーディーラーへの就職を希望したが、面接官からは「大卒は営業しか取らない」と言われた。整備士を目指す堀社長にとっては誤算だったが、「営業職の経験は、将来(会社を継いだとき)必ず役に立つ」と思い直した。当時の堀社長は口べたで、営業向きではなかったというが、「就職を機に弱点を克服したい」という思いもあった。
努力の甲斐あって、いつしか誰が相手でも物怖じすることなくコミュニケーションが取れるようになっていた。
カーディーラーには5年間勤め、28歳で退職、事業承継を決意した。自動車営業を通して自分の裁量で仕事をすることの楽しさを知った堀社長は、30歳を目前にして、さらに高いステージ―経営者という立場で仕事をしてみたいと考えるようになっていた。
しかし堀社長はすぐには入社せず、熊本県のポリテクセンターのテクニカルメタルワーク科で半年間、溶接の訓練を受けることにした。このときも“社長の息子”と見られることに対する意識が少なからずあったようだ。
「入社してから教えてもらって、全然できないと思われるのは嫌でした。教えてくれる父や先輩社員に余計な負担もかけたくなかった」と、堀社長は当時の心境を語っている。
訓練修了後も「もう少し社会経験を積んでから入社したい」という思いはあったが、父親である堀会長の呼びかけもあって、2002年10月、堀社長はアドヴァンスに入社を果たすことになる。
VPSS 3iのPD(Production Designer)で表示した3次元モデル
パンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT
板金・塗装の一貫生産が強み
㈱アドヴァンスは、金庫や鋼製家具の製作会社に勤めていた堀良輝会長が1973年に独立して創業した。堀会長の前職では一般板金が主だったが、「これからは精密板金が伸びる」という考えのもと、電気機器カバーや情報機器カバーといった精密板金加工の仕事を開拓していった。
同社の最大の特色は、板金加工から塗装(溶剤・粉体)までの一貫生産体制。熊本県内には塗装業者が少なく、まして板金から塗装まで一貫で対応する企業となるとほとんどない。
2002年に堀社長が入社してからは、堀会長との二人三脚で設備の自動化・ネットワーク化を推進していった。直近では2017年にファイバーレーザ複合マシンLC-2012C1AJを導入して、EML-NTとの複合マシン2台体制とした。2016年にはACサーボ・ベンディングマシンFMBⅡ-3613NTを一挙に3台導入し、2017年にはもう1台追加導入した。
現在の得意先は約30社。上位5社で売上の80%を占める。この15年間で主力の得意先以外はほとんど入れ替わり、売上は2倍近く増加。充実した設備群と塗装までの一貫生産体制を強みに、着実に成長を遂げている。
2016年に一挙に3台導入したベンディングマシンFMBⅡ-3613NT
塗装工程。板金から塗装までの一貫生産に対応できるのが同社の強みになっている
会社情報
- 会社名
- 株式会社 アドヴァンス
- 代表取締役
- 堀 良継
- 住所
- 熊本県上益城郡益城町広崎字向峠1592-31
- 電話
- 096-286-8014
- 設立
- 1975年(1973年創業)
- 従業員数
- 26名
- 主要事業
- 電気機器・情報機器・搬送機器・医療機器・半導体製造装置関連などの精密板金加工
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