特集

RPAが実現する板金工場の業務改革

生成AIを活用した現場ファーストな製造改革

「Google Antigravity」を用いたアプリの内製化で品質の安定化や不良削減に挑む

株式会社 東円鈑工所

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画像:生成AIを活用した現場ファーストな製造改革同社が現場支援を目的に作成した「ベンディングマシン自動進捗アプリ」(左)と「溶接工程進捗アプリ」(右)。生産管理システムWILLのデータベースに接続しており、進捗の書き込みも実績の取得もリアルタイムで同期する

働く人が恩恵を感じられるDXを目指す

画像:生成AIを活用した現場ファーストな製造改革小島克仁工場長(左から2番目)と新入社員の3人組。左から奥村さん、船越さん、高瀨さん

「YouTubeなどを見ていても製造業におけるAI活用はバックオフィスの効率化がほとんどですが、我々は製造業なので生産ツールの効率化がなければやっていけません。現場で働く人たちが実際に恩恵を感じられるかたちでAIを活用していくことが重要だと考えています」と語るのは、㈱東円鈑工所でDX推進の責任者を担当する小島克仁工場長だ。

同社が生産管理のデジタル化に取り組みはじめたのは、板金ネットワークシステムASIS100PCLを導入して工場内をネットワーク化したのと同じ2000年。当初は差し立て処理の生産スケジュールをExcelで作成・運用したが、Excelベースのシステムではその都度手直しが必要という課題があった。そのため、2013年に生産管理システムWILLを導入し、進捗・実績や見積り、図面の管理機能を追加するとともに、帳票をカスタマイズして使い勝手を改善した。

2018年に加藤公平氏が2代目社長に就任すると、WILLの立ち上げを担当した小島工場長をDX推進の責任者に任命。以降、同社はさらなるDXを進めていくことになる。

顧客の価値創造に役立てるためには、WILLをはじめとしたデジタルツールをさらに活用して事務所支援・現場支援に貢献することが必須だと感じた小島工場長はまず、進捗登録の際の作業負担を軽減するため、オフライン進捗を採用した。また、WILLから手配ファイル出力の運用を開始したほか、さまざまなツールの検証を重ねていった。そして2022年にたどり着いたのが、MicrosoftのRPAツール「Power Automate Desktop」などを活用した生産支援だった。

  • 画像:生成AIを活用した現場ファーストな製造改革出荷場のコンピュータで「出荷詳細ダッシュボード」「受注台帳」を閲覧できる
  • 画像:生成AIを活用した現場ファーストな製造改革溶接工程の進捗状況や不良派生状況を確認するモニター。不良を全員で改善していく姿勢やアプリ活用により不良が減少した

RPAの活用で50時間分の作業時間削減に成功

同社ではそれまで、EDI受注データのダウンロードからWILLへの取り込み、作業手配、作業指示書の印刷、加工機種別に振り分け、作業手配ファイルの出力、ネスティング、シート情報の印刷、子部品指示書の発行といった一連の作業を1日3時間ほどかけて人手で行っていた。また、作業中に人的ミスが発生していることも、課題となっていた。

RPA化するにあたり、最初にぶつかる課題は材料となるデータとツールの作成だ。「何がしたいか」要件を明確にできなければ開発を行うことはできない。しかし、同社の場合はVBA(Visual Basic for Applications)を活用してEDIで受注データを取り組む仕組みを整えた経験があったため、RPA導入時も業務内容の言語化にそれほど苦労しなかったという。システム構築から本格的な運用開始までは約1年を要したが、2022年2~3月頃から実運用に乗せることができた。

結果として、「Power Automate Desktop」導入により、受注データのダウンロードから子部品指示書の発行といった一連の業務フローの約90%を自動化することに成功。1日平均2時間以上、1カ月で見ると約50時間分の作業時間削減に成功した。また、人的ミスが減少し、手戻りもなくなった。

さらに、WILLのデータをもとに「Power BI Desktop」のダッシュボード機能を活用し、売上データや不具合発生状況、各工程の進捗、材料や購入部品の在庫状況などを可視化。工場内の各工程に大型モニターを設置し、必要な情報を従業員に共有している。これにより、仕事量や納期遅れの状況を一目で把握できるようになり、顧客への対応や現場への指示など、意思決定のスピードが大幅に向上した。残業などの要請についても、データをもとに説明できるため、納得感のある運用につながっている。また業績や利益を含めた数値を全社に共有することで経営の透明性が高まり、「見える化」が進んだ。これにより状況を曖昧にすることができなくなり、会社全体の風通しの良さを数字で示せるようになった。

画像:生成AIを活用した現場ファーストな製造改革左:溶接作業者8名が活躍する溶接工程/右:「溶接工程進捗アプリ」の画面。複雑な紙図面の読解スキルに依存せず、3次元モデルで確認できるため構造がわかりやすく、新人でも作業がしやすい

会社情報

会社名
株式会社 東円鈑工所
代表取締役
加藤 公平
所在地
愛知県犬山市字東大円18-15
電話
0568-67-4975
設立
2006年(1977年創業)
従業員数
21名(外国人従業員を含む)
主要製品
工作機械カバー、工作機械関連部品など
URL
https://toenban.co.jp/

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